――笠地蔵六140字小説(九月十一日~九月十七日)「三十日間のペアリング」17
笠地蔵六 @kasajizorock
もっと遠くに捨てるべきだった。
放棄したナイフを利用されてしまったサトルは、人質として盾にされた現状を酷く後悔していた。
せっかく警察が来てくれたのに。
ライトを消すよう命じられた警官がなす術もなく立ちすくむ横を、サトルを引き摺った男たちが進んでいく。玄関は目前。
と、車が停まった。
―――――午前0:17 · 2023年9月11日
開いたスライドドアから何かが摺り抜けたのは誰にもわからなかった。
次の瞬間、サトルは宙を舞っていた。
状況も解らず、錐揉みする我が身に気づくのが精一杯で、恐怖を感じる暇さえなかった。
落下したサトルは、自分が抱き止められたことすらわからないくらい柔らかく、二本の腕に受け止められた。
―――――午前1:22 · 2023年9月14日
足からそっと下ろされたサトルは、警官の点けた光に照らされた顔を見上げた。
「ちさと……さん」
「はじめましてサトルさん。私はちさと零です。28の10-78を受けてここに来ました。もう心配は要りません」
彼女の足元には二人の男が倒れていた。
「大丈夫。電撃で失神しただけで再生可能です」
―――――午前0:38 · 2023年9月16日
サトルは開け放った玄関の上がり框にちさと零と並んで座っていた。扉の向こうでは警官や見慣れぬ制服たちが忙しく動いている。手錠を繋がれ担架で運ばれる男三人。足と身体に深い傷を負って動かないちさとを、数人の制服が抱えて連れていく。見送るしかないサトルの肩を、ちさと零が優しく叩いている。
―――――午後6:52 · 2023年9月16日
現場検証なのか、武骨な靴でずかずかと庭に入っていく警官たちを不安げに眺めるサトルに零は静かに告げた。
「心配しないで。28の90sILⅴは引き継いでいます。彼らがお姉さまの木に何かすることはありません」
その言葉を聞き零に向き合うサトル。
「ちさとさんはこのあとどうなるんですか?」
―――――午後8:08 · 2023年9月17日




