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第三十話 食べ物が買えないのなら作れば良い

 《嫁が来た》

 ウォザディーは気合を入れていた。


「あんたの言い分は理解した。うちとしても孤児院を助ける事は吝かではない。で、本当に何でも願いを叶えてくれるのか」

「ああ、あくまでもでき得る範囲内でだがな」

 いい歳の大人が二人真剣な顔を突き合わせていた。

「俺の条件は、こいつの嫁を見つけて欲しい」

「とっ、父さん!」

 主人の隣にいた息子が慌てていた。


「エクトは昔から奥手でもう三十歳になるというのに未だ独り身だ。こんなんでも大事な跡取り息子だ。早く結婚して孫の顔を見せて欲しいんだよ」

「それはそうですが……流石に無理……ですよね?」

 心なしかエクトも期待に満ちた目を向けてきた。かなり無茶な願いだが、ウォザディーに断るつもりは無かった。例のブツを手に入れる為には引くに引けないのだから。

「ちょっと専門外なので上手くいくかは分からないが、やるだけやってみよう」

「本当か! 是非とも宜しく頼んます」

 ウォザディーはこの家の期待を一身に背負って街に繰り出した。


 数々の人から収集した情報により候補者は絞られた。最終的にはパン屋の娘で手伝いを頑張り過ぎて行き遅れたというユマチェノに決まった。

 ウォザディーはエクトに服を作り与えて、ユマチェノを呼び出しプロポーズさせた。


 結論から言うと上手くいった。


 二人は幼馴染で互いに好意を寄せていたらしい。ユマチェノが行き遅れた本当の理由はエクトを思い続けていたからだったという情報を入手するのに、ウォザディーはあっちこっちで手伝いやら要望に答えたのだった。

 両家の仲も良好で、皆が大喜びだった。


「ふふふ、遂に手に入れたぞ!」

 ウォザディーは交換条件で出していた小麦の種をどっさりと手に入れたのだった。


▽▼▽


 孤児院を飛び出したウォザディーは、セカチネズ青果店で情報を貰い農家を回って行った。種や苗を譲って貰う代わりに手伝いを申し出た。畑を耕すのも、畝を作るのも、重い荷物を運ぶのも魔法を使えば楽にこなせる。

 人参・玉葱・じゃが芋・胡瓜・レタス・トマト等順調に手に入れていたウォザディーは若干調子に乗っていた。


 最後に訪れた小麦農家で、『何でも願いを叶えるから種を分けて欲しい』と大風呂敷を広げた。結果大変な思いをしたが、当事者二人を含め多くの人間を幸せに出来たので、良かったとウォザディーは思っている。


 パン屋の娘が小麦農家に嫁いだ為に様々な革新が起こるのだけれど、それはまた別のお話。


〜〜〜

「ウォザディーさん、その荷物は何なのですか?」

「これは、救世主だ。今回は時間が無いから俺が手を加えるが、今後はみんなに育てさせるつもりだ」

ウォザディーは裏手の空き地に向かうと『パチン』と指を鳴らした。

「わっわっわっ! なななんですか!」

「魔法だ」

 地面がうねって耕されていき綺麗な畝が何列も出来ていく光景にソイベは驚いた。

「ただ、どうやら魔法(と言う言葉)は国によって消し去られたようだから、他言無用で頼む」

「そっ、そうなのですね。分かりました」

 神妙な顔で頷くソイベを余所に、ウォザディーは種やら苗やらを植えていった。


『パチン』

 ウォザディーが指を鳴らすとすくすくとまるで早送りをしているように育っていったのだった。

「明日の朝には最初の収穫が出来るぞ。ただし一部は残しておいてくれ種を採らないといけないからな」

「ええ、分かりました。でも種ってどうすれば良いのでしょう」

 困惑しているソイベにウォザディーは一冊の本を手渡した。

「これは農業の入門書のような物だ。読んでおくと良いぞ」

「えっ、一体どこから出したのですか!」

 ソイベは魔法というものの凄さに本気で驚いていた。


 その日からソイベと共に子供達も農業を学び、孤児院一体となって野菜等を育て始めた。お陰で食卓の量や彩が、かなり改善されたのだった。

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