第六話 もてなし
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《ソイベ・ササツィ》
ジェウティ教の敬虔な信徒であるササツィ男爵の次女に生まれ、14歳を迎えると貴族街の教会のシスター見習いとして働き始める。
彼女自身も敬虔な信徒であり、正式なシスターになった時には平民街の教会を希望して出向している。貴賎の別なく皆に真摯に向き合う姿勢に周りの人々は聖母様の再来などと口にする。
五年前に院長のササツィ男爵が亡くなってからはシスターを辞めイコルニアツ孤児院の管理に専念した。教会からの僅かばかりの支援金に臨時で教会の手伝いをしたりして得た私財を加えて何とか孤児院を維持している。
▽▼▽
「おっ、出て来たか。ちょっとこっちへ来い」
「えっ、何ですか」
ウォザディーの掘っ建て小屋にもちゃんとお風呂は設置されている。風呂上がりのルニムネを彼は呼び止めた。
「家の風呂を使ったのは洗浄の魔法を覚えて以来だから25年ぶり位か」
「えっ!その割にはピカピカだったよ」
ルニムネは驚いて一瞬言葉に詰まった。お風呂場は毎日掃除しているのかと思う程に綺麗だったのだから。
「ああ、この家の物には状態保存の魔法が掛けてあるからな。いつまで経っても新品同様だ。それよりも、着心地はどうだ」
「はっはい。とっても良いけど、私なんかが借りていいの?」
湯上りのルニムネはウォザディーのシャツを魔法でリメイクしたワンピースを着ている。下着は洗浄魔法で綺麗にしてそのままの物を履かせているが、服の方はあちこち擦り切れていてボロボロだった為だ。
「その服は特別な物なのか?」
「えっ、いえ」
脱衣所にはルニムネの着ていた服が綺麗に畳まれて置いてあった。
「じゃあ、もう捨ててしまうぞ」
「いや、ダメです!」
ルニムネは慌てウォザディーが手にした服を掴んだ。
「んっ、何だ。捨てちゃダメなのか?」
「えっと、その……明日……服が……」
ウォザディーはここで話が繋がった。
「この服はもうお前の物なのだぞ」
「えっ?」
ルニムネは何を言われたのか、理解が追い付かずに呆けてしまった。その隙にウォザディーはルニムネの手を振り解くと服を奪い取った。
「ほら、それよりも乾かしちまうぞ」
「うわっ、わっわっ!」
タオルで水気は拭き取っているものの髪の毛はまだ湿ったままだった。ウォザディーが合図をするとルニムネの周りを暖かい風が取り巻いて髪の毛に残っていた水分を飛ばしていく。
「悪いな。この通り魔法で事足りるから魔法具、ディーケ製品か、は無いんだよ」
「うー……いっ、いえ。ディーケ製品は高いんだよ。もし有ったとしてもディーケユニットも安いものじゃ無いから髪の毛を乾かす為になんて使えないよ……ふぅー……」
フニャリと心地良さそうな顔をしたルニムネが自分の生活の事を少し話した。
「成る程な孤児院の経営状況は芳しく無いようだな」
「けいえいじょうきょう?」
ルニムネには少し難し過ぎたようだった。
「そうだなぁ。簡単に言うとお金が少ししかないという事だ」
「うん。周りからは貧乏って言われる。それってお金がないからでしょ」
ルニムネはそう言うと服を取り返そうと手を伸ばして来た。
「もう、服の心配はしなくていいぞ。」
「ああっ!」
ウォザディーは手にしていた服を火魔法で消し炭に変えた。ルニムネは愕然とそれを見ている事しか出来なかった。




