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第四十六話 ウォザディーはやはり最高の魔法使いである

 《魔乃物というもの》

 魔物は大きく分けると四足と二足で区分される。基本的な違いは四足は人間から遠ざかり、二足は人間に近付くという事だ。

 物理的な距離も容姿的にも進化すればする程顕著になる。


 魔物の幼生体は皆四足歩行だが成体に進化する際に四足と二足に別れ、それ以後の進化で変わる事は無い。性格が影響するだとか遺伝の影響が大きいとか色々言われているが実態は解明されていない。


 そしてそれぞれに努力をすれば知能種に、怠れば運動種に別れる。

そして知能種からは更に羽付きという最上位種に進化可能だ。ただ努力を怠らねばという条件は付くが。


 四足の羽付きはドラゴンやペガサスが有名だ。僻地に隠れ住み人間の目に触れる事はまず無い。

 二足の羽付きは魔王や四天王などで、積極的に人間と関わり対立を深めたりしている。

 また羽付きを総称して魔乃物と呼ぶのが魔物界では一般的である。


▽▼▽


「その傷が問題なのか?」

「ええ、魔乃物にとって傷は致命傷であり、恥ずべき物で忌避の対象なの。徐々に命を削られ子を成す事も出来なくなるわ。価値の無い無用者に成り下がってしまうのよ」

「そして慣習でも傷持ちと、つがいになるのは御法度なのだ」

 話していても時々忘れてしまうが、やはり二人が魔物であり風習も考え方も違うのだとウォザディーは身に染みたのだった。


「じゃあ、その、本当にあんな事をされたのは気にしないのか?」

「ああ、ウォー様が先程から気にしていたのは生殖行為のことだったか。それなら心配ない、魔乃物と人間の間では子を成す事は不可能だ。故に何の問題も無い」

 ウォザディーは遠回しに聞いたがメジマーはあっけらかんと答えた。


「それじゃあ問題無いんじゃないか」

「そうだな。心のままに、つがいになっても今は良いだろう。しかし俺はこれから先、毎日クーの傷を見ては現実を思い出す事でクーを傷付け続ける」

「私も引目を感じ続け、笑い掛ける事も無いでしょう。そんな余所余所しい関係でメーを幸せに出来ないわ」

 互いに互いを思い合っている事は、ウォザディーにも良く分かった。


「よし、じゃあ二人は結婚? つがいだかになれ。これは命令だ。で、つがい祝いをやる」

『パチン』

 金色の光の粒子がクエチノを包み込む。


「何これは? 傷口が熱を持ち始めたわ。……ああ、全身が火照るわ」

「何をした! って……まさか、そんな……バカな。おお、何とこれは奇跡なのか……」

 光の粒子が全て失われた後のクエチノは元の美しい肌を取り戻していた。ウォザディーの回復魔法によって完全回復したのだった。


「そんな、何故! 回復魔法では自然治癒以上の回復は見込めない筈よ!」

「簡単なことだ。俺のは上位回復魔法だからな」

 傷痕や致命傷には回復魔法は効かないと言うのが常識なのだ。

「これは自然治癒に関係無く元の正常な状態に回復する魔法だからな。それこそ欠損しようが元に戻る。傷跡など尚更だな」

「そんなの聞いた事が無いぞ」

 ウォザディーの説明にメジマーが怪訝な顔をする。


「そりゃそうだ。人類最高峰の魔力量を持ち三十年研鑽を重ねて魔法の深淵を覗いた俺位しか、知識的にも魔力量的にも使うのは無理だろうよ。だけれど、クエチノ自身の魔力も使ってるから俺だけの力じゃ無いぞ」

「他人の魔力を勝手に使えるものなのか」

 メジマーは理解の範疇を超えた出来事が続き、最早そういうものなのかと思えて来た。


「ああ、俺の三十年の成果の一つだ」

「そんな貴重な物を使ってくれたのね。仕方ないわ、メーもしてるのだから私も交換してあげるわ。我が真名はクレナよ」

 クエチノ改めクレナと名を交換したウォザディーは二人をどうするかを考える。


「人間の間では結婚すると新婚旅行に行くのだが」

「子作り旅みたいなものかしらね」

「そうだな。つがいになって先ずやる事だな」

 どうやら似た様な習慣が有ったようでウォザディーはホッとした。二人を子作り旅に出してる間に、増築でもして受け入れ態勢を整えようと考えたのだった。

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