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第七十九話 油断の代償

 《ミフーソカ捕獲》

「ミフーソカ先生、わざわざお越し頂いて申し訳ありません」

「何じゃ、そんな事で謝らんで良い。それでどうしたのじゃ?」

 シニオの自宅に呼ばれたミフーソカは違和感を感じていた。仕事の話をする時は必ずシニオ商会の事務所で会っていたからだ。


「単刀直入に言います。あの孤児院には関わらないで下さい」

「ふぉっふぉっ。ふざけた事を申すで無い。あんなに余生を過ごすのにぴったりの場所など他に無いのじゃな」

 ミフーソカにとってあの森の小屋は楽園なのだ。先日シニオに渡したように人々の役に立つ新たなディーケ製品のアイデアも次から次へと湧いてくる。

 今が人生最高の時といても過言じゃないと、ミフーソカは思っている。


「どうしても、あそこを出て行って貰う事は出来ないのですか」

(くど)いぞ、ワシの最後の輝きはあそこでこそ可能なのじゃ」

 森の小屋にはウォザディーの収集した魔法具関連の本に加え、彼自身が魔法の深淵を探究した過程を記した物もある。そして更に大きいのは、魔乃物と呼ばれる存在を間近で見れる事だ。

 というよりも実際に交流出来るのだ。彼らの話は非常に興味深く、そして勉強になる。


「その反応だと噂は本当のようですね」

「噂?」

 ミフーソカは基本的に引き籠もっているので噂の類には縁がないのだ。

「あそこには『悪魔に通じた魔物が暮らしている』と言う事です」

「ふぉっふぉっ、悪魔になど通じておらんわ。それに魔物じゃなく魔乃物じゃよ。彼らは中々に気持ちの良い連中じゃぞ」

 彼らの行動理念は人間とは確かに違うが、それが相容れないものだとは思えない。現にあそこでは何の違和感もなく人と魔乃物が共存出来ている。


「それにじゃ、一人はウォザディーに付いて戦場に行っておるのじゃぞ。それを仲間とせずに何と致す」

「成る程、そのせいかもしれませんよ。我軍が連戦連敗なのは。」

 シニオは苦々しい表情を浮かべた。

「どう言う事だ!」

「言葉通りです。このままでは、王都まで戦場になり兼ねませんよ。」

 ミフーソカはあの甲冑があってウォザディーが負けるとは思えなく、声を上げた。


「兎に角、もう先生をあそこに返す訳にはいかなくなりました。しばらくはここにいて貰います」

 その部屋は内部からは登録した者の生体認証が無いと出れない造りとなっていたのだ。

「先生は次捕まったら死刑になりますよ。そんな事は我々がさせません」

 そう言い残すとシニオは部屋を出て行った。


「そんなのは覚悟の上じゃ。全く馬鹿な教え子達じゃ」

 身を案じてくれる気持ちは痛い程伝わった。ミフーソカは大人しくその部屋に監禁されることにしたのだった。


▽▼▽


「くそ! どうすりゃいいんだよ!」

「ウォー様、とにかく今は引きましょう」

 戦いは昨日とは打って変わってウォザっディー達は防戦一方だった。

 今や林は炎に包まれていたのだった。昨日まで鳴りを潜めていた魔法具兵器部隊が復活したのだ。


「くそっ、ヤーカンがあそこまで非道だとは誤算だった」

 魔法具兵器部隊は子供達なのだ。それも近隣の村々からさらって来たであろう子供だ。

「こちらからは手が出せないが、長引けばあの子達の魔力枯渇が心配だ」

 ウォザディーが思っている事は当然アージスモも思っている事であって、軍を纏めて突撃を掛けるのであった。


「狙いは敵本体のみだ! 極悪非道な奴らに鉄槌を!」

 火の海の森を飛び出すティディサア王国軍は両方向から同時にキエッツォ軍本隊を叩く筈だった。


「「「うぎゃぁぁ!」」」

 しかし森から出た所で地面から魔物が現れるのであった。

「まだこんなにも残っていたのか!」

 先の戦いでかなりの数を減らしたと思っていた魔物はまだ充分驚異になる数がいたのだった。


「引けぇ! 引くのだぁ! キュテノまで戻るぞ!」

 アージスモは声を枯らさんばかりの大声を張り上げた。ティディサア王国軍は追撃を受けながらも何とかキュテノまで退却した。


 だがそこにウォザディーの姿はなかったのだった。

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