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第九十二話 魔法使い絶滅の裏側

 《その時、アージスモは》

 王都に凱旋したティディサア王国軍は民衆の大歓声に迎えられた。その先頭でアージスモはとにかく目立つようにあらゆる方向に手を振るのであった。

 民衆の一人一人に届けるつもりで手を振る事も王族の務めなのだ。

 それは平民街でも貴族街でも変わらない。王城に入って漸くアージスモは一息吐けた。


 そしてその翌日にアージスモはウォザディーが投獄された事を知ったのだった。彼は聞いた瞬間に地下牢に向かっていた。


「陛下! この先は……」

「ええい、構わぬ! どけ!」

 罪人達のいる牢は国王の来る場所ではない、慌てて番兵達は引き止めようとする。しかし、アージスモは強行突破する。こうなるともう止められる者はいないのである。


「ウォザディー無事か! すぐに出してやるからな!」

「はぁ〜。兄弟揃って何してるんですか」

 慌てて部屋に入ったアージスモを待っていたのは、これでもかというほど冷めた目で非難めいた視線をよこすウォザディーだった。


「今話す訳には行かないので、後にして下さい。ちなみに()は取れましたのでこちらから伺いますから」

「んっ、……そうか。分かった」

 アージスモは踵を返すと、番兵に「邪魔したな」と言い自室に戻ったのだった。


▽▼▽


 その夜、アージスモの私室にウォザディーが現れたのだった。

「お前は何を考えているのだ」

「この国の内乱が収まったからには、これ以上戦争が起こるとは思えませんよね」

 世界では50年以上他国間での戦争は起きていないのだ。


「ああ、キエッツォの末路を見たらどの国も、戦争など馬鹿らしいと更に思うのだろうな」

「しかも、元々希少だった魔法使いも今や師匠と俺の二人しか残ってないのですよね」

 ディーケが発見されて以降は各国は様々な方法でディーケのエネルギー活用技術を発展させて行った。その過程で魔法使いの役目も次々と無くなり、次第に立場が逆転してしまった。

 そうなると魔法使い達は不満が溜まり、とある国の魔法使いが反乱を起こして国を滅ぼしてしまったのだ。


 それが発端となり、世界中で魔法使い狩りが始まった。

 ティディサア王国だけは魔法使いを最後まで保護していたが、元々数の少ない魔法使いはあっという間に世界から駆逐されてしまったのだった。


「我が国ではこの先も保護を続けるぞ」

「いえ、それでは世界中からの突き上げが厳しいでしょう。この辺で魔法使いは絶滅する事にしませんか」

 ウォザディーから驚きの提案があった。


「世間的にはカウコーヨ殿は死んだ事になっているから、お前だけだが……それで捕まったのか」

「ええ、存分に悪役を演じるので陛下の力で俺を公開処刑にして下さい。ギロチンが良いですね。魔法で身代わりを用意しますから、それの首を落としてみんなに俺が確実に死んだと思わせます」

 今回の戦いで各国にウォザディーの事が伝わったに違いない。過ぎたる力は身を滅ぼすのだ、このままでは世界中が団結して打倒ティディサアになってしまう。

 経済封鎖や下手をすると世界との戦争になりかねない。それを防ぐには魔法使いの絶滅が一番なのである。


「その代わり、師匠は開放して悠々自適な生活を送れるようにして下さい」

「ああ、天然ディーケのディーケユニットへの充填技術がもう少しで確立するからな」

 迷いの森から大量のディーケが発生しているのでそれを活用する形だ。


「そういえば魔王が魔物はこの星の血肉だと言っていました。それがディーケと関係があるのかもですね」

「そうか……それは良いとして、ミフオサ領を再び作って貰おうと思ってお前をあそこの領主にしたのだがな」

 流石にウォザディーを処刑(のふり)しておいて再建を任せたら元も子もない。偽名にしてもぽっと出の者にいきなり領地を任せるのもおかしな話だ。

 アージスモは頭を悩ませる事になるのだった。

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