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第四十三話 元四天王の魔物に懐かれました

 《初恋》

 それはメジマーがまだ幼生体の魔物だった頃の話だ。彼はとても強かった。


 強い雄は雌たちの憧れの的である。彼は周りに纏わりついていつも媚びてくる雌たちを鬱陶しいと思っていた。何故ならば彼はこの姿で終わるつもりが無かったからだ。早く成体に進化して更に知能型になり、最終的には羽付きまで登り詰めると決めていた。


 ある時メジマーに突っ掛かって来た雌がいた。彼は興味が湧いたので対決をした。

 中々センスは良いが雄と雌の体格差は埋められずに彼女は地に体を押さえ付けられてしまった。これは勝負の終わりを意味する。

「くっ、この程度では外の世界には出れない」

 彼女の独り言だったのだろう。それでもメジマーは衝動を抑えきれなかった。


「そんな事はない! 外を目指すには二足種の生体に成れば良いだけだ。まあ俺は羽付きにまで成るがな」

 彼は同じ目標を持った魔物と初めて出会えて嬉しかった。言われた彼女はキョトンとしていたけれども。


 それから二人は一緒に過ごす事が多くなった。メジマーが恋に落ちるのも時間の問題だった。


▽▼▽


「まあ何と言うか……。おい!」

「はっ、ウォー様。お呼びで」

 ソイベとキージェはウォザディーに傅くメジマーに驚いていた。魔物が人間を上位者として扱うなど前代未聞の出来事なのだから。

「そのな、この通り悪い奴ではないんだ。人を襲う事も、もう無いだろうし」

「勿体ない評価です」

「あっ、あの、一緒に暮らすって……」

 ソイベが恐る恐る聞いて来た。


「ああ、本当は森で暮らして貰おうと考えてたのだが……」

「あそこの森は居心地が良いので魅力的な提案でしたが、それではウォー様に何か起きた時に真っ先に駆け付けられないので丁重にお断りさせて頂きました」

 メジマーはウォザディーのボディーガードになったつもりでいた。

「それは良いけど、その話し方は少し堅苦しいんだけどな」

「分かった。ではこのぐらいの感じで良いか? ウォー様」

 ウォザディーは頷いたが、呼称は変わらないのかと心の中で溜息を吐いた。


「さて、こちらの御仁方はどちら様なのだ。挨拶したいのだが」

「ああ、ここの院長のソイベさんと王都警備隊のキーベだ」

 ウォザディーは二人をメジマーに軽く紹介する。

「我は、ズナギュカという。これから宜しく頼む」

「ええ、ソイベです宜しく」

「キーベだ」

 挨拶は滞り無く済んだ。


「では、立ち話もなんなので、お茶でも飲みながら親睦を深めよう」

 メジマーはどこから取り出したのかテーブルと椅子を庭に並べた。そしてティーセットもテーブルに並べ始めた。

「さあ、ウォー様音頭を」

「分かったって。まあ、取り敢えず座ってくれ」

 皆が席に着くと、メジマーはお茶を配膳して最後に席に着いた。


 ウォザディーはあらましを二人に話した。

「だから、明日にはこいつの彼女を助けに行こうと思ってる」

「いやいやいや、彼女なんて滅相もない」

 メジマーは顔を真っ赤に染めて首を横に振る。


「えっ、だってお前さっき女がいるって言ってたよな」

()()()()女がいると言ったんだ」

「えっ、でもそれって惚れてる女性って事ですよね。危険を冒してまで助けたい人ですものね」

「避けろ!」

 ソイベが食い付き恋話が盛り上がろうとしたその時キーベが突如叫んでソイベを抱えて後ろに飛んだ。


『どごぉん!』

 轟音と共に土煙が上がりテーブルは粉々に砕けた。薄れゆく土煙の向こうに何者かが立っているシルエットだけが見えた。


「見つけたぞ! お前がウォザディーだな。魔王様と私の最愛の人の仇だ! その命で償ってもらう!」

「良かったな。メジマー。両想いだぞ」

 ウォザディーの揶揄い混じりの言葉にメジマーは放心状態で、それを視界に入れたクエチノも脳の処理が追い付かず固まってしまったのだった。

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