第四十七話 新たな同居人
《子作り旅》
魔乃物がつがいになると一番大事にするのは子を成す事だ。人間の結婚と違って、役所に届け出る事も必要ないしパーティーを開く事もないのだ。
子孫繁栄の為につがいになるのだが、魔乃物には浮気という概念がない。そもそもが生殖行為に重きを置いていないので、子作り以外ではしないという魔乃物も多い。
人里離れた所に行って生殖行為を行うだけの日々を過ごすのだ。だから、魔乃物にとっての子作り旅というものは過酷なものだとの認識が一般的である。
メジマーとクレナは迷いの森から程近いビレイ山の中腹にある洞窟で過ごしていた。
「なあ、クー。何日くらいの予定にするんだ?」
「そうね、なんだか体の調子が凄くいいのよ。先ずは三日頑張ってみて、それから先の事は考えましょ」
子作り旅は基本的には三日以上と言われている。それには移動の時間も含まれているのだ。通常は人里離れた場所への移動で初日と最終日は潰れるので、最低三日となっているのである。
しかしメジマーとクレナは迷いの森からビレイ山まで、ひとっ飛びなので丸三日間を使えるのだった。
「子作り旅は聞いていた以上に過酷なものだった……」
「ふふ…………」
結局三日でメジマーの限界が訪れて終了となった。しかし対照的にクレナは元気で、満足そうに微笑み余韻に浸るのだった。
▽▼▽
「という事で、二人がここに住む事になった」
「……何が『という事』なのですか!」
孤児院に戻ったウォザディーは徐に話始めたが、ソイベの目を吊り上がらせる結果となった。
「ウォー様。挨拶させて貰っても良いかしら」
「お前もか……。ああ、そうだな。こちらは院長のソイベさんと警備隊のキーベだ」
クレナからも様付けで呼ばれたウォザディーは、諦めの表情を浮かべながらも二人を紹介した。
「ソイベ様とキーベ様ですね、お初にお目にかかります。クエチノと申します。先程は団欒の場に踏み入ってしまい、申し訳ありませんでした。聞けば我がつがいのズナギュカがこちらでお世話になる事になったと。主人のお怒りもごもっともですが、私もここに置いては貰えないでしょうか」
「まあ、丁寧にどうも。クエチノさん違うのよ、別に貴女に対して怒った訳じゃないのよ。理由も説明せずに話を進めたウォザディーさんに怒ってるだけなのだから!」
ソイベはウォザディーをキッと睨んだ。
「それは悪い事をした。でも、そう言う訳なんだ置いてやっては貰えないか」
「はぁ、もう。そう言えばつがいって何ですか?」
「そうですね。人間の言葉で言うのなら……夫婦かしらね」
「ああ、先程我らはつがいとなった」
あまりの展開にソイベは一周回って面白くなってしまった。
「ふふふ、分かりました。では今から結婚パーティーをしましょう」
ソイベはそう提案するとメジマーとクエチノに暫く森の家に居るように言い、ウォザディーとキーベに指示を出してパーティーの準備を始めた。
子供達には簡単な飾り付けを任せて、ソイベは料理に取り掛かる。食糧庫にある物で工夫して色々と作っていった。
そうして急遽企画されたメジマーとクエチノのつがい披露パーティーは、こじんまりとしていたがみんな大盛り上がりだったのだ。
〜〜〜
散々飲み食いをして、先に子供達を寝かし付けてからは二次会が始まった。お酒の量も増えてみんな酔っ払っていった。
因みにお酒の殆どはウォザディーの魔法で作る果実酒なので、この人数ではお代わりし放題だった。
日付を跨ぐ頃にお開きとなり、キーベは千鳥足で帰路に就きメジマーとクエチノに客間を譲ったウォザディーは、食堂の椅子を並べて横になっていた。
『ガタン』
「誰だ!」
物音で目を覚ましたウォザディーが闇に目を凝らすと、少し向こうに人影がぼんやりと見えたのだった。




