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金貨

冒険者ギルドでの騒動の後、俺はアリシャが泊まる宿に連れて行ってもらった。


彼女は所持金ゼロの俺に宿代を払ってくれ、更に昼食をご馳走してくれた。


アリシャはとても義理堅い女性なのだ。


俺は部屋のベッドに座ると疲れも忘れて再びアイテムガチャを呼び出した。


目の前に浮かぶ小さな黒い箱の扉を開けると、中に手を突っ込んでみる。


『その物体は対象外です』


女性の声が響いた。


「ふう~む」


俺は低く唸ると辺りを見回した。するとテーブルの下に1枚の銅貨を発見した。


食事中にアリシャに教えてもらったが、この世界では銅貨1枚は日本円で10円相当の価値のようだ。

銀貨1枚が100円

大銀貨1枚が1000円

小金貨1枚が1万円

金貨1枚が10万円

白金貨1枚が100万円

らしい。


「よしよし、ツイてる!これをガチャすれば俺はきっと大金持ちになれる…!」


鼻息荒くガチャ箱に銅貨を入れ蓋をした。


すると先ほど同様、箱が浮き上がり高速回転し始めた。


『ガチャを行います、終了時間は1時間です』


「え?長っ!」


さっきと時間が全然違うんだがどーゆーことだ??


俺はため息をついて横になると疲れのせいでそのまま眠ってしまった。


「ううう」


目覚めて強張る体を無理やり起こす。


日は既に沈み、真っ暗な部屋でランプを手探りで探し点灯した。


と、黒く反射する物体が目の前に現れ「ひっ」と声を上げた後、俺が出したガチャ箱だと言う事にようやく気付いた。


「びびらせやがるぜ…」


扉は既に開いている。


俺は遅る遅る手を伸ばすと箱の中の小さな物体を取り出した。


そしてランプの傍に持ってきた。


その物体は見た目は完全に硬貨である。


そして金色に輝いていた。


「ふふふふふふふ」


俺は確信した、完全勝利を。


「鑑定!」


ステータスウィンドウが開く。



              【金貨】



     金で造られた硬貨。ルドニア王国で流通している。



思わず俺は無言でガッツポーズした。


「10万円…!たのしーーー!」


この宿は1泊大銀貨5枚である。


宿を20泊出来る金を1時間で完成させてしまったのだ。


俺の脳裏に浮かぶもの、それは酒池肉林に溺れる俺の姿。


そしてそれはそう遠くない映像なのだ。


いつか円熟味を増した年齢になる頃、事を成していない若人に成功の秘訣を聞かれだろう。


その時俺はこう答える。


「人生ってさ、楽しんだ者勝ちなんだよね。挑戦?ああそれはとても大切だ。でもね、まずは楽しまなきゃ。挑戦すら楽しめたその時、成功の道が開けるんじゃないかな」


そう挑戦だ!


際限ない俺の欲望は更なる結果を求めた。


俺は再度ガチャ箱を呼び出すと、手に入れたばかりの金貨を箱の中に入れた。



『MPが不足しています』


そうか、確認していなかったけどこれMP消費してたのか。


確認するとMP1/17となっている。


1回8消費するのか、と言う事はまずはMP回復させるアイテムを買いに行こう、いや自分でガチャで作れるならその方が効率がいいかも知れない。



興奮状態の俺はその夜溢れる夢に一睡も眠れなかった。



翌朝。


「レンおはよう、いい朝だな!」


眩しい笑顔のアリシャが俺を朝食に誘ってくれた。


食事中、俺は気になるMP回復のアイテムについて教えてもらった。


どうやら回復には【夜露の花】という植物が必要だそうだ。


俺はアリシャにギルドの依頼をそのアイテム採取にしたい事を伝えた。


食事を終えギルドで俺が求める依頼を受注すると、昨日とは違う西の森に向かった。


「レン、MPはその人の魔力に応じて回復率が変わるんだ。君はまだレベル1、1日休んだところで回復はしないんだろう」


「どうすればレベルが上がるんです?」


「勿論魔物を倒す事で上がる、まずは弱いモンスターを狙おう、私が傍にいれば死ぬことは無いはずだ」


アリシャは俺の為に一緒に採取のクエストに着いて来てくれた。


ここまで優しくされると、惚れてしまいそうだ。


いや、既に惚れているかも知れない。


昨日眠れない夜、アリシャに高価なアクセサリーをプレゼントする妄想をしていたのだから。




森に辿り着きしばらく進むと、お目当ての【夜露の花】を見つける事が出来た。


「依頼分採取の前に、自分に使ってもいいです??」


「ああ勿論、MPが無いと不安だろう」


俺は花を自分の体に触れさせる。すると花は輝きながら消滅した。


ステータスを確認すると17/17となっている。


「無事回復したようだな、では採取をして街に戻ろう」




街に戻り【夜露の花】を指定数量ギルドに納品すると、報酬の銀貨1枚を手に入れた。


しかし金貨を持つ俺には響く額ではなく、アリシャの手前喜ぶ演技でやり過ごすのだった。





再び宿に戻り、アイテムガチャを発動させる。



輝く金貨をニヤニヤ眺めながらそれをガチャ箱に入れ、蓋を閉じた。


「今度はきっと白金貨が出て来るはず!100万円来い!!」


ガチャ箱が高速で回り始める。


『ガチャを行います、終了時間は23時間です』


長い…、でもこの長さは俺の予想だが、良いものが出る長さのはずだ。


長さと比例してレアなアイテムに変化するんだ、きっと!



俺のその推測は当たっていた。



しかし、結果から言うとガチャで出たアイテムは白金貨では無かったのである。


このスキルさえあれば人生なんて余裕、とタカを括っていた俺にとんでもない災いが降り注ぐなど、この時夢にも思っていなかった。







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