(5月7日付けの手紙)
5月7日付けの手紙は長いので、分けます。
翁とラスボス(シールド侯爵)が会います。
誤字報告ありがとうございました。これからも、よろしくお願いします。
m(__)m
お母さん
私の手紙は、とんでもないシリーズが多かったと思います。
でも、今回の『とんでもない』は、シリーズじゃありません。
単体で、とんでもないこと(!)が起きてしまったんです。
おかげで、私は幸せになったんですが、不幸になった人もいるんです。
でも、スレイ翁によれば、本来、利益を得てはいけない人たちが利益を得ていたので元に戻しただけだそうです。
スレイ翁が、神さまだってことを、みんな忘れていたんです。私も忘れてました。
翁は、セクレド王国が始まる前からこの地を支配していた神で、人間は、不遜にも、翁の祝福を得て生活できていることを、すっかり忘れていたんです。
翁は、人間の寿命が短いことを悲しんでいました。
ウイリアム殿下と親しくしていたのに、彼はあっけなく死んでしまいましたし、うちのお父さんも、早々に事故で死んでしまいました。
翁にとって、親しく心を通わせる人間の存在は、ものすごく貴重なんですが、同時にものすごく希少だったようです。
私と会ったとき、翁は私と親しく付き合いたいと思ってくださったようです。
それで、ツーノに私を連れて来るよう命じたそうです。
でも、ジークのことは、そうでもなかったんです。
それは、何となく分かったんですが、ウイリアム殿下の子孫のジークを好きにならないのは、おかしいと思ってたんです。
でも、今日、一同の前で翁が話したことで、全てのピースがはまりました。
ジークは、ウイリアム殿下の子孫でもあるんですが、イザベラさまの子孫でもあるんです。それで、翁にわだかまりがあったんです。
シールド侯爵が、ジークにお説教するために学園へ来るということは、ケント会長から話がありました。
それで、私もジークも首を洗って待ってたんですが、シールド侯爵のお説教を我慢するのは、仕方がないとして、問題は、どの程度まで真実を打ち明けても良いかということでした。
これについては、私もジークも悩みました。
でも、私は、前々から、いくら後見人だといっても、シールド侯爵がジークの行動に口をはさみすぎるのはどうかと思ってたので、スレイ翁に相談したんです。
そしたら、翁が、シールド侯爵やケント会長を、翁のいる森へ連れて来るよう言ったんです。
翁も、腹に据えかねるものがあったみたいでした。
それで、シールド侯爵が学園に来た日、早退届を出して、私とジークは、シールド侯爵とケント会長を連れて、黒い森へ出かけたんです。
森へ行く途中の道で、キイチゴの群生地があって、たくさんのキイチゴが実ってました。
思わず、キイチゴを採取したいと思ったんですが、生真面目なシールド侯爵が(こういうところは、ケント会長とそっくりです)、
「そんなことは、帰りにしろ。今は、森へ急ぐべきだ」
って言うので、泣く泣く諦めようとしたら、ひょいと現れたツーノが、
「帰りは、キイチゴどころじゃなくなってるから、今のうちに取った方が良いと思うぞ」
って言うんです。
それで、ジークやケント会長に手伝ってもらって、根こそぎ収穫したんです。
シールド侯爵は、眉間にしわを刻んで、苦虫を潰したような顔をして立ってました(にらんでいたとも言います)。
キイチゴをマジックリュックに入れて、ご機嫌で森へ入って行くと、シールド侯爵とケント会長の足がすくんだんです。
きっと、森へ入ると生きて出られないって言う、あの話を思い出したんだと思います。
でも、私とジークが楽しそうに歩いて行くので、諦めて付いて来ました。
私、スレイ翁のところまでなら、ツーノがいなくても、行ける自信があるんです。
そうして、4人は、翁のところへ着いたんです。
シールド侯爵とケント会長は、古い巨木(スレイ翁)を見て絶句しました。
スレイ山の主の話を、おとぎ話だと思っていたんでしょう。
でも、実際、目の前で翁を見ると、その存在感に圧倒されるんです。
何も知らなくても、人が触ってはいけない尊い存在だと感じて、自然と頭が下がるんです。
シールド侯爵たちが圧倒されていると、翁が人の形をとって、私たちの目の前に立ったんです。
「ワシが、スレイじゃ。
先日の日曜、エヴァの部屋で会うておったのはワシじゃ。テレサ、マーサ、スーザン、パメラそれとジークが一緒じゃった」
翁が真相を告げると、ケント会長がパニックになったんです。
「ってことは、あれか?
スレイさまに会うために、ジークは、女子寮に女装して入ったってことになるのか?」
「そうじゃ。おぬしは、何も知らんくせに、何かと首を突っ込みたがる悪い癖があるようじゃ。
前にも同じことがあったじゃろうて。
シールド家ごときに、ワシの話はできん。
だから、エヴァもジークも言わんだけじゃ」
スレイ翁が神さまだったことを、みんな忘れていたんですが、思い知らされることになります。




