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第六十二話 交わらぬ思い

 《光と闇》

 魔法具の流通量には制限があった。魔法師が作った物を際限なく流通させると、其処彼処で空間魔力の枯渇を起こしてしまうからだ。

 空間魔力は場所固有の物で移動する事はないと証明されていたのだが、それは完全な答えではなかった。

 魔力が回復する段階で、周囲のエネルギー物質が緩やかに移動する事が判明したのだ。学者はそのエネルギーをディーケと名付けた。

 それによりディーケが流動する事で空間魔力も間接的に流動していると結論付けられたのだ。


 更に困った事に、ディーケは万物のエネルギーであったのだった。

 魔力の枯渇を頻繁に起こす場所付近の植物の育成状況が悪かったり物が壊れ易くなったりした。そして最も問題なのが人体にも影響を及ぼす事が証明された事だった。

 しかし、これに関しては箝口令が敷かれ一般に伝播する事は無かった。


 当時の国王は魔法具を認可制にして流通量の調整を行った。これ自体は間違った事では無かったのだが、規制の下にはお金が集まるものだ。

 魔法具の値段は高騰して、その利益を享受したい魔法師は認可に関わる官吏に賄賂を贈るようになる。風紀は乱れ腐敗が進んでしまったのだった。


 当然利益の下には裏組織(バリュコデュノ)も寄って来る。闇ルートでの魔法具も横行するようになった。

 しかしこれが結果的に魔法具の価格を抑え、賄賂も減らした。


 そして悪魔と魔女の反乱以後に当時王太子だったアージスモの発案で、悪魔と魔女を彷彿させるという建前で魔法という言葉の使用を禁止する法が制定された。


 研究の最終段階に来ていた魔力ユニット化の魔法具を、ディーケユニットとディーケ製品として流通させた。

 ディーケユニットだけは王の管理の下に流通制限をした。それはユニット充填にカウコーヨを核として彼の魔力を搾取していたからだった。


 ディーケユニットに関してはバリュコデュノは手を出す事は無かった。それどころか魔法具の裏のルートも同時期にパタリと無くなったのだ。

 これがバリュコデュノの七不思議の一つである。


▽▼▽


「ウォー様だいぶ近づいて来ました。あの胸糞の悪い魔力がプンプン臭います」

「んっ…………いた!」

 ウォザディーは目に魔力を込めて辺りを探った。程なく軍勢の姿が見えその中からヤーカンのものであろう魔力を感じた。

「よし、ここで下りてくれ」

「まだ、かなり距離がありますぞ」

 メジマーはウォザディーの意図が分からずに戸惑った。


「今の段階では、万が一にもお前たちの事を向こうに知られたくはないんだ。だから暫くここで待っていてくれ」

「ふむ、納得し難いが、ウォー様がそう仰るなら考えあっての事でしょうから大人しく従います」

 メジマーは護衛としては明らかに不服そうな顔をしたが、魔乃物である自分では人間の考えの深い所は理解出来ないと思っていた。ただ、一番は(あるじ)を信頼する身として考えてそう告げた。

「済まない、助かるよ。じゃあ行って来る」

「ご武運を」

 ウォザディーは足に魔力を込めると、林の中を風のように駆け抜けて行った。


「そろそろかな」

 ウォザディーは走るのを止めると屈み込んだ。そしてその反動で思いっきり伸びるようにして飛び上がった。


「やあ、ヤーカン」

「!」

 特大ジャンプで馬車上に着地したウォザディーの事は、ヤーカンから見たら突然目の前に現れたように見えた筈だ。

「ちっ、やはり失敗していたか。……いや、久しいの。ウォザディー」

「随分と変わったな」

 ヤーカンが小声で呟いた最初の部分は聞こえなかったふりをしてウォザディーは会話を続けた。


「何奴!」

「良い下がれ。知り合いじゃ」

 ウォザディーに気付いた護衛が構えた槍を収めた。

「それで突然どうしたのだ」

「引く気は無いのか。例の物の欠点も分かっているのだろう」

 ウォザディーは少しのやり取りでダメだと感じたので、単刀直入に話を持ち出した。


「兵とは消耗品なのだ、代えは利く。知らなかったのか」

 その言葉が、決別の決定打となったのだった。

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