第四十四話 何事も二度目は楽だという事です
《迫り来る捜査の手》
「陛下、市中にネズミが入り込んだようです」
「何だ? 早々に駆除すれば良いではないか」
腹心のスチクノの報告に王であるアージスモは眉根を寄せた。
「これは良い機会だと思うのですよ。今まではいるかいないかも分からなかった者が、あの魔物騒ぎでいると確信出来ました。そんな折のネズミです。彼の所に向かうかもしれません」
「成る程な。敵を利用して奴の居場所を暴くのか」
アージスモは良い案だと思ったが、ある問題に思い当たった。
「ただですね、本当にそうだった場合は彼もあちら側の可能性が高くなります」
「どちらにしろ我々が発見出来ていない事実があり、チャンスがあるならば実行するしかあるまい」
アージスモは決断するが、もしウォザディーが本気で抵抗したらどうなるのかと不安で仕方なかった。
▽▼▽
何とも言えない沈黙に最初に耐え切れなくなったのはウォザディーだった。
「まあ、取り敢えず話と処理が必要だな。暫く二人でお茶をしていてくれ」
『パチン』
テーブルやティーセットを元に戻したウォザディーは、ソイベとキーベにお願いしてからメジマーに向き直った。
「お前の時と同じ事をしないといけないから付いて来るように伝えてくれ」
「えっ、ああ、そうだな。分かった。クー、色々と説明したいから一先ず一緒に来てくれ」
「そっ、そうね何故メーが魔王様の仇と一緒に居るのか聞かせて貰わないといけないしね。いいわ、付いて行く」
了承して貰えたので裏庭のドアから森の家へと入った。
「ここは何! 何故こんなに頭が軽いの。それに凄く落ち着くわ」
「おそらく、ここの空間魔力量が異常に多いせいだろう。そのお陰で指輪の呪縛の影響が薄れるようだ」
クエチノの明るい声にメジマーの表情も緩む。
「じゃあ、先ずは死んでもらおうか」
「なっ!」
ウォザディーの言葉に驚いたクエチノだったが体が動かなかった。
「これは、魔法! まさかメー、貴方騙したの……」
「んな訳あるか! 安心しろ俺も一度死んでるから」
「ふぉふぉふぉ、その言い回しじゃ誤解するじゃろうて」
頓珍漢な二人の会話に堪らずミフーソカが口を挟んで来た。しかし、彼はすぐにしかめっ面になった。
「これは、良くないのじゃ。魔法具の色が変わって来ておる」
「色が変わるとなんなんだよ!」
勿体ぶったミフーソカにメジマーが掴み掛かる。
「より深く神経に食い込んでいるんじゃよ。余程の精神負荷が幾度にも及んで掛かったのじゃろう、簡単にはこうはならないのじゃからな」
「そんな! じゃあ、クーはどうなるってんだ!」
掴み掛かっているメジマーの手に力が入る。ミフーソカは悲しげな瞳で一瞬見つめると、目を閉じて首を横に振った。
「ほら、取れたぞ」
「えっ、何? 頭がスッキリしたわ」
「「!」」
魔法の深淵を覗いたウォザディーにとっては、魔法具が異物である以上どんなに複雑に神経組織に絡み付いていようと体内から転移させれば良いだけの話で簡単な事だった。
「これがあんたの思考を制御すると共に生死の判別にもなっている」
『ボン!』
ウォザディーが上に投げた魔法具を爆破した。
「成る程ね。今、私が死んだ事になったって訳ね」
「そゆこと」
理解したクエチノに緊張感なくウォザディーが肯定した。
「もう、調子狂っちゃうわ。メーがここに居るってのは同じ事が有ったからなのでしょ。じゃあ、私も命を救って貰ったからって貴方に従わなきゃならないわね」
「従わなくて良いから、一つお願いを聞いてよ」
ニヤリと笑うウォザディーにクエチノは後ずさる。そこで拘束魔法が解かれていた事に気が付いた。
「メジマーと、この先の生涯を共にしてあげてよ」
「えっ!」
「なっ、ばか、勝手に!」
ウォザディーの悪巧みに戸惑う二人だった。
「ごめんなさい」
まさかの答えに、その場は凍り付いたのだった。




