(4月17日付けの手紙)
女装したジークがエヴァの部屋へ来た話の後日談です。
少し短いです。
お母さん
とんでもないことになりました。
これは、『新とんでもないシリーズ』になるんでしょうか?
って、そんなこと言ってる場合じゃないんです。
とにかく、ものすごーく、とんでもないことになったんです。
最近、とんとご無沙汰だったケント会長が、日曜の晩、私の部屋に来客があったことを、どこからか聞きつけて来て、私と男爵令嬢ズを尋問したんです。
「ちょっと良いかな?
とあるところで、小耳に挟んだんだけど……」
って、言い方はソフトでしたが、あれは完全に尋問でした。こんなときだけしゃしゃり出て来なくても良いのに。
ケント会長によれば、日曜の晩に私の部屋に学園外から来客があったことを聞いたそうです。
で、来客自体は、よくある話で、構わないそうです。
ただ、その客が、うら若き乙女であるのに、部屋を辞したのが、午後10時という非常識な時間だったことが問題だというんです。
あの一見乙女に見える可愛い人は、実は男で、すぐそこの特別寮に帰っただけなので、何ら心配はないんですって言いたかったけど、言う訳にもいかないので、頭を抱えました。
男爵令嬢ズも同罪でした。
一緒にいたのに、そんな非常識な時間に帰すなんて、配慮が足りないって、厳しく注意されたんです。
学園からイースレイへ向かう定期馬車は、夜の8時で終わってるから、あの娘が帰ったということは、帰りの馬車を時間指定して雇っていたことになるって決めつけるんです。
で、そもそも、そんな非常識な時間に帰ろうとする少女を漫然と見送ったことが問題だと言われたんです。
私と男爵令嬢ズは、生徒会室に呼ばれて、つるし上げられました。
濡れ衣も良いとこで、とんでもない話です。
つくづく、男爵令嬢ズの提案を受け入れたのは失敗だと思いました。
だから、ケント会長のお説教の途中で、パメラたちをにらんでやったんですが、それを会長に見とがめられて、「君が一番悪い」って、頭ごなしに叱られたんです。
横で、マーサたちが、申し訳なさそうにしてましたが、あれは、ケント会長に申し訳なく思ってるんじゃなく、私に対して申し訳なく思ってたんです。
都合の良い誤解をしたケント会長は、男爵令嬢ズの態度を殊勝だと判断し、彼女たちを1時間程度で解放したんです。
でも、私のことは、反省が足りないって、更に1時間、雑巾みたいに絞られたんです。
私は悪くないのに。
おかげで、周りの皆さまの視線の痛いこと痛いこと。
やっぱり、育ちが悪いと、危機感が薄いんでしょうね。
若い娘をあんな非常識な時間に帰してしまうなんて。普通は、遅くなったら、泊まっていくよう勧めるものですのに。
いくら、ジークフリードさまの覚えがめでたくても、育ちが育ちですもの、私たちとは違いますのよ。
可哀そうに、あの子、無事に家に帰れたんでしょうか?心配ですわ。
ものすごく可愛らしい娘でしたから、もしかして、さらわれたり、暴行されたりしたかもしれませんわ。
平民って、貴族のことを冷たいとか何とか言ってますけど、自分たちの方が、よっぽど冷たいですわ。
そうですわ。貴族だったら、あんな時間に外へ放り出すようなことはいたしませんわ。
あちこちから、陰口が聞こえるんです。
もう、最悪です。
でも、ジークのことを白状する訳にも行かないので、ここは、黙って悪役を演じることにしました。
だって、仮にも理事長の職にある人が、規則を破って女子寮に入ったなんて言えません。
しかも、そのために女装までしたんですから。
その後、寮長をしている3年生の侯爵令嬢に、くどくどと嫌味を言われて(ケント会長から、寮生の指導がなってないって注意されたみたいです)今に至るんです。
次からは、ジークや男爵令嬢ズが何を言っても、ジークを部屋に呼ばないことにします。
ジークだけじゃありません。もう、二度と、スレイ翁がらみで男爵令嬢ズも部屋に呼ばないことにします。
4月17日
頭に来た エヴァ
PS1 ケント会長は、本当に何もご存じないので、ものすごく斜め上の対応をしてくれます。
腹が立つので、スレイ翁にチクってやることにします。
PS2 この間、ジークは私たちを避けてました。下手に関わると、女装して女子寮に入ったことがバレそうだったからです。
でも、それはそれで、腹が立つんです。
『新とんでもないシリーズ』が始まります。




