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ボクの名は  作者: 深海くじら
葉月

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202/251

――月波140字小説(八月七日~八月十三日)「エミールの旅」14

月波 @tsukiandnami


「アガがそう教えたのか」

リヒラは静かに言った。

「比喩としては間違ってない。でも実際はもっと生々しいものだ」

愛なんて関係ないんだよ、とリヒラは続けた。

「お前の村にもヤクーや羊がいただろう。人間だって奴らと同じだ。女の体の中にある卵に男の精子を直接浴びせ、融合できれば子ができる」

―――――午後7:47 · 2023年8月7日



ボクは混乱していた。父さんと母さんが双子の兄妹? 子どもができるのに愛はいらない? 人間もヤクーや羊と同じ? リヒラの話が本当なら、母さんは父さんの血で子どもを成してはいない。禁を破ったら村から追い出されているはず。じゃあ、ボクはいったい誰の子なの?

リヒラが言った。

「少し外を歩こう」

―――――午後5:52 · 2023年8月8日



ニライカナイの公園はピンク一色だった。モモとツツジが同時に満開になるこの時期が一番の見頃らしい。

店を出た後リヒラは終始無言で、ボクはただついていくだけ。夕暮にはまだ早い春の空は、いろんなものをぼんやりさせてる。気づくと道の左右が赤く染まっていた。

「ここにお前を連れてきたかった」

―――――午後6:25 · 2023年8月9日



俺には沢山の子どもがいると話し出したリヒラが丸太の切株に腰を下ろしたので、ボクも横の平たい石に座った。

「顔も見たことない子、無事出産できたかもわからない子を加えれば、軽く二百人以上。でも産まれたては皆知らないし、成長した子と会うのも稀。ましてその子とふたりで旅に出るなんて……」

―――――午後10:12 · 2023年8月10日



「エミール。いや、エミリー。お前の原初はアガの卵と俺の精子でつくられた。血のつながりだけで言えば、お前は俺の子だ。アグリコラの、ではなく」

やはりそういうことなのか。今日聞いた話全ての辻褄が合う。そういえばボクを着飾ってくれた女の人も言っていたっけ。

「耳の形がリヒラにそっくりだ」

―――――午後9:38 · 2023年8月11日



「俺はべつにアガを愛してたりしない。毎年の旅で十人以上の女を孕ませるのだから、特別扱いなどしてたら心が保たない。本当にアガを愛し大事に思っているのは、お前の父親、アグリコラだよ。

俺が種付けをしてる間、アグリコラはずっと家の外で立っていた。どんな嵐の日でも、濃過ぎる血を呪いながら」

―――――午後8:47 · 2023年8月12日



「それって注射のこと?」

ボクはおそるおそる尋ねてみた。あのときの父さんを覚えてる。家の中から聞こえる犬の鳴き声のような切ない悲鳴。固く握りしめられた父さんの拳。ボクの最初のアルハイドの日。あの中でリヒラが母さんに只ならぬ治療を施していた。

「そうだ。お前の村ならアジマーエと呼ぶ」

―――――午後8:34 · 2023年8月13日

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