第二十話 突入
サラッと軽めですが拷問系表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
《通貨》
ティディサア王国では元来、金貨、銀貨、銅貨が使われていた。基本的にお釣りという概念が無く貨幣に見合った物を売るという物々交換に近い形だった。
20年前の『通貨大革命』によって物に価格が決められて、通貨に一貫した価値が付けられた。銅貨百枚で銀貨一枚分の価値があり、銀貨百枚で金貨一枚分の価格があると定められた。
さらに利便性を高める為に細分化された。小銅貨→中銅貨→銅貨→小銀貨→銀貨→小金貨→金貨となり、各十枚で上の貨幣と同等となる事になった。
導入当初の混乱は多少有ったものの、これにより経済活動が活発になったのであった。
▽▼▽
「はぁ、強情ですね。次は……足の指を落として行きましょうか? それともうちの若い衆に犯させましょうか?」
「……ぐっ」
ウェリジュアは愉悦に満ちた表情でソイベに語りかける。ソイベは絶望と恐怖と痛みを必死に堪えていた。彼女の震える手の指からは爪が全て剥がされ血が滲んでいた。
「さあ、もう観念してサインして下さい。爪はまた生えて来ますが、ここから先は戻りませんよ」
自決を許さない以上そう簡単に殺しはしないだろう。そしてサインをしない限りはこのエスカレートしていく地獄は終わらない。ソイベがもう諦めて屈しようと思った時に急に暖かいものに包み込まれた。
「ソイベ、すまん遅くなった」
「っ! キ……べ……」
いつの間にか縄を解かれてキーベに抱き締められていたソイベは何とか声を絞り出した。
「何故ここに! っ! なっなんだ! どうなっている!」
ウェリジュアは突然現れたキーベの姿に戸惑った。地下の隠し部屋になっているここには鍵が無いと入れないのだ。何が起きたのか後ろの扉を振り返ろうとして、動けない事に更にパニックになった。
「さて、ソイベにここまでしたんだ覚悟は出来ているのだろうな!」
「待て! 今私に手を出せば貴方達は終わりですよ!」
キーベが怒りに満ちて剣を構えた。そのまま斬りかかろうとしたが、ウェリジュアの言葉に踏み止まった。
「どういう事だ?」
「その女はうちの組に金貨3枚の借金が有りましてね」
ウェリジュアは形成が逆転して冷静さを取り戻した。
「それは騙し取ろうとしていたお金だろ。無効に出来る筈だ」
「なっ、なんですか貴方は!」
ウェリジュアはいきなり視界に現れて声を掛けて来たウォザディーを睨み付けた。頭の周りそうな彼に内心焦っているようだった。
「返済を開始する前でしたらそうでしょうが、彼女はもう小金貨1枚を返済しています。すなわち借金を認めたという事になります。今回の取り立て方法には少し問題がありましたので、小金貨9枚分を対価としてお引き致します。これで私の罪は消えてしまいました。さてどうしましょうか?」
「そんな事許される訳ないだろ!」
「残念だがヤツの言う通りの理屈が通っちまうのがこの国の法なんだよ」
ウォザディーは法務関係も多少勉強していたので、ウェリジュアの屁理屈がまかり通る事を知っていた。
「だが、金貨3枚、いや2枚か、ならさっさと払っちまえば良いじゃないか」
「はあっ?」「えっ!」「はぁ!」
ウォザディーの言葉に、場の一同は驚きの声を上げた。金貨2枚とは小銅貨換算すると200万という事になる。一般市民がおいそれと出せる金額では無い。
「そんな、金貨2枚だなんてとてもすぐには払えません」
「えっ、そうなのか? 金貨ってこれだろう?」
ウォザディーは通貨大革命以後を知らないので、通貨価値がいまいち分かっていなかった。それに王太子に仕えていた頃には過分に貰っていたので、机の上に置かれた皮袋の中には数十枚の金貨が入っていたのだった。
その皮袋が置かれた時のずっしりとした音に、三人は絶句していたのだった。




