驚愕! 四足巨大獣!
――――平和な時を送る日本の東京に、それは前触れもなく現れた。
「あんな大きな怪獣なのに、レーダーでキャッチできなかったのか!?」
「監視カメラ網にすら写り込まないでどうやって出現したって言うんだ!!?」
「分かりません!! アレが昨夜、真夜中の内にやってきて、朝日に照らされて発見された。 そうとしか考えられませんっ!」
――――真っ黒い体毛を持つ、下手なビルより高い体高を持つその巨大生物は、いきなり現れた。
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「憶測なんて要らない! なにか情報は無いのか!!?」
「あるのなら、とっくに報告しています!」
「あぁっ……!! 巨大怪獣、爪でビルを崩しています!!」
「倒壊する! まずい、救助隊と救急車、それと護衛に自衛隊へフル装備出動を要請しろ!!」
「救助隊と救急車は了解です! しかし自衛隊は出動してくれるかすら……」
「うるさい! 早く政府へ打診してこい!!」
――――巨大生物はその身体能力でもって、少し動くだけで破壊を撒き散らす。
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――――その巨大生物は4足で俊敏かつ縦横無尽に動き回り、傍若無人に振る舞う。
「巨大怪獣、60階建てのビルに飛び乗りました!!」
「あの図体で飛び乗ったのに、重さで潰れないのは怪獣とビル、どっちを褒めれば良いんですかね?」
「そんなのはどうでも良い! 避難指示はどうした!?」
「高層マンションの住人は軒並み退去しましたが、近くの低層アパート等へ引っ越しただけで、避難者はほとんど……」
「なぜだ!! あんなに物を壊して回っている危険な怪獣なのに、なぜ避難しないんだ!!?」
「そう言われても、避難域である東京都全域と隣接県の1部、全部でそんな感じですし」
「 」
「むしろ世界中から自己責任署名は必要ですけど、それでも見に来たいって海外からの観光客が殺到してると」
「常にあの姿を見られるポイントの貸家は家賃が高騰してて、それを利用して民泊の商売が大当たりとか」
「…………どうなってんだ、この世界は」
――――いつのまにか、死者が多少出ようとも、巨大生物のやることだし……と受け容れられてしまう社会になっていた。
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――――その巨大生物は、ピンと立った耳を持ち。
『ん゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛』
「あ、鳴いた。 可愛いねぇ」
「いや、声帯が長くて太いから、酷い音になっていて怖いだろ。 ましてやあいつは人を殺してる怪獣だろうが」
「そこもいいんですよ。 可愛いし」
――――細長いしっぽを、ゆーらゆーらさせて。
「ああ、日向ぼっこでリラックスしてる様子も可愛い」
「おかしいって! ちょっと動くだけで歓声! 動いて死者が出ても歓声! 爪研ぎで高層建築が崩れて大歓声! おかしくなってるって!!」
「そうですか? どんな動きでも、どんな大きさでも、ネコちゃんは可愛いじゃないですか」
「お前、それ同じネコ科のライオンとかヒョウ相手にも言えんの?」
「え、あー……あはははは」
「なのにアレだけデカい怪獣は可愛いっておかしいんだって!!」
「え〜?」
「なんで分からないのっ!!? まともなのは俺だけか!!!?」
――――ネコ(に酷似している)ってだけで、ネコのやる事だからと全て許されてしまう。 そんな巨大生物は人類と共存 (?)している。
最終的にお猫様のナワバリは関東全域に広がり、あちこち出歩いては破壊を撒き散らす破壊王として日本に君臨しました。
それでもお猫様のする事だし……と、あまり強く出られない各地でした。
お猫様にゃあ、勝てん。
…………となったら、人間って凄いなぁと思います。
人間がいくら“馴れる生き物”だとしても、ここまで直接的に命の危険を振りまく存在を許容できるのか?
……………………………………馴れそうなんだよなぁ。 見た目が可愛いとかで受け容れられそうなのだと。