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第九十三話 公開処刑の裏側

 《アージスモの策略》

 ウジャーノ侯爵家を再興する事に決めたアージスモは、ミフーソカに書類を渡した。

「はて、これはなんですかな」

「どうだ、良い考えだと思わないか」

 ミフーソカがサインする前に書類に目を通していると、叙爵や領地の書類に紛れて養子縁組の書類が混じっていたのだった。


「このウォードというのは、どなたなのですかな」

「分かっておろう。偽名だ。で、フリューニを降嫁する。侯爵の息子ならば身分的にも申し分ないのでな。だが、当日まで黙っておれよ」

 アージスモがニヤリと笑うと、ミフーソカも悪い笑みを返した。


▽▼▽


 ウォザディーは姿を見えなくする魔法を自分にかけると、前に小麦農家のエクトから貰っていた小麦粉の入ったずた袋に魔法を掛けた。これで他人から見るとずた袋がウォザディーに見えるようになった。

 袋の下の両端が鎖で繋がれた。これで他人には足同士が鎖で繋げれたように見える。袋の上の両端に枷が付けられてそこから伸びる鎖が上部の真ん中に巻き付けられた。これで両手を枷で固定され、枷と首とを鎖で繋がれたように見えるようになった。

 そして袋を動かしていけば、さもウォザディーが歩いているように見えるのだった。隣で声を出して喋れば、仮初のウォザディーが話している様にしか見えない。


 石を投げつけられた時は、風魔法で当たりそうになった石を弾き飛ばした。そして殴り飛ばされた時に袋が裂けかけた。

「ウォー様、袋に穴が」

「振り向くな」

  魔法で筋骨隆々な姿に変えられているメジマーは、慌てて姿勢を正す。ウォザディーはそっと魔法で袋を修復した。


 断頭台に袋がセットされ、刃が固定してあるロープが切られた。袋はあっさりと真っ二つになり小麦粉が舞い散った。

それが他人には首が飛び血が舞い散ったように見えているのだった。

 そして袋の残骸は棺に詰められて無記名で埋葬された。犯罪者は刑を執行された段階で犯罪者では無くなるのだ。なので一般の墓地に埋葬されるが、名を刻むと犯罪者のレッテルが付き纏ってしまうので無記名なのである。

 ウォザディーはそこまでを見届けるとアージスモの執務室へと移動した。


「陛下、これからの事なのですが」

「んっ。ウォザディーか、何処にいるのだ?」

 部屋に転移して来たウォザディーは声を掛けたが、アージスモには彼の姿は見えなかった。


「あっ! これは、失礼しました」

 ウォザディーは、慌てて魔法を解いた。

「魔法とはそんな事も出来るのか。何とかディーケ製品で再現出来ないか? 姿を隠せるマントなど有ったら便利そうだ」

 流石にウォザディーにそんな複雑な魔法具は作れないし、仮にディーケ製品で再現しようにも職人に魔法を見せないと無理だろう。従って、実質的に可能性はゼロに限りなく近いと言わざるを得ない。

「それは無理でしょうね」

「だろうな……」

 アージスモはそれを分かってはいても、残念そうな雰囲気を押し殺しきれなかった。


「それよりも、これからの事を話し合いたいのですが。俺はどうすればいいのですかね」

「先ずはこれに署名しろ」

 アージスモが差し出してきたのは養子縁組の用紙だった。既に殆どが埋められていて、あとはウォザディーが記入する部分くらいしか空欄は無かった。

「新しい名前は、ウォードだ。ウォード・ウジャーノ。再興したウジャーノ侯爵家に養子入りする事になる。領地は旧キエッツォの半分程で旧ミフオサ領も含まれている」

「ウジャーノ? ってミフーソカ殿か!」

 ウォザディーは森の小屋から居なくなっていたミフーソカを心配していたのだが、その安否を確認出来て安心したのだった。


「そうだ。旧ミフオサ領主館を、新生ウジャーノ侯爵家の本館にするとのことだ。王領にいた旧ミフオサ領の者達は帰還を許した。それとお前にやるはずだった東の十五番王領はスージッテ男爵領とした。あの男は王都警備隊にしておくには惜しいのでな」

「キーベが! それはめでたい」

 ウォザディーは友の出世を心より喜んだ。


「これで、昔の恩は全て返せただろうか」

「勿体なきお言葉です。では、一つ俺も役に立ちますか。師匠の所へ行きましょう」

『パチン』

 ウォザディーは指を鳴らしたのだった。

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