第六十九話 悔恨
《メジマーは学ぶ》
ウォザディー達が増築してくれた二人の部屋でクレナとの甘い時間を過ごしたメジマーは、隣で眠ってしまった彼女を起こさないようにそっとベッドから降りた。
そして、ミフーソカの所を訪ねた。
「何と、そんな威力のものを放ってもピンピンしておったじゃと!」
「ええ、ウォー様は試し打ちと仰っておりました」
ミフーソカが甲冑に組み込んだ魔法具は注ぐ魔力量に応じて威力が変わる物だとメジマーは説明を受けた。
しかも変換効率は魔法よりも当然悪い上にガンガンと魔力を吸い込むので、その規模の炎を打ち出すのにはかなりの量の魔力を無理矢理消費させられる。それこそ生命維持に必要な魔力まで使われるのだ。
「わしの計算上では、その規模の炎を出すには魔法の修練をしていない一般人なら百人は必要じゃ。それも体の全ての魔力を使っての話じゃから現実的には二百人程は必要になるじゃろう」
「それを事もな気に放つウォー様って……。それは魔王様も託したくなる筈ですね」
改めてウォザディーの規格外っぷりを知る事になった二人であった。
▽▼▽
戦場に終末を思わせる火柱が上がった。
ウォザディーを取り囲んでいた兵達は炎に焼かれたり爆風に飛ばされたり死傷者で溢れ、そこに立っている者は皆無だった。
そして魔法具に魔力を吸われ尽くした魔法具連結を行った部隊も全滅していた。こちらは突撃した部隊と違い言葉の通り全員命を落としていた。
「相打ちか。まあ、五百なら安いものか」
「陛下! あれを!」
黒焦げの死体がもそもそと動き出した。と、次の瞬間ウォザディーがその中から現れたのだった。
「ふー、ちょっとヤバかったな。自分の身を守るだけで精一杯だったな」
ウォザディーは周りを見渡し、その惨状に改めて魔法を封じられている現状に憤りを感じた。
「魔法さえ使えてたら、あの程度の炎などなんて事ないのにな。くそっ!」
一瞬で敵兵とはいえ多くの死傷者を出した自分の力の無さにウォザディーは悔しくなった。
「何という事だ!」
ウォザディーが前方に目を向けると炎を放った集団が倒れていた。
魔力も生体反応も感じられないという事は、魔法具によって生命維持に必要な分の魔力も吸い出されたという事だ。
ウォザディーが前にヤーカンに言っていた魔法具兵器の弱点とは、兵の魔力を使用し変換効率も良くない上にリミッターがあるから連続使用や大技に向かないという事だ。
「ヤーカン! 貴様!」
しかし、今回はそのリミッターを外してあったようだ。
仮にリミッターが掛かった状態で二百人規模の兵で同じ事をすれば全員生きていただろう。
ヤーカンが言った『兵とは消耗品なのだ』という言葉がウォザディーの頭の中を木霊していた。
「くそっ!」
ウォザディーの叫びは死体の広がる平原に消えて行き、ヤーカンの下までは届かなかった。
彼の魔力も防御の為にごっそりと持っていかれたので、反撃をするのは厳しかった。現状この悔しさを晴らす術がないのである。
しかしヤーカンもウォザディーの魔法封じには失敗していると思い込んでいるので迂闊に攻め込む事もできない。
そうこうしている内に林から兵が出て来てウォザディーを中心に陣形を組んだ。
「ウォザディー! 大丈夫か!」
「ああ、問題ない。ちょっと自己嫌悪に浸っていただけだ。それより口調が戻ってるぞ。俺としてはその方が楽だが」
心配して駆け寄ってくれたキーベに、ウォザディーは気持ちを切り替えて軽口を叩く。
「ウォザディー様。随分と作戦とは違う行動を取られましたな」
「ああ、まさか俺一人にアレを使って来るとは思っていなかったからな。咄嗟の判断だ。無事だったから許せ」
参謀兼ウォザディーの護衛のプトルに圧を掛けられたが、彼は飄々と躱して見せた。
そのまま両軍睨み合いで陽が落ちて、一日目の戦闘は終了となったのだった。




