第十八話 ソイベを探せ
《シャハティッピ組》
バリュコデュノの末端組織。
不動産業を営んでいるが元々はチンピラの集まりで、裏では恫喝や荒事の請負いで小銭を稼ぐだけの弱小組織だった。
それが参謀に有能な者が加わったみたいで、ここ数年メキメキと頭角を現して来ている。それに伴い詐欺や脅迫など、行動も計画的で表に出にくいものに変わっていた。
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一先ず孤児院に戻ると不安気な子供達が玄関前で身を寄せ合い待ち構えていた。
「そんな顔をするな。取り敢えず中へ入れ」
ウォザディーは子供達と共に孤児院に入って行った。ルニムネ達年長者が下の子達をあやしていたので、大丈夫だと思い客間へ向かった。
「さてと、どこにいるのかな」
ウォザディーは注意深く街全体の気配を探っていく。
「昨日、服を渡せたのが幸いしたな」
流石のウォザディーでも知り合って間も無い人の気配をこの広さから探すのは難しい。だが、長年所有した自分の服で仕立てた服を着ている人物を探すなら話は別だった。
「んっ! まさか……」
服の気配は意外な場所からしたのだった。
「失礼する」
無人の部屋に向かって声を掛けてドアを開けた。白、赤、桃を基調としているものの全てが使い古された感が否めない物ばかりだが可愛らしい小物なども有り、この部屋の主人が女性である事を主張している。
一瞬入る事に躊躇したウォザディーだが、ベッド脇のチェストの上にお目当の物が見えたので踵を返すと扉を閉めた。
「あのバカ! 着る為にあげたのだろうが!」
ウォザディーの渡した服は丁寧に畳まれて大切そうに置かれていたのだった。
手掛かりが無くなって子供達の所へ戻ったウォザディーにルニムネが寄って来た。
「(ねえ、ウォザディーさん魔法でどうにか出来ないの?)」
「ああ、万能では無いからな。手掛かりが欲しい所だな」
ルニムネは周囲を憚ってヒソヒソと話し掛けて来た。
「それでだ、キーベの居場所は分かるか?」
「うん。後ろ」
「何だ。呼んだか」
ウォザディーが振り返ると丁度キーベが入って来る所だった。
「おっ、丁度良かった。キーベの所でソイベさんに関する情報は入ってるか? どんな些細な事でも構わない」
「ああ、恐らくソイベを攫ったのはシャハティッピ組だ。連中は表向きは不動産屋だが、裏で悪どい事を行なっているみたいだ。バリュコデュノとも繋がりが有ると噂されているからな」
バリュコデュノは昔から王都の裏組織として噂話に事欠かなかった。なのでウォザディーはシャハティッピ組が真っ当で無い方の『組』だと確信した。
「表の仕事の兼ね合いもあるから、暫くは大丈夫だと思う」
「それはどうかな」
キーベの言葉にウォザディーは懐疑的だった。
「ソイベさんは強請られていた」
「それは本当か! くそっ!」
キーベはあからさまに慌て出した。ウォザディーは考え込む。
「まあ、落ち着け。きっと彼女は無事だ」
「落ち着いていられるか! 金を吹っ掛けて土地を奪う目的なら、どんな手を使って売買契約書を書かされるか分かったもんじゃ無い!」
キーベはチンピラのやる事だから暴力暴行などで無理矢理署名させると思って焦っていた。
「だが、それだとおかしいのだ。奴等は金を要求していて、彼女は土地を売る事は拒んでいた。そしたら娼婦になって稼げと言って来たらしい」
「奴等はそれを本気で言って無い。出来ないと分かって言ったんだ。ソイベは元シスターだから」
それを聞いてウォザディーは衝撃を受けた。昨晩のソイベの行動は普通の女性が行うのとは覚悟が比べようも無いものだった筈だからだ。
それと同時にソイベの身の安全が保障されていない事を示していた。それが分かるからウォザディーもキーベも言葉が出て来なかった。嫌な沈黙がその場を支配していたのだった。




