第二十七話 兄弟子への贈り物
7/5 カウコーヨの口調を修正しました。
《ウォザディーの思い出》
それはウォザディーが王太子の側衆として城に召し上げられてから一週間ほど経ったとある日の事だった。
「何故こんな事も出来ないのですか。昨日教えた事と大差無いですよ。よっ! よっ! よ!」
「はい、済みません」
カウコーヨは先ず基本属性の魔法からウォザディーに教えていた。昨日は水魔法を教えたのだが元々初歩の魔法は使えていたので飲み込みが早く、上級の魔法まで使えるようになっていたのだった。
今日は火魔法を教えていたが全く出来なかったのだ。魔法の初歩はどの属性であろうとも殆ど同じで、違いは最後の属性の付与の所くらいなのだ。
「謝って欲しいわけでは有りません。何故かと聞いているのですよ。よっ! よっ! よ!」
「その、えっと、……分かりません。……その……火の出し方が……」
ウォザディーの返答を聞いてカウコーヨは大きく頷いた。
「成る程。貴方は火の属性付与のやり方を知らないのですね。ねっ! ねっ! ね!」
「……はい」
『バコン!』
答えた瞬間ウォザディーは殴り飛ばされていた。
「何故殴られたか分かりますか。かっ! かっ! か!」
「いえ」
ウォザディーは素直に答えた。
「私は怒っていますよ。私は貴方の師匠です。生い立ちのせいなのも分かりますが、師匠と弟子とは時に親子以上の関係性になるのです。今までと違い一人で背負わなくて良いのです。知らない事は聞きなさい。分からない事は理解出来るまで教えを乞いなさい。辛い時は素直に甘えなさい。私が全て応えます。それが師匠というものですよ。よっ! よっ! よ!」
カウコーヨはウォザディーを優しく抱きしめた。ウォザディーはこの時初めて心の底から泣いたのだった。
▽▼▽
ソイベの圧力に屈したミフーソカはポツポツと自身に起こった事を話し出した。
「そんな事が……酷いですわ」
「それで、ミフーソカ殿はこれからどうするおつもりで?」
「どうもこうもワシにはもう何も残されておらぬ」
ミフーソカは項垂れてしまった。
「はぁ、貴方には信念が無いのか! 一時的とはいえ師匠に学んだ事がある者とは思えないな」
「何じゃと! ワシだってカウコーヨ様に学んだ事を次代に繋いできたのじゃ! ディーケ製品の進歩にどれ程貢献して来たか。じゃがそれも全てもう終いなのじゃよ……」
ウォザディーの檄に一瞬勢いを取り戻したミフーソカだったが、最後には唇を噛み締め俯いてしまった。
「何で諦めて無いのに、終わりだなんて言うんだ。まだやりたい事が残ってるんじゃ無いのか」
「そんなの当たり前じゃろうが! 次代を教育し終え余生は魔法具の研究に没頭する筈じゃったが、家も金も魔法書さえも奪われたのじゃ! ワシの気持ちが分かってたまるものか!」
昂ったミフーソカの言葉はウォザディーを苛立たせた。
『バチン!』
ウォザディーはミフーソカの頬を引っ叩いていた。
「ウォザディーさん!」
「分かってる! 老人に優しくしろとソイベさんが言うから、グーで殴るのは止めておいた。貴方は師匠から大事な事を学んでいないみたいだな」
「なんじゃと!」
ミフーソカもヒートアップしていく。
一触即発の状況下でウォザディーが口を開いた。
「じゃあ何故他人を頼らない。プライドか? プライドの為に命を粗末にするなんて馬鹿げてる。家も金も魔法書も無くした? そんなの借りたり貰ったりすれば良いだろ」
「それはそうじゃが……そう簡単な話でも無いのじゃ」
諭すようなウォザディーの語りかけにミフーソカは冷静に考えてみたがいい案は思い付かなかった。
「簡単だよ。自分で難しくしてるだけだ」
『パチン』
ウォザディーが指を鳴らすと世界が歪んだ。
「うっ!」「きゃっ!」
『ぐにゃり』と世界が歪む。
そして、落ちるような感覚と共に目の前の景色が一変したのだった。




