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ボクの名は  作者: 深海くじら
睦月

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――笠地蔵六140字小説(一月二十三日~二十九日)「無題」4

笠地蔵六 @kasajizorock


「本物はやっぱり迫力が違うよね。画集で見るのと全然印象が変ってくる」

ラズベリーのタルトと紅茶を前に、先輩が目を輝かせていた。小皿のレモンスライスを小さなトングで挟んで琥珀の表面に浮かべる滑らかな仕草。ティースプーンに持ち替えて、浮かぶレモンを掬いあげる。きみは優雅さに見惚れる。


午後7:26 · 2023年1月23日

笠地蔵六 @kasajizorock


帰りの電車の中でもきみたちはいろんな話をしてたね。お互いの学校のこと。部活のこと。きみが陸上部に入ることにしたって言ったとき、先輩は目を丸くして、それから凄く喜んでくれてたよね。自分もハードルやってるから大会で逢えるかもって。子どもの頃のきみがつくった泥団子の話も盛り上がってた。


午後6:01 · 2023年1月24日

笠地蔵六 @kasajizorock


夏休み明けの始業式のあと、きみは女子たちに呼び出される。

「休み中電車で一緒だった女はいったい何者?!」

目撃されてたらしい。きみは正直に答える。中学の先輩で付き合ったりしてはいないが、とても大事なひとだと。

翌日きみは振られ、クラスの女子から無視される。交際相手を忘れていた報い。


午後7:34 · 2023年1月25日

笠地蔵六 @kasajizorock


きみのクラスでのヒエラルキーは地に墜ちた。きみが振った(?)彼女は陽キャの人気者だったからね。でも中位以下の男連中には暖かく迎えられたよね。きみ的には随分ラクだったんじゃないのかな、あの時期は。カップルで帰る軟派な連中を尻目に、男同士のお気楽生活を満喫してた。弟もいなかったしね。


午後10:55 · 2023年1月26日

笠地蔵六 @kasajizorock


中途入部で一人だけ中距離のきみに練習相手はいない。弱小だからコーチもいない。部活はいつも一人きり。雨で室内練習になったとき、短距離の女子に話しかけられた。まったく親交の無い、別クラスの子。小柄で可愛らしいその娘は、なぜだかきみに懐いてくる。今度の県大会にも一緒に行こうと誘われた。


午後7:35 · 2023年1月27日

笠地蔵六 @kasajizorock


あの夏のデート(?)の後も、きみと先輩との距離はとくに近づいたりはしなかったね。家が近いわけでもないしそもそも学校が違う。共通の知り合いもいないから日々の消息を知る術もない。こんなことならあのとき電車の中で、日常の話に満足してないで、SNSのアカウントでも交換すればよかった、と。


午後11:29 · 2023年1月28日

笠地蔵六 @kasajizorock


県大会。自分の種目もそっちのけで、きみはハードルの名簿を探す。あった。先輩の名前。応援する気満々のきみは、しかしそこで気づいた。自分の出る800Mは彼女の110Hのすぐあと。先輩が走ってるとき、きみは競技場の外で集合していなければいけない。少人数のうちの部は、却って動きづらいし。


午後7:54 · 2023年1月29日

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