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第六十七話 喜びと驚き

 《進軍》

「戦場まで後どれくらいだ」

「3日後には到着出来るかと思われます」

 アージスモは焦っていた。


 ウォザディーに用意していた領地はヤーカンとギムテアの裏切りによって奪われてしまっていた。その際にカウコーヨ達の働きによって大半の住民達は避難する事が出来た。

 彼らを王領へと受け入れた時から、東の十五番王領(その地を)を将来的にウォザディーの領地にする計画はスタートしていたのだ。

 あとはウォザディーに引き渡すだけの所まで来たというのに、何の因果か今回のキエッツォ軍の予想進行ルートにそこも含まれていたのだった。


「そろそろぶつかっていてもおかしくないな」

「左様で御座いますね。領軍だけでは3日は厳しいでしょう」

 秘書官に現実を突き付けられたアージスモは唇を噛み締める。

「また失ってしまうのか」

「それでも直ぐに取り返せるでしょう」

 秘書官の慰めは見当違いで、アージスモは王としてではなく、一個人として友の事を思っての言葉だった。その表情は険しいままである。


▽▼▽


 館を飛び出したウォザディーの耳に街の火の見櫓の半鐘の音が響いて来た。緊急事態かと思ったウォザディーは正門の見張り台に上がった。

 街で上がっている歓声が徐々に近付いて来る。それと共に近付いて来る軍勢の姿も確認出来た。


「これは領主様、お出迎えですか。皆も戦勝の喜びに勝る褒美になるでしょう」

「なぜ俺が領主だと。」

 何処かで会ったのかとウォザディーは相手の顔をよく見たが、覚えが無い。


「私はフジョーと申しまして、30年前から貴方様にお仕えしておるのですから」

「元ミフオサ領の者だったのか」

 ウォザディーは話を理解した。あの当時はウォザディーの絵姿も英雄様という渾名と共に各地に広がっていたのだから。

「はい。あの時の戦いで右足を失いましたが一命は取り留めました。今は義足(こいつ)のお陰で日常生活は困りません」

「戦いに行きたかったのか?」

 フジョーの悔しそうな顔を見て、ウォザディーはそう思った。

「そうですね。守りたいものを自分の手で守ったという実感がただ欲しいだけですね」

「お前が留守を守ってくれているから、皆も安心して戦う事が出来るのではないか。いつか……否、なんでもない」

 ウォザディーは魔法封じが解けたら足を治してやると言おうとして止めた。不確定な約束は出来ない。それは希望を絶望に変えてしまい兼ねないのだから。

 

 フジョーはウォザディーの言葉に複雑な笑顔を浮かべた。目からは今にも涙が溢れそうだった。

「俺は女の涙には弱いが、男の涙など知らんぞ」

「はい」

 鼻声のフジョーからウォザディーは目を逸らした。


「はぁっ!」

 そんな感動をぶち壊す間抜けな声をウォザディーは上げてしまった。先頭で馬に跨がって軍を引き連れているのは紛れも無くキーベなのだから。

「なあ、なぜキーベが指揮官の位置にいるのだ?」

「領主様はキーベ殿をご存知でしたか。陛下の人選でこの領の戦時特別指揮官に抜擢されました。中々の手腕で領軍を短期間で纏められましたよ。今では皆信頼しております」

 まさかのキーベの登場に驚いたウォザディーだったが、彼の無事な姿を見てホッとしていた。


〜〜〜

 会議室に主要なメンバーに集まって貰って顔合わせ兼情報交換をする。その他の者はホールと庭を開放して、そこで戦勝パーティーに参加して貰っている。


「まさかキーベが指揮官とは驚きだな」

「ああ、俺も驚いていますよ。まあ、プトル殿のお陰で何とか形になっています」

「過去の戦ではカウコーヨ殿を最後までお守りする事が叶わなかったのです。なのでウォザディー様の事は必ずこの命尽きるまでお守りさせて頂きます」

 一通りの挨拶が済んだ後はウォザディーはキーベに話し掛けたが、周りを気にしてか丁寧な言葉遣いだった。


「さてと、俺に良い考えがあるのだが聞きたいか?」

 ウォザディーは周りを見回すと大体の者が頷いていた。

「よし、じゃあ話すぞ」

 ウォザディーは皆に秘策を告げるのであった。

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