表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

一千一瞬物語

ショートショート『能力』

特別な人間になりたい。

俺は霊山にこもり、厳しい修行のすえついに神様に会えた。


「お願いです! 超能力をくださいっ!!」(必死)

「え~? 気がすすまないなあ」

「なんでもいいのでどうか一つお願いします!!」

……そして得られた能力は、

『人が食べているラーメンをうどんに変化させる能力』だった。


俺が飲み屋でヤケを起こしてあばれていると、

薄汚れた前掛けをした小太りの男に話しかけられた。

「にいちゃん、どうしたんだい?」

俺が事の次第をまくしたてると、男にガッと肩をつかまれた。

「そいつはすごい!! ぜひ俺に協力してくれっ」

「???」

そのおやじは近所のラーメン屋『覇王』の店主なのだそうだ。

なんでも、ラーメン好きが高じて親の遺産が入ったとかで念願のラーメン店を開業、以来20年もの間まったく客が入らない。

さすがに遺産も尽きてきてピンチだという。

元凶は向かいに、すごく人気のライバル店があるためだそうだ。

なんでこのおやじはそんな立地に出店したんだ……と思ったが、ライバル店の方が後からできたそうだ。

ライバル店、ラーメン事情に詳しくない俺でも知っている人気店だ。


「ヤ、ヤツらのしょうもないラーメンのせいで俺の究極のラーメン『バナナ』ラーメンが売れないんだっ!!」

「バ、『バナナ』!?」

「なんだとうっ!! 『レモン』や『トマト』入れてる店があるのにバナナをばかにするのかああ~!!!」

「い、いえ」

俺はしどろもどろになりながら、答えると

「とにかく君の力でライバル店をつぶすのだっ!!」

目が血走っている。

俺は彼の尋常でない迫力におされ、報酬1万円で引き受けてしまった。


1週間もしないうちに、ライバル店はつぶれた。

なにしろ、注文して食べているうちに麺がどんどん太くなって『うどん』になってしまうのである。

あまりの怪奇現象に逃げ出す客続出(中には平気で完食する猛者もいたが)客足が遠のき、なにより店主の気力がなくなったのである。


だが、成功したとはいえ俺はむなしさを覚えていた。

「戦いは何も生み出さない。これが『能力者』としての悲哀か……」

一万円を握りしめながら一人感慨にひたっていると、おやじがやってきた。

「おい、これで終わりじゃないぞ。他の店もつぶすのだ!!」

「ええ~!? ちょっとまってくれ」


ちなみに、俺たちの住む□〇市×△町は全国屈指のラーメン激戦区で、

町内に100軒ものラーメン店がひしめいている。


「100軒もつぶすのか!??」

「そうだっ!! ほかの店も軒並み『バナナ』ラーメンをバカにしやがって!! 『死』あるのみっ!!」

『北斗の拳』か、このおやじは。

まあ、1軒1万で100万円もらえるからいいか……。

「ちなみに数が多いから1軒につき千円だっ!!」

「ええっつ~~?!!」



こうして、3か月後×△町のラーメン屋は1軒を除いて全滅した。

ちなみに『覇王』はあいかわらず客は入っていない。



(了)

こちらにも書いてます

https://note.com/applesamurai/n/ne9f391b695ca

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ