第八十三話 備えと後処理
《キュテノ防衛戦》
「さて、皆の意見を聞こう」
「ワシは打って出るべきだと思う。あの武器に拠点防御は自殺行為だ」
「だが、野戦では魔物に為す術が無いではないか」
「乱戦に持ち込めば魔物は使えないのではないか。少しは頭を使われたらどうだ」
「そもそもどうやって乱戦に持ち込むのだ、これだから脳筋共は話にならん」
軍議はお偉方の罵倒し合いに変わっていった。
「埒が明かんな。先の反乱の時はどうだったのだ、プトル殿」
「あの時はこのような兵器はありませんでしたので。ただ魔物の量と種類は比べようがありませんでした。それこそ手も足も出ませんでした。私が生きていられるのも、か……とある人のお陰です」
危うく名を出しそうになったプトルは話を途切らせた。
「成る程な、今回の比ではなかったと。では、今の状況に何か策は思い付くか?」
「あまり良策では無く、犠牲者も少なからず出ますが伏兵を潜ませて例の兵器部隊を迅速に壊滅させる位しか思いつきません」
「流石、プトル様です。ですがウォー様がほぼ犠牲者を出さずにお一人でそれを為したではないですか」
突然割って入った黒尽くめの者の言葉に会場はざわめき出す。
「お前か。それで、その話を詳しく聞かせてくれないか」
「どう言う事ですか?」
前回の反省を活かして黒いローブのフードを深々と被ったメジマーは辺りを見回してウォザディーがいない事に気が付いた。
一先ず近隣の村の者が拐われて無理矢理に魔法具を埋め込まれた事や彼らや馬車を奪取して東の十五王領に匿った事を報告した。
「それで何故ウォー様がここにおられないのですか」
「伝令! 急使でございます」
メジマーの言葉は突然軍議の場に割り込んで来た男によって遮られた。
「何だと!」
渡された小さな紙に目を通したアージスモは声を上げた。
「王都に魔物の襲撃があった。貴族街に侵入を許すのも時間の問題らしい」
アージスモが読み上げると、会場全体が騒然とする。
「成る程ウォー様は孤児院ですか。では、陛下。我は用が出来ました故、失礼致す」
「何だと! 何をするつもりだ」
アージスモはあまりに勝手なメジマーの行動に眉を顰めた。
「我はウォー様のなさろうとする事の手助けに参るのみ。陛下はこの地で陛下の為すべき事をなさって下さい」
そう言い残すとメジマーの姿は消えたのだった。
▽▼▽
「キーベさん! ルニムネが居ない……」
小屋の中にルニムネの姿が無かった事でソイベは決死の覚悟で庭に戻っていった。
「えっ、ルニムネ! ウォザディーさん? 魔物は? えぇ! キーベさん足がある!」
目の前の情報量の多さにソイベは混乱するのだった。
「ルニムネ、俺はこんな事を企んだ悪い奴を懲らしめてやらなきゃならない」
ルニムネは寂しそうな顔をしたが、何かを思い出したようでウォザディーの耳に手を当てて内緒話をした。
「すぐ戻るからお利口にしているんだぞ」
「うん……。あのね、あの事は絶対に内緒にしてね……」
もじもじしているルニムネを見ているのも微笑ましいと思うウォザディーだった。
「ああ、勿論だ。ただ寝てる時にしたら、早朝に俺を起こさないでくれよ」
「もう、馬鹿!」
揶揄ったウォザディーにルニムネは頬を膨らませた。
「ふふっ、あははは〜!」
「ぷっ、ははははっ!」
しかし、二人は目を合わせると可笑しくなり笑い合った。
『パチン』
ウォザディーが指を鳴らすと孤児院の周りの空気が一瞬揺れたように見えた。
「これで、悪いのは入って来れないから安心しろ」
「うん、ありがと!」
ウォザディーはルニムネの頭をひと撫でした。
「じゃあ、行ってくる」
ウォザディーはみんなに向けそう言い残すと消えてしまった。
〜〜〜
「やあ、ヤーカン覚悟は出来てるだろうね」
「うひぃい!」
いきなり背後に現れたウォザディーに声を掛けられて、ヤーカンは肩を跳ね上げて、恐る恐る振り返ったのだった。




