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第四十一話 囚われの者

 《元勇者の企み》

 キエッツォ王国の王城の最上階は、ワンフロアが丸々王と王妃の部屋となっている。三つに仕切られていて出入り口のドアとは別に続き戸で行き来出来るようになっている。

 真ん中が二人の共用スペースで、リビングや寝室などと一通り生活出来るだけの広さの間取りである。


 そしてそれぞれの部屋には基本的には互いに立ち入る事はない。そんな王だけの完全プライベート空間なのだが、そこには隠し扉がありその先の螺旋階段を降りて行くと半地下の隠し部屋に繋がっている。

 その部屋は半分が鉄格子で仕切られていて、片方の部屋にはベッドのみが置かれて、反対側は牢となっている。

そこには一人の魔物が鎖で繋がれていた。


「四天王と恐れられたクエチノが見る影も無いな」

「うぅぅぅぅぅ!」

 部屋に入るなり魔物に声を掛けるヤーカンに、魔物は唸り声で反応する。

「いい加減懐いても良さそうなんだがな。まだ拒絶するか。」

「うぅぅぅぅぅぅ!」

 近付くヤーカンに唸り声は高くなり威嚇混じりになった。

「まあ、そうでなくては楽しめないがな。」

 ヤーカンは抗う者を蹂躙する快楽をクエチノに求めているのだ、従順な女を抱きたければ人間の女で充分なのだから。


「理解できるかどうか知らんが、いいことを教えてやろう。ズナギュカが殺された」

「!」

 ヤーカンは普通に反応したクエチノを見てニヤリと笑った。


「ほう、理解しているようだな。なら続きがきになるだろう? 誰がヤツを殺したのかが」

「…………」

 ヤーカンはクエチノの瞳にハッキリと意志が宿るのを見てさらに煽った。

「さて、今日はいつも以上に楽しませてくれよ」

 ヤーカンは鉄格子の扉の鍵を開けて鎖を引いてクエチノを引っ張り出す。いつも通りにベッドに押し倒そうとした手が空を切った。

 身を躱したクエチノは素早く反撃に出た。


 全盛期のヤーカンなら避けられたのかもしれないが、贅沢三昧でだらしない体になった今のヤーカンには為す術が無かった。いとも簡単に襟首を掴まれると壁に押し当てられた。


「言え! 誰が殺した!」

「ぐっ、うぉ、ウォザディー……だ。魔王を討伐に……行った時にいた……奴だ憶えているだろ」

 ウォザディーの顔を記憶から引き出し、思い浮かべたクエチノは怒りが最高潮に達した。


「離せ」

「っしまった!」

 クエチノは意志に反してヤーカンの言葉に従い拘束を解いてしまう。

「お前らは普段これの効き目が弱いからな。感情が振り切った時なら効果的面だな。それにしても正気を取り戻していたとは驚きだ」

「くっ」

 一度指輪の効果に捕らえられてしまうと冷静になったとしてもその呪縛から逃れるのは容易ではない。

「このまま抱くのも悪く無いが、お前にはいい物をやろう。命令だ。ウォザディーを殺して来い」

「分かったわ」


 クエチノは引きずられるように王の部屋まで連れて行かれると手足の鎖を外された。

「奴は王都のディアトキアにいる」

「ふん、ここからでも魔力で大凡の居場所は分かる。近くに行けばもっとハッキリ分かるわ」

 クエチノは窓から外に出ると畳んでいた羽を広げて飛び立った。


「よろしかったのですか」

「ああ、クエチノも倒せたならマグレではないだろう」

 ヤーカンの中では過去は美化されていた。魔王を討伐出来たのは三人の力を合わせたお陰だと言っているうちに、自分自身を洗脳してしまっていたのだった。

「クエチノが死んだら、奴に使者を出して丁重に連れて来い」

 ヤーカンは魔法を過小評価していた。いつぞやの魔法師の代わりに魔道具を作らせる程度にしか思っていなかった。


▽▼▽


「お、お帰りなさい」

「ただいま。ソイベさん、あの……お話が」

 メジマーの事に片が付き孤児院に戻ったウォザディーは、ソイベの様子を伺いながら恐る恐る告げるのであった。

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