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第七十話 理解者

 《メジマー急ぐ》

主人(オーナー)殿、如何なされた。随分と考え込んでいるようだが」

「あ、ズナギュカさん。いえ、大した事ではないのですよ」

 ソイベは手にお鍋を持って外に向かっていた。

「主人殿、外で料理でもなさるのですか」

「もう、何を言っているの? 庭に草むしりに行くだけよ」

 心底不思議がっているソイベにメジマー(ズナギュカ)は戸惑った。魔乃物である彼は草むしりに鍋など使った事が無いのだ。


「主人殿、草むしりにその鍋はどう使うのですか?」

「えっ、これは根が深い物を掘り起こす為にって、あれ、やだ。私ったら。スコップだと思っていたらお鍋でしたわ」

 メジマーは種族の違いでは無かった事を知った。


「!」

「メー!」

 メジマーがそれを感じたと同時にクレナが部屋から飛び出してきた。

「何か大きな魔力が!」

「ああ、しかもウォー様のいる辺りだ。戻って早々で悪いが行って来る」

 メジマーは慌てるクレナを一度抱き締めて落ち着けると玄関に向かった。


「ええ、気を付けてね。いってらっしゃい」

「ああ、こっちの事は頼んだぞ。主人殿がちょっとおかしいみたいだしな」

 玄関の外まで見送ってくれたクレナにメジマーは気になっていた事を伝えて飛び立った。


「主人さん。外でトイレ掃除をするのですか?」

「えっ、草むしりよ」

 そう言ったソイベの手にはトイレ掃除用のブラシが握られていたのだった。


▽▼▽


 兵達が野営の準備を始めた時にウォザディーはメジマーの魔力を感じた。


「ちょっと散歩に行って来る」

「分かりました。私もお供致しましょう」

 プトルはウォザディーの護衛も兼ねているので当然ついて来る事になった。


「ウォー様ご無事で! はて、そちらの方は?」

「ああ、こちらは領軍の参謀のプトル殿だ。プトル殿こいつは友人の、め……ズナギュカだ」

 ウォザディーが互いを紹介すると二人は互いに挨拶していた。


「いやはや、これは驚いた。まさかウォザディー様に魔物のご友人がいらっしゃるとは」

「……! 何故それを!」

「プトル殿は中々の知識と観察眼をお持ちのようだ。ただ我は魔乃物。魔物と一緒にはしないで頂きたい」

 初対面でメジマーが人間でないと見破ったプトルにウォザディーは驚いた。メジマーは少しムッとすると魔乃物と魔物の違いを説明し始めた。


「そうか、成る程。ズナギュカ殿はかなりの努力と苦労を為されたのだな。先程、魔物扱いした事を心から詫びよう」

「いえ、知らぬが故の事。お気になさらずに」

 何だか打ち解けた二人をほっこりとした表情でウォザディーは眺めていた。


「それよりもウォー様。とんでもない魔力の波動を感じて飛んで来たのだが、何があったのですか」

「ああ、今思い出しても胸糞悪い事だ」

 ウォザディーが詳しく説明するとメジマーの表情も曇っていった。


「なんたる事ですか。命の尊厳を無視するなど虫けらにも劣る蛮行。我が叩きのめしてくれよう!」

「落ち着け。お前の存在をヤーカンに知られると、く……クエチノの存在まで知られてしまうぞ。奴がどんな行動を起こすかわからない以上、危険に晒すような行動は取りたくない。分かるな」

 憤っているメジマーをウォザディーが諭すと彼は理解して頷いてくれた。


「では間者の様な行動で助力頂ければ宜しいかと」

「それはいい。頼めるか?」

「魔乃物に人間の間者という概念はありませんが、隠密行動は得意とする所です。任せて下さい」

 ウォザディーはプトルの合理的思考には非常に驚かされた。

 メジマーが魔乃物と知ってもウォザディーの友と紹介されている以上はその様に扱い、適性を見極め適所に配置する事に一切の私情を挟まなかったからだ。


「そういえば来る途中に軍勢を見ました」

「殿下の軍だな。喜べ初仕事だ」

 ウォザディーはメジマーをアージスモとの伝令に送り出したのだった。

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