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女剣士を助けたい

しかし、今重要な事はこのスキルではない。


まずは何処かもわからない森から脱出しなくてはならない。こんな場所で夜になってしまったら俺は泣いてしまうだろう。


こうして俺は森の中を歩き始めた。


森には見た事もないような樹木や草花が生い茂っている。


「草木に詳しくないけどこんな変な形の木は日本には無いよな。やっぱりここは異世界なのか」


暫く歩くと山道に辿り着いた。


「よし、この道伝えに進めばいずれ人がいる場所に辿り着くぞ」


山道の傾斜している方に進む。


10分ほど歩くと左手に小さな泉を発見した。


「水!」


喉がカラカラだった俺は泉に駆け出した。


そして両膝を付いて両手のひらで透き通る水をすくう。


その時気付いたのだ。


「え?これ俺!?」


すくった水に映る自身の顔が全然違うのである。


「顔違うけどそんなに男前でもない!!」


泉に映る顔をまじまじと見つめると、年齢はどうやら20代前半の様だ。


しかしよくよく考えればおかしいじゃないか。そもそも転生って赤ん坊からスタートじゃないのか?貴族の8男位に生まれて、自由に生きるのが通例のはずだ。しかも着ている服も生前コンビニに買い物に行く時来ていた服装だ。これじゃあ半分転生で半分転移だ。何だかとても杜撰な扱いの気がする。


「おーいルミエル!これどゆこと!?何で成人状態でスタート!?それに異世界転生ってイケメンになるだものだろ!何でこんな普通な顔なんだよ!聞こえてる!?顔変更希望します!!」


しかし神の返事は無い。


10才ほど若返っただけありがたいと思うべきなのだろうか?


そこから俺は泉に向かって笑顔や怒り顔、泣き顔などを作って色んな角度の自分の顔を食い入る様に見続けた。


やはりパッとしない顔である。


ようやく顔チェックに飽きた頃、何処からか女性の声が聞こえてきた。


「人の声だ!」


俺は心細さから声の主に会う為走り出した。


山道を下った先に叫ぶような女性の声がする。


「おのれっ!」


少し離れた木陰からこっそり覗くと、若い女剣士が小さな人型の何かと戦っていた。


「あれってゴブリンだよな??」


3体のゴブリンに囲まれた女剣士が果敢に剣を振っている。


しかし後ろからのゴブリンのこん棒の攻撃が右脚に打ち込まれると、彼女はガクリと態勢を崩してしまった。


「え、やばいだろこれ」


片膝をつきながらも、女剣士は3体のゴブリンの攻撃を何とか剣で防いでいる。


しかしこのままでは体力を削られ、やられてしまうだろう。


ゴブリンは女を攫って身籠らせる卑劣なエロ生物だという事を俺は知っている。


女剣士を守らなくては!そして「助かりました、お強いのですね。良かったらお食事でもご一緒しませんか?」と言われたい!


俺は足元に落ちている拳くらいの石を手に取ると立ち上がった。


「このエロモンスター!!!」


叫びながら俺はゴブリンの一体に襲い掛かった。


その突然の乱入にゴブリンたちが一瞬攻撃の手を止めた。


その隙に女剣士は前方の1体の首を刎ねた。


1体殺された事で残り2体のゴブリンは混乱し始める。


そして何故か標的が女剣士から俺に変わったのである。


「シャアア!!」


謎の奇声を上げこちらに向かってくるゴブリン、手にはこん棒有りの戦闘好き。


こちらは右手に石、過去に格闘技経験無しのアダルトビデオ好き。


どちらが勝つかは明白だ。


ゴブリンのこん棒がフルスイングされると、俺の腹部にヒットする。


「ぐえっ!」


胃液を吐いてその場にうずくまる俺を2体のゴブリンがにやけた顔で見下ろしている。


そして2本のこん棒が振り上げられる。


その時。


ヒュン、という音がすると、ゴブリンたちはこん棒を足元に落とし倒れた。


「え?」


腹を押さえながら倒れたゴブリンを見ると、2体の背中に深い切り傷があった。


「助かった。貴殿が居なければ危なかったよ。大丈夫か?」


見上げると女剣士が微笑みながら俺に手を差し出していた。彼女はゴブリンのヘイトが俺に向いている隙に2体を難なく倒したのだった。

そして彼女はとても可愛い顔をしていた。こんな可愛い子がゴブリンに連れ去られたら正にエロ漫画展開だ。

それを防げて本当に良かった。


俺は彼女の手を借り立ち上がる。


「だ、大丈夫です。生きてて初めてお腹をこん棒で殴られてビックリしただけです」


「ははは!鍛えられて良かったじゃないか。改めて礼を言わせてくれ。あの時かなり危なかったんだ、本当にありがとう」


想像したセリフとは違ったが、感謝されると人は嬉しいものである。俺は顔を赤らめ照れ笑いした。


「いえいえ、気にしないで下さい!それよりあなたこそ大丈夫ですか?右脚が腫れてるような」


彼女は軽装備のせいで、打たれた太もも部分は肌が露出していたのだ。


「ああ少し痛むがすぐに治るだろう」


「でもめちゃ痛そうですよ。あ、良かったらこれ使って下さい」


俺はさっきアイテムガチャで作った薬草を差し出した。


「いや助けて貰った上に薬草まで貰っては…」


その代わりに俺と食事して下さい!デートして下さい!


そう言おうか迷ったが、ここはもっと有益な交渉をすべきだ。


「じゃあ代わりにこの世界の事を教えてもらえないですか?実は俺、記憶を無くしていてこの森で目を覚ましたんです」


転生した人が付く嘘ランキング上位に入っているであろう〝記憶を無くした〟これで全て納得させられる!


「そうだったのか、変わった服装ではあるので異国の者かと思ったが」


ちなみに〝異国から来た〟という嘘はボロが出そうなので使うのをやめておいた。


「記憶が無いのは大変だろう。これも何かの縁だ、私が近くの町まで案内しよう。ああ、申し遅れた。私の名はアリシャ、まだ駆け出しだが冒険者をしている」


「助かります!俺の名は、さえ…えーと、煉…レンです。レンって呼んでください」


「そうか、レンよろしく頼む。ではこの薬草有難く使わせて頂くよ」


アリシャは薬草を傷口に付けた。


すると、薬草は輝きながら消滅していく。


そして赤く腫れていた彼女の右脚の腫れは収まり、元通りに回復していたのだった。


うーむ、てっきり食べるのかと思ってたけど斬新な使い方なんだな…。



「ありがとう、すっかり回復したよ。では行こうか。この山道を下り森を抜けると、すぐオルという町が見えるんだ。そこへ行こう」


「おおお!町!楽しみです!」






















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