第九十四話 Kの部屋の裏側
《カウコーヨの満喫生活》
カウコーヨは今日も女官のキヌラのお世話を受けていた。
(ほっほっほっ、極楽じゃ。若い女子にご飯を食べさせて貰えるんじゃからな。なっ! なっ! な!)
「あら、カウコーヨ様。今日は食欲が旺盛みたいですわね」
キヌラは普段より早く咀嚼するカウコーヨの姿に満足気だった。
(危ない、危ない。女子に夢中になり過ぎて普通に食べておった。たっ! たっ! た!)
「まあ、もうお腹一杯になったのですか?」
咀嚼のペースが落ちてきたカウコーヨを見てキヌラはこれ以上要らないのかと思い、きりの良い所でご飯を食べさせるのを止めた。
「きゃっ!」
突然アージスモとウォザディーが姿を現したので、キヌラは叫び声を上げて危うく食器を取り落とす所だった。
「へっ、陛下! 如何なさいましたか!」
(何故に此奴がここに?)
「さあな。こいつに聞いてくれ」
アージスモはウォザディーを指し示した。
「師匠。もういいですから、ちょっとどいて貰えませんか」
(馬鹿弟子が! 幸せな生活を壊しに来たのか。かっ! かっ! か!)
カウコーヨはウォザディーの声に何の反応も示さなかった。しかしウォザディーは焦る事無く、鞄から酒瓶を取り出して栓を開けた。
「うそ寝をし続けるなら、この南方の極上な酒は俺が一人で飲んでしまいますよ」
「何しているのですか! カウコーヨ様の自我は崩壊レベルなのですよ! そんな物に反応する訳……」
「まて、早まるんじゃない! それは最高級のやつじゃな。なっ! なっ! な!」
カウコーヨは我慢出来ずに飛び付いてしまった。
▽▼▽
目論見通りにカウコーヨはウォザディーの手から酒瓶を奪うとその香りに酔いしれていた。
「はい、師匠どうぞ」
「こりゃあ、気が利くな。ウォザディーよ。よっ! よっ! よ!」
ウォザディーはグラスを手にしてカウコーヨに差し出した。
「なっ、なっ、なっ、何なんですかぁ!」
キヌラは現状に理解が追い付かずに叫んでいた。
「驚かせたようで、すまんのう。じゃが、最初の1ヶ月間は本当に生死の境をさまよっていたんじゃぞ。ぞっ! ぞっ! ぞ!」
「私がここの担当になったのは3年前からです! つまり最初から意識の無いフリをしていたって事じゃ無いですか!」
キヌラは何かに気付いたようで顔が真っ青になった。
「ほっ、ほっ、ほっ、そういえば、あんな噂話をしておったな。ああ、そんな愚痴も言っておったな。なっ! なっ! な!」
「ななななななっ……」
キヌラは色々と思い当たる節があるようで、今度は顔を真っ赤にしていた。
「もういいですから、他所でやって下さい」
ウォザディーはカウコーヨを押し除けるとディーケユニットの充填装置に入った。
「よしっと、要領は一緒かな」
ウォザディーは各部の拘束装置に自らの体を密着させる。体全体から魔力を吸われている感覚がしたが、基本はディーケユニットに直接充填した時と変わらないと感じた。
直後、装置が未だかつて無い程の稼働を見せ始めた。オーバーヒートすれすれで装置が動いている。
「陛下ぁ!」
足音が近付いて来たと思うと、叫び声に近い声を上げながら扉を叩く無作法な者が現れた。
「陛下! 大変で御座います!」
男の声には焦燥感が感じられて、アージスモは入室を許可したのだった。
「何事だ」
「それが! 突然ディーケユニットの充填のスピードが上がりまして! このままですと城の空のユニットが底を突きそうです! 何だか分かりませんが直ぐに止めて頂けませんでしょうか!」
男は一気に捲し立てると怯えた目でアージスモに懇願している。
「ウォザディー!」
「はい。もう止めましたよ」
ウォザディーは悪びれる事無く答える。
「城にある全量だと、この国の需要の一年分以上だな……」
それだけの魔力を吸い上げられても、何事も無かったようにしているウォザディーに戸惑うアージスモだった。
「あんな量で一年部を賄えるのですか。ディーケユニットとはかなり効率が良いのですね」
その規格外っぷりの魔力量に唖然としている一同を余所に、ディーケユニットに感心しているウォザディーだった。




