二百一話 瑞稀、秋分(三)
月波@tsukiandnami
おかげ様で、今朝を含めてあと四回で終了します。
長かったー。
蔵六さんのサトルとちさとのお話も、締めに入ってる感じですね。
頑張ってください。
応援してます!
―――――午前8:26 · 2023年9月23日
朝の連載投稿のあとは、昨日もらった蔵六さんのリプライにお礼も兼ねての返信を送ります。でも今日は土曜日だから、まだ起きてないかな。
スマートフォンを閉じて、朝ごはんの用意。今朝はトーストとカップスープにトマトときゅうりを切っただけの手抜きサラダ。でもなんにも食べないよりはずっと健康的ですよね。
ここ数日はずーっと曇りがちで昨日なんか小雨が降ったりしてましたが、今日はひさしぶりにお日様が出てる。時間もあるし、肌着の手洗いでもしましょ。
お昼過ぎ、これまた即席のスープ春雨を食べながら録画してたあまちゃんを観ていたら、栄さんからLINEがありました。
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ひさしぶりに攀じりに行くんだけど、瑞稀も来ん?
二時にはホヤホヤ行ってるから、よかったらおいで。
さかえ
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おお。ひさびさのボルダリング。いいですね。ちょうど身体動かしたいって思ってたとこですよ。
行きます、と返しておでかけの準備。の前にツイッターを開いてみたら、蔵六さんからの返信が届いてました。ていうか、意外に早起きだった。
笠地蔵六@kasajizorock
応援ありがとうございます!
励みになります。
『サトルとちさと』
いいですね。
そっちをタイトルにしとけばよかったなぁ。
今からでも改題しちゃおうかなw
―――――午前8:48 · 2023年9月23日
四時間も放っぽらかしちゃいました。
でもまあ、SNSなんてこんなもんですよね。時間差の会話なんてよくあること。別にチャットしてるわけじゃないんですし。
月波@tsukiandnami
いやいや。
今のタイトル『三十日間のペアリング』も素敵ですよ。
でも、ちさとさんはもう出てこないんですね。
さみしい。
―――――午後1:15 · 2023年9月23日
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ウォールルームに入ったら、栄さんが中級の壁に張り付いてました。次にアタックするターゲットのホールドを探してるようなんですが、なんだか決めきれないみたい。左手に位置が遠すぎるかも。
黙って見つめていたら、伸ばした右手が保持しきれず、あっと言う間に落っこちた。オーナーのミチカズさんが掴むロープの反対端に吊ら下げられてぶらぶら揺れてる栄さんが、私の顔を見つけて情けなさげに手を振りました。
「ちかっぱなまってしもうた」
ほんとだよ、とミチカズさんも続けます。
「栄ちゃん、二ヶ月くらい来てなかったでしょ。そんだけ開けちゃうと、やっぱ感覚狂うよね。それはミズキちゃんもおんなじだけど」
栄さんに向いてたはずの鉾先が、急にこっちに回ってきました。ちょっと予想してなかったから言葉が出ません。
「ミズキちゃんも、いつまで経っても入門壁じゃいやでしょ」
はい、と縮こまる私を、ミチカズさんからは見えない位置で栄さんが声を出さずに笑ってます。口惜しいぞ。
勢いよく立ち上がった私は、タオルとクーラーボトルを棚に置き、チョークバッグをひとつ掴んでベルトのカラピナにぶら下げて中級者の壁に挑みます。
「いやいやミズキちゃん、さすがにそれは無謀でしょ」
補助のためにあとを追うミチカズさんが、うしろから声を掛けてきました。
まあ、そうですよね。根性と技術や握力は別モンですもんね。
まっすぐ進んでいた足を斜め四十五度に向け直し、私はいつもの入門壁に取り付きます。
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東比恵から天神までは約八分。ひさびさの壁捩りで疲れたのか、栄さんはそんな短時間でも船を漕いでます。スパでぬくぬくになったから、余計に眠たかったのでしょう。隣の私はその隙に、ツイッターを開いたりなんかして。
月波@tsukiandnami
今朝の分まで通算112回も続いてきた『エミールの旅』ですが、このあと投稿するのも含め、あと3回。
明日の夜が最終回になります。
合計1万6千字は、完全想定を超えました。書き残したこともあるけど、今のボクが書ける最高傑作だ!って思ってます。
次はどんなのに挑戦しようかな?
―――――午後6:48 · 2023年9月23日
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続けて『エミールの旅』第百十三話のコピーを貼り付けてポチッと。
やっぱり次の作品は、あの思いつきでやってみたいな。オルタの展示会でヒントをもらったあのやりかた。
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いつものパークライフで、今日はお客さんの栄さんがテーブル席の向かいで機嫌良さげにハイボールを飲んでます。五月の頃と同じの、あの肌に馴染んだ空気感。なんだか私、ここんとこすごく満たされてます。栄さんたちの復縁が上手くいった余韻なんでしょうか。もちろんそれは大きいけれど、それとは別のなにかもあるような気はするんですが・・・・・・。
「聞いたっちゃん瑞稀。昨日はミツルんことばえらい追い込んだって」
考え事を中断して、栄さんに顔を向けます。昨日の追い込みって、スタバでのあれのことでしょうね。
「栄さんがいけないんですよ。あんな電報みたいなLINEで済まそうなんて無精するから」
そりゃすまんやったと即座に返す栄さんの、屈託の無い笑顔。これですよ。
私いま、多幸感に包まれてます。
「灰田さん、めちゃめちゃ飲まされたらしいですね。恨み入ってるって言ってましたよ」
「学生ンときはそれこそザルやったとに。ミツルも弱ぁなったよ」
そう言ってハイボールを飲み干した栄さんは、そのまま立ち上がっておかわりを取りにカウンターに向かいました。
栄さんこそザルみたい。
そんなことを考えながらちびちびとハイボールを舐めていたら、戻ってきた栄さんが座らないで私の顔を見つめているのに気づきました。食べ残しでもついてるのかな。そう思って口のまわりを拭っていると、栄さんが口を開きます。
「瑞稀、あんた今日、ばりよか顔しとぉよ。なんかよか出会いでもあったと?」
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笠地蔵六@kasajizorock
お疲れさまです。
察するに、脱稿されたんですね。
お互い様ではありますが、140文字で1話を固めるやり方で、よくぞここまでブレずに書き切りましたね。
感服です。
前の『白い部屋』でも思いましたが、月波さんの風呂敷の広げ方と畳み方はとても勉強になります。
次回作も楽しみにしてます。
―――――午後7:17 · 2023年9月23日
いい感じで酔いしれた土曜の夜。ひさびさに顔を出してる上弦の半月に見送られながら部屋に帰る途中、ツイッターを見たら蔵六さんからのリプライが届いていました。私のこと、すっごい褒めてくれてる。お世辞半分でも嬉しいものです。
私も返事しなきゃ。それに、予定も探らないと。
月波@tsukiandnami
ご明察です。
脱稿しました。あとはポストするだけ。ふーって感じ。
前に仰ってたけど、蔵六さんのもそろそろ終わるんですよね。
次回作とかはなにかお考えですか?
―――――午後10:13 · 2023年9月23日
部屋の鍵を探してたらスマートフォンが震えました。ドアの前で画面を見ると、Xのアイコンに赤いバッジ。蔵六さんです。
急いで開いた私は、そのツイートを読んでほくそ笑みました。
笠地蔵六@kasajizorock
サトルとちさと(気に入ったらしいw)は、まだ書き終えてないけど、月内には終わるはずです。
次回作は……カケラも思いついてませんww
ちさとの続編ってのも芸が無いし。
困ったもんですw
―――――午後10:21 · 2023年9月23日




