第五話 団欒
《ジェウティ教》
パネグァ大陸で広く信仰されていて、ティディサア王国の国教に定められている一神教の宗教である。敬虔な教徒が多く戒律自体はそんなに厳しくは無いが、異端者には厳しく異端認定されてしまうと残酷な程の仕打ちを周囲から受ける事になる。
そのせいもあって非常に秩序立った生活を送り、ティディサア王国の犯罪発生率の低さに貢献していると言われている。
教会は徳を積む事こそ神の御心に近付ける手段と考えている為に慈善事業を多岐に渡り行なっている。
ルニムネの住んでいるイコルニアツ孤児院も教会の出資によって運営されている。
30年前の大乱の風評被害で教会の権威は失墜してしまったが信者の数自体は減っていないらしい。それには異端審問所が関わっているらしい。
▽▼▽
「さあ、飯にしようか」
ウォザディーは戸惑うルニムネを余所に席に着いた。それを見て彼女も慌ててもう一方の席に座ったのだった。
「魔法は何でも出来るの?」
「んっ、ああこれの事か」
ウォザディーの返答にルニムネがコクンと頷いた。
「別に何も無い所から出した訳じゃ無いぞ。ちゃんと食糧庫の材料を使っているし、切ったり煮込んだりの調理の部分を魔法で代替しただけだ。だいたいこの皿だって食器棚に有った物だぞ」
「オヤジギャグだね」
ルニムネがジト目でウォザディーを見ていた。
「いやいや、違うから。態とじゃ無いからな」
「本当ですか」
ルニムネは半信半疑だった。
「そうだ、ディーケ製品では同じ様な事は出来ないのか?」
「個別になら出来るよ。ただ、食材を料理に仕上げるなんて事は出来無いよ」
それを聞いてウォザディーは魔法具と大差無いと思ったのだった。
「益々分からなくなった。魔法具とディーケ製品は同じ様な物だと思う。魔法の力で動くかディーケの力で動くかの差でしか無い。後は実際に見てみない事には何とも言えないな」
「じゃあ見てみれば良いじゃん。明日ディアトキアに行くんだよね」
ルニムネの言う事は尤もだった。
「そうだな、そろそろ世界放浪の旅に出ようと思ってた所だ。手始めにディアトキアに久しぶりに行くのも悪くないな」
「じゃあさっ、じゃあさっ、イコルニアツにも来てくれる?」
当たり前の事を問われたウォザディーは一瞬戸惑った。ただ、目の前にいるルニムネが子供である事を思い出し納得するのだった。
「ああ、当然だろ。お前を家まできちんと送って行ってやるさ」
「良かったぁ。誰かに親切にされたらソイベ先生に言わなくちゃいけないの。後でお礼に行くのが保護者の務め? というものらしいよ。でも、ここがどこか私には話せないからどうしようと思ってたの」
先程から話が上がっているソイベ先生とやらは、どうにも人格者のようで子供達の躾は勿論の事、自分自身もしっかりと律している人物のようだった。
「送って行ってはやるが、その後のお説教までは知らんぞ」
「…………」
ウォザディーの思い描いたソイベ先生像が正しそうだと沈黙するルニムネが証明していた。
「ほら、食べ終わったのならさっさと風呂に入ってきな」
「えー、食べて直ぐにお風呂に入っちゃダメだっていつもソイベ先生が言ってるよぉー」
ルニムネの沈んだ雰囲気が気まずくなって話を逸らしたウォザディーであった。片やルニムネは緊張もだいぶ薄れたようでその口ぶりは子供っぽさが増したようだった。




