第九十話 処刑執行
《王の邂逅》
「陛下、ミーフーソカが謁見を申し出て来ました」
「ミフーソカ? ……ああ、例の横領事件の、変わった被害者か。約束だからな、通せ」
ミフーソカの財産を没収した憲兵はそれを売却して懐に入れていたのだ。その際に彼にアージスモは全額補償を申し出たが、多少過剰とはいえ『本』が有った事は事実と、受け取りを拒否したのだった。
代わりに『必要な時に謁見出来る権利が欲しい』と彼が言ったので特別な許可証を渡していたのだった。
ミフーソカを呼びに行くスチクノを見送りながらアージスモは先日の事を思い出していた。
〜〜〜
「陛下。どうして師匠にあんな茶番劇を演じさせているのですか」
「何の事だ。カウコーヨ殿は手筈が整い次第開放する」
アージスモは心の中で苦い表情をした。
「手筈なんて必要ないじゃないですか。そもそも解放する必要すらないじゃないですか」
「何だと! あの方をずっとあのままにしておけというのか!」
アージスモの茶番に、ウォザディーは息を吐きながら首を横に振った。
「おかしいと思ったのは30年ぶりに城に行った時です。師匠の魔力を確かに感じたのです。でも後から師匠はディーケの充填装置に繋がれていると聞いて、実際にその日は魔力を感じませんでした」
「偶然だろ。機械も常に魔力を吸い続けている訳ではなかろう」
アージスモの眉間に僅かにシワが寄った。
「なぜ身の回りの世話が二日に一度なのですか。毎日だと師匠がぼろを出すからじゃないですか。師匠が二日以上もお酒を我慢出来るとは思いませんよ。世話には食事も含まれますから、酒臭ければおかしいですものね」
「言い逃れは無理か。民衆はギムテアの呪術を悪とした。しかし、カウコーヨ殿の魔法が似すぎていた。丁度、魔力をユニット化した魔法具が出来ていたから、名を改め技術製品のイメージを定着させカウコーヨ殿を隔離した。で、魔法という言葉は消滅した」
ウォザディーは話を聞いて納得すると、悲し気な表情を浮かべた。
「なら、俺は今のままの方が陛下には良いのですね」
そう言い残すとテントを出て行った。
「Kの部屋の事がバレてしまいましたね。あ、大丈夫ですよ。手は打っておきますから」
「……ああ。頼む」
スチクノの言葉に、アージスモは何事かを決心した様な表情だった。
〜〜〜
「陛下、ウォザディー殿を助けて下さいませ。本来なら持ち出したくはありませんでしたが、これを」
「何だ? ……これは!」
紙に目を通したアージスモは悪巧みを思いついたようで、ニヤリと笑った。
「よし、ミフーソカ殿。ウジャーノ侯爵家の再興を許す。領地は旧キエッツォの半分を与える」
「陛下! そういう事では御座いません。それの代わりに何卒ウォザディーをお救い下さい」
ミフーソカは床に額を付けて懇願する。
「うるさい! そして、フリューニをウジャーノ公爵家に降嫁する。喜べこれで跡取り問題は解決したな」
「そ、そんな……」
ミフーソカはアージスモの決定に異を唱えられる立場にない。なので、彼は必要な書類に記入をして正式にウジャーノ侯爵とならざるを得なかった。
そして領地に向かうように命令されれば、大人しく従うしかなかった。
▽▼▽
警備兵はウォザディーを殴り付けて黙らすと、断灯台にその頭を固定した。
「静まれ! 皆も聞いての通りだ! この後に及んでも反省の色一つ見せない極悪人だ、情けは無用なのだ!」
民衆は大いに沸いた。
しかしすぐに黙り込む事になる。黒いローブのフードを深く被った筋骨隆々の執行人が、大きな斧を携えて壇上に上がって来たのだ。その異様な雰囲気に皆、圧倒されていた。
「処刑せよ!」
『ダン!』
アージスモの声の後に、斧がロープを切断して床を叩く音が響いた。
『ザシュッ』
首が切断されるのはこんなにも軽い音なのかと皆が思った瞬間。
『ドォゴン!』
ギロチンが地面に激突して地響きと轟音を響かせた。
「これにて、公開処刑を終了する」
アージスモが転がったウォザディーの頭を睨み付けながら、高らかに宣言したのだった。




