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第八十二話 復活

 《破れた結界》

 クレナが飛び去って行ってしまうと、ソイベは孤児院の皆を森の小屋に移した。キーベも皆に手伝って貰って運んだ。


「早く戻って来て」

 一人庭に出て祈るように空を見上げた。そこに、大型の魔物が腕を振り下ろした。淡い光と鈍い音と共に空間にひびが入った。

 ソイベは慌てて森の小屋に避難しようとした。そして見事に足を滑らせて転んでしまった。

 その瞬間にガラスが割れる様な音と共に閃光が視界を塞いだ。とっさに目を瞑ったが、彼女は目の焼けるような痛みに悶えていた。


 眩む目を必死に開くと目の前には大型の熊の様な魔物が仁王立ちになっていて、今にも腕を振り下ろしそうだった。

 ソイベは尻餅を搗いた状態で必死に後ずさるが大して距離は広がらない。そして遂に、彼女に向かって魔物の爪が振り下ろされた。


『ガギィン』

 ソイベの目の前で金属音がした。そこには座り込んだ状態で魔物の爪を剣で受け止めているキーベがいた。


「逃げ……早く……ろ!」

 キーベは力任せに剣を振り切った。魔物の腕が跳ね上がる。

 その隙に片足で器用に立ち上がり、ソイベに手を差し伸べ引き上げた。


 キーベは片足で跳ねながら進む。ソイベが先に扉の中に入り、続けてキーベが入ろうとした瞬間に視界の隅にルニムネを捉えた。

「何……外に……る!」

「きゃぁ!」

 小型の魔物がルニムネに向かい口を広げて飛びかかった。キーベは剣を支えにすると魔物に向かって飛び掛かった。


「ぐわぁ!」

 キーベは肩が熱くなった。その後に痛みが襲って来る。彼は身を挺してルニムネを魔物の牙から守ったのだった。

 魔物は首を振ってキーベを吹き飛ばした。

「や……ろぉ!!!」

 横たわるキーベの目の前でルニムネに飛び掛かった魔物が吹き飛ばされた。


「!」

「きゃぁぁぁ!」

 そして魔物を吹き飛ばした大型の魔物の爪が身動きの取れないキーベの眼前で、ルニムネに振り下ろされたのだった。


▽▼▽


「くっううううぉ」

 あまりの空気抵抗にウォザディーは変な声が出てしまった。

 クレナの体に一瞬力が入った。右肩から血を吹き出しながら吹き飛ばされたキーベが見えたのだ。

「キーベ!」

 ウォザディーは叫んでいた。そう叫べたのだ、クレナが体を強張らせて止まってしまっていたからだ。


 ウォザディーの目に飛び込んだのは大型の魔物が、ルニムネに向かってその鋭い爪を振り下ろしている姿だった。


「止めろヤメロやめろ止めろヤメロやめろ止めろ、止めてくれ!」

 世界はスローモーションになった。魔物の爪はゆっくりと確実にルニムネに向かっていく。


「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれぇ!」

 ウォザディーの頭の芯に『ズキリ』と突き刺す様な痛みが走った。それと、同時に魔物の動きが止まった。更に彼の右の手の甲に激痛が広がっていく。


「ぐわぁ!」

 頭の中は痛みが走り回り、右手は激痛と共に張り裂けそうな感覚も広がっていく。そして……


 右手が弾け飛んだ。文字通り木っ端微塵に手首から先が破裂したのだった。


 次の瞬間ディアトキアを優しい光が包み込む。その光に触れた魔物は触れた部分から溶けるように消えて行った。

 そしてその光がキーベに迫っていた。

「ウォー様、あの男に光が!」

「心配ない」

 そう言ったウォザディーの右手には光が集まっていた。


 一方、キーベは完全に光に包み込まれてしまった。

「気分はどうだ」

「ああ、最悪だな」

 キーベの前に降り立ったウォザディーの問いに、彼は正直に答えた。

「あれはお前自身の魔力も使って傷を治すからな」

「そう言う事か。これが魔力枯渇の症状か。うぇ。気持ち悪い」

 光が収まると、キーベの傷は全て塞がっていた。もちろん左足も元に戻っている。


「泣くな。ルニムネ。大丈夫だから」

「うっ、うっ、大丈夫じゃがぁい!」

 ルニムネは泣きながら怒っている。その彼女の足を液体が伝って地面には水溜りが出来ていた。


「ほら、何も無かった。誰も何も見なかった。大丈夫だ」

「えっ、あれ? 本当だ」

 ルニムネが何故泣いてるのかを察したウォザディーは指を鳴らした。彼女は下腹部に手を当てて驚いて泣き止んだ。

「怖かったよぉぉぉぉぉぉ」

 ルニムネはウォザディーに飛び付くと縋り付いた。彼が優しく抱き締めると、折角止まった彼女の涙が再び溢れ出した。

 彼は彼女が泣き止むまで頭を撫でていたのだった。

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