第九話 三十年前(二)
《30年前 魔王討伐後》
結果から言うとウォザディー達は魔王を倒した。盛大な凱旋パーティーが開かれ各国のお偉いさん方から上っ面だけの賛辞の言葉を頂いたウォザディー達だった。
論功行賞の場でウォザディーは爵位をヤーカンとギムテアは相当の金額を頂き、国境沿いの王領を三分割して各領地として与えられた。
〜〜〜
「ミフオサ男爵か……変な感じだな」
領地へと向かう馬車の中でウォザディーは呟いた。
「あれ? もう着いたのか」
馬車が止まったのだが違和感があった。まだ日は高いので宿を取るにしては早過ぎるのだった。
「ミフオサ卿、降りて下さい」
護衛の騎士が声を掛けて来たのでウォザディーは馬車を降りるとそこは森の中だった。
「殿下のご命令で暫くこの小屋に身を隠して頂きたい」
騎士は申し訳なさそうに目の前の寂れた木こり小屋を指し示した。
「分かりました。いつまでここにいれば良いのですか」
「食料の備蓄が一週間分なのでそんなに長い間では無いかと思います」
ウォザディーは帰ろうとする騎士や御者に別れを告げて小屋に入った。中はちょっとした居間と倉庫兼仮眠室があるだけだった。彼が魔法使いでなかったらここで一週間生活するのは過酷だっただろう。
「秘密裏に殺されるのかな」
そもそも一週間も生かしておく事は考えてないのかもしれない。ウォザディーが孤児院にいた時に読んだ本に、英雄が民衆の支持を集めてそれを恐れた王によって暗殺される話などがあった事を思い出す。
「ヤーカンとギムテアは大丈夫かな。まあ二人は元々貴族だから問題無いかな」
長い歴史の中で平民が功を立て爵位を得る事は何度か有った。しかし新興貴族家は長続きしないのだ。そもそもが領地経営や政治の事など学んでいない上に、周りの貴族家のやっかみ等で除け者にされる。更には甘い言葉で騙そうとする者ばかりが寄って来て最終的には没落してしまうのだ。
「面倒事に巻き込まれて惨めな思いをするくらいなら、一思いに殺される方がマシかな」
覚悟を決めたウォザディーはせめて最後の時までに一歩でも魔法の深淵に迫ろうと研究に没頭したのであった。
魔王の使う魔法は威力こそウォザディーより弱かったが、濃さの様な物が有りとても厄介だった。そこでウォザディーは魔法にはまだ未知の領域があるとの考えに至ったのだ。
「…………サ卿、ミフオサ卿!」
研究に没頭していたウォザディーを呼ぶ声が聞こえた。
「あれ? 貴方なのですか」
ウォザディーは騎士が暗殺をするなど思ってもいなかったので驚いた。
「はい私ですよ。申し訳ありませんが、まだここにいて頂かないとならなくなった為に食料などをお持ちしました」
「へっ、食料?」
殺されるというのは、どうやらウォザディーの勘違いだった様で従者らしき者がせっせと倉庫に物を運んでいた。
仕事を終えた従者らを乗せて馬車は森から離れて行った。
「貴方は帰らなくて良かったのですか」
「私は護衛としてここに残れとの命を受けておりますので」
それからは騎士との共同生活となった。騎士は1週間毎に来る食材運搬の馬車を利用して入れ替わっていった。
「何故、俺は見張りをつけられて生活をしないといけないのかな?」
「見張りなどとは心外ですね。私は護衛としてこちらに赴任して来ているのですよ」
もう幾人の騎士が入れ替わったかも数えるのも馬鹿らしくなってきた頃、ウォザディーは現在の状態を皮肉交じりに聞いてみたが答えは他の今まで来た騎士と同じだった。
「またそれか! 人を攫って来ておいて、こんな小屋に軟禁状態で見張りじゃ無いだって?」
「ええ、御身の事を考えての殿下の判断ですので何卒ご辛抱を」
やはり騎士の答えは変わらなかった。
結局、ウォザディーのこの小屋での生活は3年近く続く事になったのであった。




