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第二十八話 家を繋げました

 《魔王の願い》

 あの時のウォザディーは少し過信していたのかもしれない。


 魔王の魔法は重さというか粘り気というかが有り何か異質な物だと感じていたが、魔法を扱う力量が圧倒的にウォザディーの方が優れていた為に魔王を追い詰めていたのだから。


 ヤーカンとギムテアは早々に魔王の魔法に対処しきれずにダメージを受けて今は後ろで伸びている。

 二人を庇いながらでも余裕が有ったので油断が生じたのだろう。魔王が最後の魔力を振り絞って突進して来た事に驚き対処が遅れた。

 懐に入られたウォザディーは死を覚悟した。周りがスローモーションに見えてゆっくりと時が流れて行く。


「あれっ? 止まった」

 全ての景色が一枚絵の様に静止してして、耳が痛くなる様な静寂が訪れた。


「今動いているのは余と貴様だけである。頼みを聞いて欲しくての、最後に命を削ってみたのだ」

「それを信じろと? まあ、聞くだけは聞こう」

 頭に直接響く声のトーンからウォザディーは魔王が嘘を言ってないと直感的に感じた。


「すぐに分かる事よ。それはそれとして、余が言いたいのは魔物を根絶やしにしないで欲しいという事だ」

「それは流石に難しいだろう。魔物は人を襲う」

 そればかりは頷く事は出来ない。

「ここ最近は被害が無くなっている筈だ。この指輪の力だ。魔物達を統率出来る。これを貴様にくれてやる。だから……ま……魔物達を……」

「確かにここ最近は聞かないが、って何をする!」

 ウォザディーの手首を魔王が掴み無理矢理に指輪を掌に置いた。


「……もう時間だ……頼む……魔物……は……こ……星の……血肉……のだ……」

ウォザディーの耳に周囲の音が飛び込んで来た。静寂からのギャップで鼓膜に痛みを感じ、時が進み出した事を実感させる。


 ウォザディーは胸に重さを感じた。魔王が彼にもたれかかってきたのだった。

「何をするつもりだ!」

 警戒をしたウォザディーだったが、直ぐに抱き留め支えたのだった。彼の腕の中の魔王は既に骸となっていた。


▽▼▽


「えっ! 何が起きたのですか? ここはどこですか?」

「何と! ここは天国、いや楽園なのか!」

 ソイベは何が起きたのか理解出来ずに思考停止に陥った。ミフーソカは目を輝かせて周囲を見回していた。


「暫くはここを使えばいい。雨風は凌げるし魔法書も有る。それにここは空間魔力量が多いようで、魔法具の同時使用でも枯渇する事は無い。だから魔法使いでない貴方(あんた)でも何とか暮らしていけるだろう。ただし外には出ない方がいい」

「確かに色々作らないと不便そうじゃ。して、何故外に出てはならんのじゃ?」

 ウォザディーは身の回りの事の殆どを魔法で行なっていた。その為に幾ら同時使用が可能だからといっても必要最低限の魔法具しか置いていなかったのだ。


「外には魔物がいるからな。この家には強化と状態維持の魔法が掛けてあるから中にいれば安全だ」

「魔物! ここは一体どこなのですか?」

 ミフーソカの質問にウォザディーが答えるとソイベが食い付いて来た。

「ここはルイシネ樹海の中にある俺の家だ」

「ルイシネ樹海?」

 やはり伝わらない事に、ウォザディーは膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪えた。

「迷いの森と言えば分かるか?」

「えっ、まさか本当に迷いの森の怪物さんだったのですか!」

「怪物さん?」

 ソイベはルニムネの言葉を思い出し、ウォザディーに尋ねた。それに対して、ミフーソカの痛い人を見る視線に彼はバツが悪くなった。


「うぉっほん! 取り敢えず扉を繋げてしまうか」

「なっ、外には魔物がおるのじゃろ!」

『パチン』

 指を鳴らしたウォザディーはミフーソカの心配を他所にドアを開けた。

「何じゃ!」

「えっ、何で!」

「ここのドアを孤児院の裏手に繋げた」

 孤児院の人目に付きにくい裏手の壁にドアが出現していたのだった。

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