レベル上げ
翌朝。
ガチャが終了するにはあと15時間ほど、夜になる。
俺はとりあえず食堂に向かった。
「やあレン!今日もいい朝だな!」
既に食事中のアリシャに招かれると一緒に食事を始めた。
うーむ、しかしまじまじ見るとアリシャの顔は本当に美人だ。俺が惚れるのは至極当然だろう。
「ん?どうしたレン。そんなに見つめてもこの肉はやらんぞ?ハハハ!」
「いやあバレちゃいましたか!参ったな!」
やはりカワイイ。ガチャで大金を手に入れたあかつきには、彼女に素敵なアクセサリーをプレゼントしたい。いや、必ずする。
「そうだ、今日はレベル上げに行こう。さすがにいつまでもレベル1では危険すぎるからな」
アリシャに誘われ、使い古された短剣を貸してもらう。
そしてグリーンスライム5匹討伐という初心者向きの依頼を受けると、俺たちは近くの平野に向かった。
アリシャがグリーンスライムを瀕死まで追い込み、俺がとどめを刺す。初めてのスライム殺生に多少なりとも罪悪感を憶えたが、5匹目の殺生を終えた頃には蚊を叩き潰す感覚にまで慣れていた。
と、その時例の声が響いた。
『レベルが上がりました』
自動的にステータスウィンドウが開く。
【冴木煉一郎】
職業 欲望野郎
レベル 2
HP 42/42
MP 21/21
一般スキル 無し
ギフトスキル 全言語理解 鑑定
固有スキル アイテムガチャ
称号 神にフラれし者
神に気味悪がられし者
え?HPとMPちょっとしか上がってなくない??レベルってこんなちょっとしか変化しないのか?
それよりもこの〝欲望野郎〟って何だよ。欲望は否定しないが野郎って酷くない?しかも職業が野郎って意味不明だろ。
「どうしたレン?急に暗い顔でブツブツ言いだしてかなり怖いぞ?」
アリシャの声で我に返った俺は「初めてレベルが上がって混乱してました」と笑ってごまかした。
「おおそうか良かった!レベル上げは一日にしてならず、という格言がある。これからも地道にクエストをこなしていく事が肝心だ。じゃあギルドに報告に行こう」
「ありがとうございます!アリシャさんのおかげです!」
「君は命の恩人、これくらい当然の事だよ」
ギルドに報告を終え、1人当たり大銀貨4枚の報酬を受け取り(手伝って貰ってさすがに受け取れないと断ったが、頑として折半だと突き返され受け取った)別れた。
そしてようやく宿の部屋に戻る。宙に浮き高速回転を延々続ける小箱をニヤリと見つめていると、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
目覚めると暗い。暗闇で再びランプを探し点灯させ、すかさず小箱に駆け寄った。
「おお!よしよし蓋が開いてる!!」
一度、長めの深呼吸をすると、俺は高鳴る胸を抑えながら小箱に手を入れた。