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第六十三話 決別

《勘違いここに極まれり》

『コン、コン、コン、コン』

 規則正しいノックが響いた。


「アージ兄様宜しいでしょうか」

「ああ、構わない。入ってくれ」

 アージスモは王妹らしく礼儀正しいフリューニに不安しか覚えなかった。

「アージ兄様。ご機嫌麗しくお過ごしの事と存じます」

「ああ、どっ、どうした。フリューニ」

 綺麗なカーテシーに続けて、丁寧な挨拶をするフリューニにアージスモは王の威厳は何処へやら、戸惑いを隠せなかった。


「あの、その。ウォーディーがこちらにいらっしゃっていたとお伺い致しました。それで……その、お許しを頂けたのでしょうか?」

「んっ、フリューニはウォザディーから聞いていたのか! そう言う事は私に伝えておかないとならないであろう」

 アージスモはウォザディーに何か考えがあって、それが言い難い事だと分かったので黙認した。

 だがそれがフリューニも関わっているとは思いもしなかったのだった。


「申し訳ありません。まさかこんなに早く行動するとは思いませんでしたので。それで、どうだったのでしょうか」

「んっ、こんな時期だからこそ急いだのではないか? 奴にも考えがあっての事だろうから黙認してやった」

 フリューニを取り巻く空気に不穏さが加わった様に感じたアージスモは不安になった。

「酷いですわ。アージ兄様は喜んで頂けると思いましたのに。黙認とは何事ですか!」

「まてまて、フリューニ!あの時は黙認が最善でな……」

『バタン!』

 プリプリと怒ってしまったフリューニは、アージスモの言葉に聞く耳を持たずに力任せに扉を閉めて出て行ってしまった。


「何だったんだ?」

 結婚の話だと思っているフリューニと、戦に関する事と思っているアージスモでは話が噛み合わないのも当然だ。

 そもそもがウォザディーとフリューニの間でも勘違いしているのだから、アージスモにそれが分からないのも当然だった。


▽▼▽


「そうか、随分とあんたは変わっちまったようだな」

「ふふふ、それは外見の事を言ってるのかしら。もしも、中身の事を言っているのならば勘違いも甚だしいわよ。この人は昔からこうよ。ただ貴方に見せていなかっただけ」

 いつの間にか並走していた馬車からギムテアは身を乗り出すとふわりと宙を舞う。そして、こちらの幌の無い軍用の馬車に難無く着地した。


「あんたは打って変わって外見は、あの頃と大して変わっていないんだな。中身に関してはヤーカンと一緒って事でいいのかな」

「ふふっ、美容は女の子の関心事項なのよ、覚えておくといいわ。それに二面性があってこそ魅力的な女性になれるのよ」

 ギムテアはまるで誘惑でもするように、胸の谷間を強調しつつも体にしなをつくって上目遣いで見つめてくる。


「あの頃は坊やだったのに、良い男になったわね。どう、もっと私とお話しない? ゆっくりと、ねえ」

「残念だが俺には呪術の類は効かないぜ」

 呪術は魔法の派生系みたいなもので瞳から魔力を流し込み脳をコントロールするものだ。

 しかしギムテアより魔力のコントロールが上で仕組みも知っているウォザディーは瞳に魔力を送られた段階でシャットアウト出来る。


「チッ、此奴を捕らえろ!」

「甘いな」

 ヤーカンが大声で指示を出しながら気を引いた瞬間に、ギムテアは隠し持っていた投げナイフを放った。

 しかしヒラリと空中で一回転して、ウォザディーはナイフを躱した。

 そして着地と同時に飛び上がった。ヤーカンとギムテアからは消えたように見えた事だろう。

「転移魔法ですって! いつの間に!」

 30年前のウォザディーには転移魔法なんて高度な魔法は使えなかった。まあ、今も使った訳では無いが。


「よし、ついでにミフーソカ殿の作品の試し打ちをしておくか。」

 ウォザディーは右のガントレットに魔力を込める。


『ドゴォォォン!』

 轟音と爆風と共に、林の木々の2倍程の火柱が上がったのだった。

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