第十二話 衝撃の事実
《キエッツォ王国》
ヤーカンとギムテアの国である。建国27年目という新しい国という事になっている。ただ国際的には国と認められていなく、休戦中で有るがティディサアの内乱区域とされている。
その為に国を閉ざさざるを得なく、外部で内情を知る者は殆どいない。一説によると王と王妃と一部の特権階級が贅沢な暮らしをする為に多くの民が奴隷の様に働かされているとの話もある。
ただ、前述の通りなので真偽の程は定かでは無い。
▽▼▽
キーベは青い顔で辺りを見回し、近くに人がいない事にほっとしていた。
「ハハハ、嫌だなウォザディーさん、冗談はそのくらいにしてくれよ」
「いや、冗談じゃないが」
ウォザディーは真面目に答えた。
「分かってますよ! 周りにバレたらどうなると思ってるんですか!」
「やばいのか。何か、すまん」
物凄い剣幕で詰め寄るキーベにウォザディーは反射的に謝った。
「ウォ……お前さんは悪魔と魔女の大乱は知らないのか」
「ああ、それなのだがルニムネに聞いた絵本の話だとヤーカンとギムテアの事だろ。あいつらは勇者と聖女じゃ無かったのか?」
ウォザディーはいい機会だと思って聞いてみた。きっと歳の近いキーベなら知っている筈なのだから。
「何と! まさかお前さんの口からその言葉を聞くとは思わなかった。忠告するがあの二人の名もそうだが、二度とその呼び名は口にするなよ。あと”魔法”もだ。この国で平穏に暮らしていきたいならな」
キーベは心底驚いた表情を浮かべたが、ウォザディーに釘を刺した。なぜだか後半は小声になっていた。
「どういう事だ。絵本の前半部分は俺の知っている出来事だった。……まさか後半も事実が元になっているのか!」
ウォザディーは元パーティメンバーだった二人の笑顔を思い出して信じられない気持ちで一杯だった。
「事実なものか!」
「そうだよな」
ウォザディーは安心したが、キーベの顔は険しいままだった。
「事実はとても絵本に出来るようなものじゃ無かった。尤も奴らの国では今でも民達は凄惨な状況らしいがな」
「まてまて、ヤーカンとギムテアは国を興したのか!」
これには流石のウォザディーも心の底から驚いた。
「だから、悪魔と魔女だ! 興したというよりは奪ったという方が近いな。あくまでも自称の国だ。拝領した領地で秘密裏に軍備を増強させて奇襲の様な独立宣言と宣戦布告だったからな。国際的に認められていない。更に魔物まで……」
「魔物……」
ウォザディーには魔物に関して二つ心当たりがあった。一つは魔王を倒した時に手に入れたあの指輪で、もう一つは魔物の群れだ。
「ああ、悪魔と魔女は魔物を使役していた。そして魔物を率いて攻め込んで来たんだ。次々と街は落とされ多くの命が奪われた」
「……平和の為だと言っていたのに……」
ウォザディーは魔王から魔物を使役出来るという指輪を託されていた。
三十年前のあの日、負けを悟った魔王は己の全ての力を使い、一瞬の隙を付いてウォザディーの懐に入り込んだ。ウォザディーは死を覚悟したが魔王は指輪を託し、生き残った魔物達の命を懇願してその命を散らして行ったのだった。
その意思を継いでウォザディーは指輪を嵌めて魔物に命令を下した。『人間から逃げ延びろ』と。
その力を目の当たりにしたヤーカンはその指輪に興味を示した。彼は魔物達を救う為に使いたいと懇願したのでウォザディーは指輪を貸したのだった。
「そして奴らは王都目前まで攻め込んで来たのさ。そこで当時王太子だった陛下が率いる国軍と対峙した。その戦は俺も一兵卒として出兵していたが、悲惨な戦場にもう終わりだと思ったさ」
キーベは遠い目をして語ってくれたのだった。




