第十三話 そうして魔法は闇に葬られたらしい
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《27年前 ルイシネ樹海での出来事》
ウォザディーが森の小屋で3年程過ごした頃、王太子からの使者が来た。
「騎士の交代以外で人が来るなんて珍しいな」
「ミフオサ卿、貴殿に殿下よりの書簡を届けに参った。謹んで受け取られるが良い」
いい加減頭に来ていたウォザディーは荒々しく書簡を奪うと雑に開封した。
ちょっとした意趣返しは思いの外、気持ちをスッキリさせた。
「なっ、なんたる無礼な! これだから平民上がりは! この事は殿下に報告させて頂くので覚悟していなさい!」
逆に使者のボルテージは最高潮になったようだが。
『君にした仕打ちに対して弁解も出来ずに更に苦しくなったら頼るのは図々しいだろうがそれでも頼みたい。機密もあって詳しくは話せないが魔物の群れが現れたのだ。どうにか殲滅させてくれ。礼は弾む、前金代わりを持たせた。頼む』
手紙を読み終えたウォザディーは、思う所はあるものの一旦胸にしまって掌を差し出した。
「ああっ、分かっておりますとも。こちらをお渡しするように申し付かっております」
「良く分かっているようだな」
苛立ちを隠せない使者はそれでも形式に則り、丁寧にウォザディーに王太子であるアージスモからの預かり物を差し出した。彼は渡された最高級の魔法書を懐に仕舞うと目を閉じた。
「んっ! おかしいな、群れに人が混じっている」
この状態で殲滅するような魔法をぶち込むと、人にも被害が及んでしまう。
「……残りの褒美の代わりにこの森を貰うと殿下に伝えてくれ」
「何ですと! ルイシネ樹……」
一瞬考え込んでウォザディーは作戦を立てた。魔物をこの森に転送させて結界を張ってしまうという少々乱暴なものだ。
そうと決まれば使者や馬車それに騎士も王都へと無理矢理転送させた。
「くっ、流石に多いな」
人を避けて魔物だけを転送する事に集中し・精神力がごっそりと削られる。歯を食いしばり全力を解放したウォザディーの周りには、魔力の渦が取り巻いていて小さな竜巻を起こしていた。
「よし、上手くいったな。……家は無くなったけど」
結界を張り終えたウォザディーの目の前には瓦礫の山と化した小屋の残骸が積み重なっていた。
「そういえば……ルイシネ!」
使者の言葉を思い出してウォザディーは愕然とした。瓦礫を中心に半径数十メートルの木々が薙ぎ倒されていたからだ。
この後、建国の頃より神聖視されてきたルイシネ樹海は、結界のせいで迷いの森という通称が一般的になってしまう。ただ、そのお陰で彼の悪行は知れ渡る事はなかった。
▽▼▽
「まさかその魔物って……」
「ええ、陛下は魔物には裁きできが下ると仰り、現に突如として魔物達は消え去りました。それにより悪魔と魔女は国と称した領地へ閉じこもり、休戦状態で今日に至ります」
やはり二つ目の心当たりもビンゴだった。
「待て、先程から気になっていたが当時の王太子? 陛下?」
「ええ、悪魔と魔女の大乱の傷が少しは癒えた頃に陛下は弱冠20歳にして国王の座を先王陛下より譲られたのです」
衝撃の事実を知ったウォザディーは、一層正体を露見させてはいけないと思った。
「今までの話はお前さんの胸に秘めておいて下さい」
「何でだ」
キーベは真面目な顔で続けた。警備兵としての今後が掛かっているからだ。
「バレたら首が飛ぶんだよ。陛下が即位して真っ先に行ったのは真実の隠蔽と魔法と魔法具という言葉の使用の禁止だ。それはもう、徹底的に行われた」
「でも魔法具は普通に使われているよな」
ウォザディーの顔を写して身分証に転写した物も魔法具だった。
「言葉はと言ったろ。技術開発のお陰で管理が容易になり、エネルギーの供給法に工夫を凝らしてディーケ製品と呼ばれる事になった。魔法を使える者は元々極少数だったから時が経てば言葉は無くなる」
ウォザディーは疑念を抱いた。何故キーベはここまで教えてくれるのだろうかと。




