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ボクの名は  作者: 深海くじら
睦月

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十一話 瑞稀、大寒(二)

 今週は半ば以降が忙しかった。あ、もちろんですが、お仕事が、です。プライベートは凪そのもの。以前あれほど情熱を注いでいたお部屋のアレンジも、昨年末以降はぱったりです。ホントにどうしちゃったのってくらい。残業して帰ったあとは、簡単なスープだけ作って帰りに買って来たお弁当で済ませたりと、もう家事とかもぜんぜんやる気なくって。


 そんな中、唯一興味を持ってハマってるのはツイッターのスペース。先週はじめてリスナーで参加して以来、ほぼ毎日あちこちの部屋に聴きにいっています。創作系を中心にフォローする人も少しずつ増えてくると、彼らが参加しているスペースなども紹介されてきたりして、そういうところにこそっと入ってみたりするのです。

 いろいろ聴いているうちに、だんだんですが自分に合ったスピーカーとそうでない人の区別が見えてきます。声の質の好み、話すスピード、受け応えのスタンス、自己肯定感のレベル。お話しされている話題のテーマももちろん大事ですが、正直言ってどの方のお話も私の持っているものと比べたら遥かに広く深いので、なにを聴いていたとしても何らかの発見はあります。それよりも重要なのは、どれだけ人の話を否定しないで広げられるか、です。私が好んで聴きに行くスピーカーさんたちは、ほぼ間違いなくそのスキームに長けているように思います。逆に忠告にしろ助言にしろ、相手の投げかけを否定するところから会話を進めていくタイプは、それがどんなに良いお話であっても続けて聴くのに後ろ向きになってしまう。まぁ、私の堪え性が足りない所為もあると思いますが。


 スペースで、コメントを書いてそれを拾ってもらうのはとても楽しい。なんていうか、ラジオの番組で自分の送った投稿が読まれてるみたいで。お気に入りのスピーカーさんに私のツイッターネームとか書いた文とかが声に出して読まれると、背筋に電気が走ったみたいになります。調子に乗ってスピーカーに上がったりするのはまだちょっと無理ですが、彼らにツイッターでフォローしてもらうのはだいぶ慣れてきました。今までは砂浜に小石を投げてただけだった私のツイートや連作小説にも最近ではいいねやコメントが付くようになってきて、なんだか階段をひとつ上った気になってます。

 誰かとコミュニケーションをとるなんて、青天の霹靂だった直人を除けば、本当に高校時代から数えるほど。ここ数年に限って言えば、新しい知り合いは栄さんだけかもしれません。それだって、彼女の積極性がなかったら今みたいなお友だちになれたりなどしなかったはず。そういう意味でもツイッターでの新しい関係づくりは、私にとってけっこうな冒険なのです。





 土曜日の夜、栄さんからLINEが届きました。来週末のボルダリングのお誘いです。よかったらとか時間が空いていたらとかみたいなお伺いなどぜんぜん無しに、行くから靴を用意しといてね、という強引なものでしたが、私にとってはむしろ助かります。私の返事は否か応だけでいいのですから。今はまだ、線路に乗って走るだけでいい。少なくとも走ってもいい線路をこうやって敷いてもらえてるのは、本当に有難いのです。もう少し気力が付いてきたら、私の方からも提案できるようになる。そんな予感だってしてきます。



「日曜日に、この前と同じ『ホヤホヤ』ですね。了解しました。壁登り、楽しみにします。シューズの方も、明日にでもキャナルシティに行って見てきます」


 私がそう返したのとほぼ同時に、栄さんからの続報が届きました。


「それと来週の二十五日、瑞稀の会社に取材に行くよ。博多の会社訪問の特集で、そっちの広報の人とアポがとれたのよ。時間が合うようだったらお昼でも一緒に食べに行こう」

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