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第九十六話 結ばれる二人

 《結婚式》

 純白の花嫁衣装に身を包んだソイベと並んで神父の下へと歩んで行くのは、黒い燕尾服を纏ったウォザディーだった。

 ここは旧東の十五番王領の領都にある教会である。参列者には子供達は勿論の事、フリューニの姿もあった。皆一様に幸せそうな笑顔を二人に向けていた。


 ウォザディーはガチガチになりながらも、チラチラと横目でソイベを見る。

「右足〜、揃えて、左足〜、揃えて、……」

 周りに聞こえない程の小声で歩き方を口にしながらウォザディーとソイベは歩調を合わせていた。神父まであと数メートルの所で二人は立ち止まる。


 目の前には新郎の正装に身を包んだキーベがいた。彼が手を差し出すとソイベはウォザディーと組んでいた腕を離れ彼の手を取る。

 そして二人で神父の下まで歩みを進めたのだった。

 お役御免になったウォザディーはフリューニの隣へと戻って行った。


「保護者のお務めご苦労様」

「何とか無事に終わったぁ……」

 余りに緊張し過ぎたウォザディーは、開放されて心底ほっとしていた。そんな彼を余所に、式は滞り無く進んでいくのだった。


▽▼▽


 式も無事に終わり、ガーデンパーティへと移行した。ウォザディーは食事を摘みながら領民達に囲まれている二人を眺めていた。

 ウォザディーの隣はルニムネが陣取っている。これが終われば彼はウジャーノ侯爵領へ帰ってしまう。

 スージッテ男爵領|(旧東の十五番王領)とはそこそこ離れているので、ルニムネはそう簡単に彼には会えないのだ。


 更にルニムネは成人迄はスージッテ男爵領でキーベやソイベ、そして孤児院の子供達とも一緒に暮らす事が出来るが、成人後はササツィ伯爵領に移り唯一の直系子孫としていずれは伯爵を継ぐ事になるのだ。

 ウォザディーにべったりなルニムネを温かい目で見守っている反対側の隣のフリューニは、優しい笑みを口元に湛えていた。


「あの時はボロボロと泣いていたな」

 ウォザディーは思わず呟いていた。


〜〜〜

 ウォザディーがウジャーノ侯爵の下に来て数日が過ぎた頃である。


「ミフーソカ殿、何故こんな窮屈な物を着なければならないのですか?」

「ウォードよ。違うじゃろ、お父様じゃろうて何度も言うておろうに」

 ウォザディーは今までローブ姿でいる事が大半だったので、キチンとしたシャツにスラックスで上にジャケットで更に首にはネクタイというのは物凄く窮屈に感じたのだった。

「はいはい、父上。で、何でなんです?」

「今日はお前の嫁がやって来る」

 ウォザディーはミフーソカの言った言葉を理解したく無かった。


「またまた、ご冗談を」

「いや、じきにワシの爵位はウォードに継がせる。その為には嫁が居た方が良い。但し再興とはいえ、新興貴族家扱いである我がウジャーノ家には侯爵といえども中々婚姻の話は来なかった。それでも奇特な方はいた」

 何だかウォザディーは今初めて聞いた情報が幾つか有った気がした。それも大切な事をサラッと言っていたようだった。

「こんな中年に嫁ぐなんて、不幸な女性を作ってしまった」

 ウォザディーは罪の意識が芽生えた。

「馬鹿言うで無い。先鋒が望んでの事じゃぞ」

「それは家族がでしょう。その女性はきっと今頃涙を流しながら馬車に揺られている事でしょう」

 ウォザディーの言葉通り、馬車の中で女性は泣いていた。涙の意味はちょっと違っていたのだが。


『コン、コン、コン、コン』

規則正しいノックが響いた。


「旦那様。お姫様が到着いたしました」

「ウォッホン、ご苦労。ワシが出迎えるので、ヌシはウォードの服を整えてやってくれ」

 部屋に入って来たのはスーツに身を包んだメジマーだった。彼は今は執事をしているが、ウォザディーの代になれば家令になる予定で日々鍛えられている所だ。

「畏まりました」

 恭しく礼をしてメジマーはウォザディーのそばに寄った。


「まだ、俺は認めていないのですよ。被害者はどこのお姫様なのですか、まったく」

「おっ、おひめさま、じゃなくてじゃな。そう、良いとこのお嬢さんって事じゃ。はっはっは。とにかく、この件に関しては家の大事だけに決定権はワシじゃよ」

 何だかミフーソカが不自然な態度でメジマーを睨みつけていた。しかしウォザディーの最後の抵抗も虚しく、覆す事は出来なかった。


 そして、ミフーソカと共に現れた花嫁を見てウォザディーは驚いた。

 一方、彼女はぽろぽろと涙を流したのだった。

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