第二十五話 老人には優しくしよう
《ミフーソカ・ウジャーノ》
ウジャーノ侯爵家の一人息子だったミフーソカは、父と同じ魔法師を幼い頃より目指していた。ウジャーノ侯爵の伝手を頼って、若き王宮付き魔法使いカウコーヨに10歳から15歳まで師事していた。
その後は魔法使いから直接学んだ数少ない魔法師として数々の魔法具を世に送り出した。
魔王討伐の凱旋式の後でヤーカンとギムテアの企みをたまたま聞いてしまい捕まってしまう。その際に一緒いた弟子を隠し通す事には成功している。そのお陰でウォザディーの命が狙われている事が王家の知るところとなり、悪魔と魔女の大乱の切っ掛けの一つとなった。
ヤーカン達に連れて行かれてからは研究施設に監禁されて非人道的な魔法具などを作らされていた。キエッツォ王国の自称建国にもその力が大いに影響を与えた筈だ。八年の歳月を経て何とか死を装い逃げ出す事に成功した時は既に50歳になっていた。
諸国を経由して65歳の時に漸くティディサア王国に戻れた。
しかし悪魔と魔女の大乱でウジャーノ侯爵は亡くなっていて領地は王家預かりになっていたが、その三年後にウジャーノ侯爵夫人も亡くなった為に既に断絶となっていた。
今更ウジャーノ家を再興した所で跡取りもいないので、王都ディアトキアの平民街住民区でディーケ製品と名を変えた魔法具作りを教える事で生計を立てる事にした。
七年後の現在では一流のディーケ製品職人を数多く輩出した人物と有名になっていたが、それが仇になり異国語の魔法書を所持していた事が発覚してしまった。
▽▼▽
老人は脱いで並べてある靴を一瞥すると、堀に向かって一歩を……
『パチン』
……踏み出そうとしてその場に崩れ落ちた。
「ふう、間に合った」
ウォザディーはどんな手を使っても良いのならば老人を簡単に助けられた。しかし今は人目も有りあからさまな魔法は使えない状態だ。
「大丈夫ですか……って寝てる!」
一拍遅れて駆け寄ったソイベは驚きと安堵が入り混じっていた。ウォザディーは目立たないように老人に睡眠の魔法を掛けていたのだ。倒れる時に風魔法で衝撃を吸収しながらというおまけ付きだった。
「取り敢えず放置しておくわけにもいかないから、連れて帰ろう」
「そうしましょう。そこ、寄せてスペースを作って下さい」
ウォザディーは箱物の一部を二段に重ねて空けた場所に老人を横たわらせた。ソイベは靴を拾うとそれも荷車に乗せていた。
「私も後ろから押しましょうか?」
「いや、(魔法の)力が有るから大丈夫だ」
ウォザディーは周りを気にして言葉に注意しながらソイベに伝えた。
「……ウォザディーさんが……何かしたの?」
「まあ、そういう事だ」
ソイベも周りを気にして、慎重に言葉を選んで疑問を口にした。
「取り敢えず眠らせただけだから心配は要らない」
「何か事情がお有りのようでしたので、後で聞いて差し上げねばなりませんね」
ウォザディーはソイベの事を流石元シスターだと思ったのであった。
〜〜〜
「んんん……はっ! ここは!」
「あっ! 起きた!」
「起きたね」
「先生! 起きたよ!」
子供達が騒ぎ出したのでソイベは客室に向かって行った。
「ほうほう、この子らは天使か。はっ! ヌシは! なんという事じゃ、ヌシも死んでいたか……」
「おい爺さんボケてるんじゃねえ。俺は生きてるし、ここは天国でもねえぞ」
「ウォザディーさん! まだ目を覚ましたばかりですのよ。そんなに責め立てては可哀想です」
目を覚ました老人がウォザディーを見るなり何故か沈んだ顔になった。変な事を言ったのできつ目に突っ込んだウォザディーはソイベに怒られたのだった。




