第二十六話 助けた老人は恩人だったらしい
《号外》
王都の各出版社より号外が街で配られていた。
“ディーケ製品の革命児達を生んだミフーソカ・ウジャーノは違法技術者だった。本日『M規制法』違反の所持の罪で全財産を没収された。王城報道官の発表では彼の下で学んだ者達には問題は無いとの事だ。”
この号外がひょんな事で国王の目に入り、執行した憲兵の隊長は何故か失職した。
何らかの圧力が掛かっていたようだ。
▽▼▽
「大丈夫ですか。残念ですがここは天国ではありませんよ。イコルニアツ孤児院ですよ」
「で、そこは俺が居候させてもらっている部屋のベッドだ」
「これはおかしな事が起こったものと思ったのじゃが、ヌシが在るのならヌシの力でやったのじゃろうて」
ソイベが進み出て老人に説明をする。他に空き部屋も無いのでベッドを奪われたウォザディーが皮肉を付け加えた。
老人はウォザディーをの顔を見て一人で納得した様子だった。
「どういう事だ爺さん。俺の力って!」
「全く、現状を分かっているのか! 安易に力を使うなんて! ヌシは死にたいのか! 全く、ワシが命懸けで救った命を無駄にするでないぞ!」
何故かウォザディーは凄い剣幕で老人に怒鳴られた。
「死のうとしていた爺さんに言われたくないがな」
「ふん、あのまま死なせてくれれば良かったものを」
「まあ、そんな悲しい事は仰らないで下さい。主は慈愛に満ちています。貴方の苦悩もきっと受け止めて頂けますわ。さあ、事の詳細をお話し下さいませんか。一助になれると思いますよ」
売り言葉に買い言葉の二人に、ソイベは元シスターの顔で割り込んだ。
「やれやれ、お嬢さんはシスターだったか。しかし、ワシは何もかもを失ってしまったのじゃ。もう何も残ってないのじゃよ。無論生きる気力もじゃ」
「そんな事仰らずに。そうだわ、申し遅れました私はソイベ・ササツィです。お名前をお尋ねしても?」
ソイベは明るい声で自己紹介をした。
「ああ、ワシはミフーソカ・ウジャーノと申す」
「ウジャーノ! ウジャーノ侯爵様か!」
ミフーソカの自己紹介にウォザディーは目を見開いて驚いた。
「残念じゃがワシは侯爵位は継いでおらん。ただの爺いじゃよ」
「どういう事だウジャーノ家は一人息子だった筈だ」
「ウォザディーさん、ティディサア王国にウジャーノ侯爵家なんて有りませんよ」
ソイベの言葉にウォザディーは戸惑った。
「ホッホッホ。そうじゃ、ウジャーノ侯爵家は24年前に断絶しておる」
「ウジャーノ卿! 爵位を継がないなんて普通は出来ない筈だろ」
ウォザディーには意味が分からなかった。
「さっき言ったじゃろ命を掛けたと。捕まっておっての。ここに戻れたのは7年前じゃよ。それと、もうワシは貴族で無いので卿は止めておくれ」
「何だと! それじゃあ、俺のせいでウジャーノ侯爵家が滅んだというのか」
自分が原因で一つの侯爵家を断絶させたという衝撃の事実に、ウォザディーは恐ろしさを覚えた。
「そうでは無い! ワシが偶々巻き込まれたのがヌシの危機だっただけで、ワシの間が悪かったせいで関わっただけじゃ。父も戦乱で命を落としただけじゃし、母は元々病弱な人じゃったからな。仕方なかったんじゃよ」
「そうだとしても、ミフーソカ殿が俺の命を救ったって……」
ウォザディーは自分の命が知らない所で救われていた事に何とも言えない気持ちになった。
「そんな顔するでない。ワシは弟子を守っただけじゃ。その弟子が王城に伝えたからヌシの命が救われただけで、結果論に過ぎん。気にするな」
「…………」
「昔話も結構ですが、ミフーソカさん! 何で自らの命を断とうとしたのですか! じ・っ・く・り聞かせて頂きますからね!」
ソイベが怒りを浮かべ仁王立ちしていたので、二人はその前で縮こまる事しか出来なかった。




