尋問
「おい着いたぞ、生きてるか?」
灰色のレンガ造りの建物の中に入ると、窓の無い部屋に通された。
暗い部屋の中には粗末なテーブルがあり、その上にろうそくが灯っている。
そのテーブルの傍の椅子に座らされると、俺への尋問が始まった。
「この指輪どこで手に入れた?」
意識が朦朧としている俺はぼーっと質問者の顔を見た。
と、すかさず顔面に拳が飛んできて椅子から転げ落ちる。
「ぐふっ、もう止めてください…」
憲兵は、顔を押さえながら懇願する俺の髪の毛を掴むと、再び椅子に座らせた。
「おいいいか?数日前、領主様の使いの者から盗難届が出された。貴重な魔術の指輪が盗まれたそうだ。そして今お前は魔術の指輪を持っていて売却しようとしていた。これは偶然か?」
「知りません…この指輪は自分で…」
しかしこのスキルの事をどう説明すればいいのか?激痛と出血で頭が回らない今の俺には余計理解してもらえないだろう。
「自分で?まさか造ったなんて冗談は言わねえだろうな?」
「アリシャさんを…アリシャさんを呼んで下さい…お願いします…」
「フン!情けねえ野郎だな、あろう事か領主様から盗みを働き、あげく女に泣きつくなんてよ!」
憲兵は俺の顎に思い切り膝蹴りをする。
骨が砕ける音が響くと、俺は余りの痛みに狂ったように叫び、床でのたうち回るのだった。
死ぬ…俺マジでこのまま死ぬ……助けて…ルミエル助けて…。
しかし何の反応もない。
もうスキルを証明するしか道は無い。
「ア…イテム……ガチャ…」
すると、テーブルの上空辺りに黒い小さな箱が現れた。
憲兵の2人は突如現れた謎の物体に「ひいっ!」と声を上げた。
震える指で箱を指さし
「この箱…入れると……」
しかし口の中の出血がひどく、それ以上は血で喉がつかえて喋れなかった。
「な、なんだコイツのスキルか!?気持ち悪い箱だな!」
しかしもう1人の憲兵は強がった笑みを浮かべ、箱の扉を開いた。
「おい俺らでも触れるぞ!中には何も入ってねえ!」
するともう1人が何か思いついたのか「へへ」と笑うと突然腰のショートソードを抜いた。
そして必死に箱を指さす俺のその人差し指に向かって剣を振り下ろした。
「ぐがっ」
鼻と歯を折られ顎を砕かれたあげく、指を切断される。この人たちは何でここまで酷い事が出来るんだ?
憲兵は俺の感情など意に介せず、切り落とされた指を笑いながら拾うと、もう1人の憲兵に投げ渡した。
渡された憲兵はそこで初めて気づくと「面白い事考えるじゃねえか」と、黒い箱の中に俺の人差し指を入れるのだった。
蓋を閉じ、まじまじと箱を見つめる。
すると箱は急に高速で回転し始め、再び2人は「ひいっ」と声を上げた。
しかしそれ以上何もない事を悟ると
「つまんねえ」
と、2人して俺の方に向かってきた。
「どうせお前は死刑だ、だから裁判にかける時間と労力を俺たちが省いてやる」
1人が取り出した鋭利なナイフは、既に俺の首筋に当てられている。
「まあ、お前の指輪は俺たちが特別なルートで金にしてやるよ。まあ売春街で一夜で使い切るがよ」
その瞬間俺の首筋にナイフの刃が食い込んだ。
血しぶきが壁まで飛ぶ。しかし2人はそれを「汚ねえ」と笑うのだった。
そんな鼓動が止まるまでの俺には、さっきからずっと俺にしか聞こえない声が響いていた。
『ガチャを行います、終了時間は24時間です』
そして俺は死亡した。