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奴隷勇者と追放聖女  作者: ただの置物
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第5話 友情の証

 応接間から受付に戻った俺たちは、冒険者登録を済ませた。


 受付の隣には、現在受注可能なクエストが載っている分厚い冊子があった。クエストは採取、討伐、護衛、調査など大まかに4種類に分けられているようだ。


「上流国民になるために活躍するなら、やっぱり討伐なのか?」


「ううん。ふつうは採取、調査のどっちかよ。討伐と護衛はそんなに強い魔物と戦うことがないから、功績なんてちっぽけなものなの」


 あれ、そうなのか。まぁ確かに、倒しただけですごい賞賛されるような魔物が街の近くにいたら、とっくに討伐隊とか組まれているよな。


「なるほどな。というか、採取もそんなに功績はもらえないと思うんだが……」


「何言ってるのよ。貴重な鉱石とかは危険な魔物がいるダンジョンにあるし、他にも治癒効果の高い薬草は大森林の奥地にあるの。だから、普通の人じゃ採取できないでしょ? そういう物を採取するのだから、功績は討伐なんかよりは全然高いわよ」


 なるほど、確かに言われてみればそりゃそうだ。

 街を襲うかどうか分からない魔物を討伐するより、貴重な薬草とかを採って来た方がみんなハッピーだ。


「じゃあ、まずは採取クエストを受けに行かないか?」


「賭けではあるけど、調査の方が早く上流国民になれると思うのよね。一度、ダンジョンの新階層を見つければそれだけでなれるはずだし」


 ダンジョンというものがどういうものか分からないけど、そんなに簡単に未開拓値が見つかるような場所ではないことは確かだ。


 運が良ければ早く行けるのかもしれないが、ここは堅実に行っておきたい。


「まだ新入りで経験も浅い俺たちが見つけられるほど甘い場所じゃないだろ? とりあえず採取を基本に進めて行かないか?」


「確かに強いだけじゃどうしようもない場所だろうし、それがいいのかな。じゃあ、どのクエストにする?」


 採取クエストと言っても様々だ。さっきエアが言っていたようなものや、集めるのは簡単だがその量が大量であるものなど。


 そんな中、一つのクエストが俺の目にとまった。


「これなんかいいんじゃないか? “アンフェール古代洞窟低層にある夢幻花一輪の採取”。低層ってことは魔物の強さもそんなに強くないだろうし、一輪ならすぐ集まると思う。最初のクエストとしては良い塩梅な気がするんだ」


 エアの同意を得て、俺たちは受付のお姉さんにこのクエストを受けたい、と伝えた。


「承りました。特級魔術を制御するお方とそのお仲間なら、大丈夫でしょう。アンフェール古代洞窟や夢幻花についての詳細は必要ですか?」


「はい、お願いします」


「アンフェール古代洞窟まではこの街から出て、北方向に整備されていない道を3日ほど歩いたところにあります。周囲には目印がありますので、見逃すことはないかと思われます」


 3日、思ったよりも遠い道のりだな。女の子と2人きりでいるには長すぎる時間だ。いや、マジで。たぶん話もたないよね、どうしようか。


「アンフェールは未だに第17層までしか調査が進んでいないダンジョンです。一般人が入ることが出来るのは第5層まででして、それより下の階層に行くには許可が必要になりますので、ご注意を」


 調査クエストの中には、許可を貰って5層よりも下に行くものもあるんだろうな。やっぱり、経験を積んでから難しい調査クエストは受けておこう。


「夢幻花の発見報告は主に1、2階層となっております。低階層と言えども、強い魔物も点在してますので、十分にお気をつけください」




※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 俺たちはまず、旅に必要な道具を店で買うことにした。片道3日に加えてダンジョン内で野宿する必要も考えて、安全に眠ることが出来る場所や食料は確保しておきたい。


 だから、俺たちはギルドのすぐ近くにあった道具屋さんに寄っている。


 二人とも鞄を持っていないから、それも買わないといけないと思っていたけどそんな必要はなかった。

 エアが指輪型の運搬用アイテムを持っていたのだ。


 効果はよくある異次元収納ボックスみたいなものだ。虚空に物を掲げて念じれば、異次元空間に収納されるらしい。原理は謎。


「屋外やダンジョンで安全に一晩を寝て過ごせる空間が欲しいんです。そういうアイテムありませんか?」


 ダンジョンやら魔物やらが存在する世界だ。そういったアイテムは絶対に需要があるから、造られているはず!!


「あるにはあるが、かなりかさばるぞ? あんた達鞄も持ってないみたいだし一緒に買った方がいいと思うぜ」


「いや、それに関しては大丈夫だ。彼女が運搬用のーー」


「ホテルに置いてきただけで、ちゃんと鞄は持ってるから大丈夫!!  どれがその商品なの?」


 エアはわざわざ俺の言葉を遮ってそう言った。


「あぁ、安全に寝たいんならあれだな。最近王国で流行ってるテントと、魔物よけの結界を展開する魔道具だ。魔道具は1つにつき、効果は12時間だからたくさん買った方がいいと思うぜ」


「じゃあ、テント一つと魔道具を10個売ってくれ」


 往復6日とダンジョン内で手間取った時用に4個。余ったとしても、使い勝手が良いものだから大丈夫だろう。


 道具屋での用を済ませた俺たちは店の外に出た。


「なぁ、エア。もしかして俺、なにか不味いことでも言ったのか? その指輪のことを言おうとしたら、急に遮ってきたからさ……」


「あぁ、それはね。この指輪結構貴重なものだから、街中でバレちゃったら盗みに会うかもしれないの。それが怖くて……」


 確かに運搬用のアイテムがそこら中にあったら、鞄なんてこと道具屋の人が言うわけもない。考えが及ばなかった。


 だけど、なんでお金を節約してるはずのエアが、そんなに貴重な物を持っているんだろう。


「お金はまだまだ沢山あるから、食料を買ってもお釣りがくるくらいね」


「あぁ、分かった。それと、なんか悪いな……」


 少し振り回されてはいるが、この子は俺の命の恩人であり今なお俺に食料などを恵んでくれている人だ。


 決して、その感謝を忘れちゃいけない。


 次に俺たちは食料品店に行った。そこは冒険者ギルドよりも遥かに大きい建物で、中も巨大なデパートかと勘違いするほどの広さだ。


「肉、パン、野菜。米と魚はなさそうだな……。じゃあ、とりあえずこの3つをバランスよく買って行こうか」


 確か炭水化物とタンパク質とビタミンだったか。それらをバランスよく食べないと、免疫力が弱くなったりと色々な支障が出るらしい。


 学校の授業もこんな時では役に立つものだな。


「野菜いるの? パンと肉だけで大丈夫だと思うんだけど……」


「ダメだぞ、エア。野菜食べなかったら人間は思うように動けなくなるんだ。食べたくないのは分かるけど、冒険の時には必須なんだよ」


 エアは不満そうに 「やだなぁ」 と声を漏らしている。

 分かる、俺も美味しいと思ったことないもん。だけど、我慢するしかないだろう。


「野菜なんかよりも、まずはお肉。お肉を見に行きましょう!!  筋が入っていないものがいいから、オーク辺りが良いかなぁ」


 エアはうきうきしているのか、スキップしながら肉コーナーまで向かう。

 

「でも、筋がない肉って高いんじゃないか? 今は節約しておきたいし、筋があっても安い肉をーー」


「だめ!!  美味しいもの食べないと、力も湧いてこないよ!!  野菜は我慢するから、美味しいお肉を買うくらいいいでしょう?」


 エアは目をうるうるさせて、上目遣いでこちらを見てくる。


 ……確かにめちゃくちゃ不味い肉食っても英気を養うことは出来ない。そういう点では一理あるのかもしれない。


「わかったよ。肉はある程度なら高いのを選んでもいいよ。俺はパンと野菜のコーナー行ってくるから、お金払うところで待っててくれ」


 決してエアの上目遣いにやられた訳じゃないぞ!!  俺がきちんとメリットを考えた結果、筋のない肉がいいと思ったんだ!


「えっ? 一緒に回ろうよ。ほら、仲良しの証!!」


 エアはなんの前触れもなく、俺の手を握ってきた。

 

 ……まじか。俺がこれまで17年間生きてきて叶わなかった夢があっさりと叶ってしまった。え、マジかよ。


 人間、驚きすぎると逆に冷静になるってのは本当なんだな。今、すっごい落ち着いてる。


「ほら、早く行くよ!!」


「お、おう。分かったから、引っ張るなって!!」


 落ち着け、エアは友達の証って言っていた。だから、俺たちは友達だ。

 異世界では、手を繋ぐくらいなんともないんだろう。まぁ、俺たちの世界でもだけど。


 だから、決して変な勘違いはするなサカヒロ。俺たちは冒険者仲間であり、増してや彼女は命の恩人。

 絶対に彼女に迷惑をかけるようなことあってはならないのだ。



 そのあとは特に変わったこともなく、肉、パン、野菜をバランスよく購入した。


 肉はエアの要望通りオークの肉を。オークって言えば豚だし、正直俺も期待している。


 パンは地球で言うフランスパンのような物を買った。これが美味しそうなパンの中で最も安価だったからだ。


 野菜はほうれん草みたいなやつを買った。これなら、単体でも食べられるし、健康的にもかなり良かったはずだ。


 ちなみに食料の保存についてだが、なんとエアの指輪は入れたそのままの状態で維持してくれるらしい。


 つまり、食べ物をどれだけ長い間入れていても腐ることがないのだ。

 いや、この指輪は本当に最高だな。これのおかげでかなり苦難しそうな食料問題が一気に解決する。


 ちなみに料理は俺がする。小学校から高校まで、俺の最も得意な教科は家庭科だっただ。

 編み物や料理、そういった技術は人並み以上にある自信がある。


 こうして俺たちは、アンフェール古代洞窟に向かう準備を整え終えた。


 異世界で初めての冒険、行ってみよう!!

読んでくださり、ありがとうございます!!

少しでも面白いと思ってくれたら、ブクマ、評価等よろしくお願いします。投稿の励みになります。

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