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第三話 ルニムネ

 《ルニムネ》

 ルニムネ・ツナシュナ11歳。イコルニアツ孤児院に身を寄せる孤児である。苗字がある事は孤児院を切り盛りしている院長先生以外には知る者はいない。

 孤児院のルームメイトと喧嘩をしたルニムネは、勢いで家出をしたものの行き場も無く放浪していた。そんな時に迷いの森の怪物さんの話を思い出し、自然と足がそちらに向かっていた。


 暫く森を彷徨っていると、不意にベタッとまるで蜘蛛の巣が纏わり付いたような感覚を感じたが、体には何も付いていなかった。ホッとして歩を進めた瞬間、世界がグニャリと歪んでいった所でルニムネは意識を手放したのだった。


 その後目を覚ましたら件の怪物さんと出会い、今に至る。


▽▼▽


「ねえ、怪物さん。元気出してよぉ」

 ガックリと項垂れているウォザディーに少女は近寄って行った。

「ああ。だが、その怪物さんというのは止めてくれないか」

「ええぇ。どう見ても怪物さんなのに……ほらっ」

 どうしても納得出来ない少女は、再度手鏡をウォザディーに向けて来た。


「うおっ!」

 ウォザディーは思わず後ずさった。髪はボサボサに伸びて顔の下半分は髭で埋め尽くされた怪物と呼ばれても仕方の無い姿に、二度目でも驚いてしまう。

「ねっ」

「うーむ。そういえば鏡で自分を見るなんて30年ぶりだな」

 ウォザディーの言葉に少女は呆れ果てた視線を向けていた。


「これは失礼をした」

『パチン』

 指を鳴らすとウォザディーの体が光に包まれたのだった。

「これでもまだ怪物かな? お嬢ちゃん。俺の名はウォザディー、魔法使い……元……だな。今は強いて言うなら魔法を極めし者かな」

「…………」

 ウォザディーの体を包んでいた光が薄れて行き、中から姿を現したのは髪の毛も短く整い髭も一切無くなりスッキリしていて均整の取れた顔立ちの中年男性だった。

 あまりの変貌に少女は絶句していた。


「お嬢ちゃん、名前は?」

「えっ、あっ、私はルニムネって言います。ウォザディーさん、魔法使い? それって何ですか?」

 少女、もといルニムネは魔法使いを知らないようだった。

「そうだな。魔法使いは希少だからな。知らないか。今みたいなのが魔法でそれを使う者を魔法使いと呼ぶんだ」

「魔法?」

 ルニムネは頭にハテナを浮かべていたので、ウォザディーは不安になった。魔法はこの世界の理であって絵本や童話などにも当然のものとして描かれているのだから。


「ルニムネは魔法を知らないのか?」

「うん。初めて聞いた」

 ウォザディーの表情に釣られたのかルニムネの表情も曇っていく。

「絵本は? サネデルリやネニギョフミは読んだこと有るだろう?」

「ううん。知らない」

 どちらの話にも魔法を使う魔女が登場する。

 片や継母と連子に虐められていたサネデルリを魔法で美しく着飾らせて城のパーティーに参加させ、そのパーティーで王子様に見染められたサネデルリは王子妃として幸せに暮らすという話だ。

 もう一方は人間の王子様に恋をした獣人族の娘が、魔法で人間になって王子様と結ばれるという話だ。

 どちらもウォザディーが子供の頃は定番の絵本だった。他にも魔法が出てくる絵本など掃いて捨てる程有ったので、ウォザディーはこの娘が本当に自分の知っている世界から来たのか自信を持てなくなっていたのだった。

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