第八十六話 後始末
《憲兵の意地》
孤児院の前に二人の憲兵が現れた。
「ソイベ・ササツィ! 明日お前の裁判が開かれる。そこでお前の有罪は決まる。その前に自ら出頭すれば減刑をお願いしてやるぞ!」
「結構です。私は主に恥じるような事は何一つしてませんから!」
ソイベは姿を見せるとそれだけ言って、また孤児院の中へ戻って行った。
「後悔しても知らないからな。」
そう言い残すと憲兵達は帰っていった。
「キーベさん、どうしましょう。もし私が有罪になればこの孤児院は没収されてしまうわ。子供達の居場所が無くなってしまう……」
「大丈夫だ。そんな事にはさせない。俺が付いてるからな」
二人は見つめ合うのだった。
「何だか良い雰囲気だと思わない? ねえ、ルニムネ」
「そうだね。この間まではウォザディーさんとだと思っていたのに」
「「女心は移ろいやすいのよ」」
隣の部屋ではソーネアとルニムネ、それにアサホとチイコが女子トークに花を咲かせているのだった。
▽▼▽
翌朝に伝令を受けたアージスモは慌てて軍を出した。
ウォザディーはヤーカンのテントにティディサア王国の旗を掲揚した。そうして投降したかなりの数の捕虜は取り敢えず魔法で押さえ付けてある。
「フジョー、報告を任せてもいいか」
「ええ、構いませんけれど。領主様はどうされるのですか」
フジョーは何となく不安になって聞き返してしまった。
「一度、領に戻る。拐われた人達を元に戻さないといけないからな」
「成る程、確かにそれは早い方がいいですね」
フジョーは領に戻ると聞いて安心したのだが、胸の奥のモヤモヤは晴れなかった。
「30年経っちまったが返してもらうぞ」
ウォザディーは意識が無く拘束されているヤーカンから指輪を取り返した。
「じゃあ、あとはよろしく」
「はい、お任せ下さい」
ウォザディーは指を鳴らした。
〜〜〜
「まだ、他所ん家としか思えないな」
「それは致し方ない事でございます。領主様はここにいた時間は僅かですから」
領主館に戻ったウォザディーは執事のデュオキャに保護した人の所へ案内してもらっていた。
「やあ、みんな。元気そうで何よりだ。では、帰ろうじゃないか」
「しかし僕達には……」
皆一様に暗い顔をしていた。
「これの事か、もう心配いらないぞ」
「えっ、あれっ、本当だ! もうあの恐ろしい感覚がしない!」
魔法具は精神にも影響を及ぼし魔法を放つ欲求を高め、死ぬまで魔力を放出し続ける仕様になっていた。
ウォザディーは取り出した大量の魔法具を燃やし尽くした。
「デュオキャ、皆を村ごとに分けて送り届けてくれ」
「はっ、手配いたします。領主様はお出掛けになられるのですか」
デュオキャはウォザディーの指示から察して質問した。
「ああ、仲間が困っているからな。場合によっては力を借りるかも知れない」
「はい、幾らでも使って下さい。では、行ってらっしゃいませ」
デュオキャはすぐに使用人達に指示を出す。彼の言葉に、ウォザディーは安心して孤児院へと向かった。
〜〜〜
「あっ、ウォザディーさんが帰ってきた!」
孤児院に戻るとすぐに、ルニムネがウォザディーを見つけ抱きついてきた。
「ソイベさん、なんか困った事になっているんだろ」
「ええ、結界のお陰で連れては行かれませんでしたけれど……」
ソイベは状況をウォザディーに説明した。
「成る程な。ここを捨てる気はあるか」
「でも、そうなると子供達が住む場所が無くなってしまいます」
ソイベはそれだけは出来ないと決意している。
「じゃあ、住む場所を移すのなら構わないか?」
「ええ、少し残念ですが致し方ありません。でもそんな場所は……」
「そんな都合の良いところは無いぞ」
移住が可能だと分かると、ウォザディーはソイベとキーベの否定的な意見は無視した。
「よし、じゃあ引越しの準備だ!」
そして孤児院の皆は大した荷物も無く、あっという間に準備を終えた。一度家へと戻っていたキーベが荷物を纏めて合流すると、ウォザディーは皆を移動させたのだった。
〜〜〜
「デュオキャ。今日から当面の間、彼らをここに住ませる」
そうして皆の新居が決まったのだった。




