(4月10日付けの手紙)
エヴァにお母さんから手紙が届きます。
お母さん
お手紙読みました。
テイラー先生がユーグレンの学校へ転勤になったんですって?
ちょっと暴走気味だったけど、面倒見の良い先生だったのですが……。
ユーグレンの学校の方が生徒が多いから、一応栄転になるんでしょうが、私には、村の裏事情に気付かず私とパメラをマリアンナ学園へ送り込んだことで、村の人たちに嫌われたように思えます。
多分、お母さんの言う『大人の事情』ってヤツなんでしょう。
パッと見、栄転だから文句も言えないでしょうが、先生は、常々、王都かラムサー辺りの大きな学校の教師になりたいと言ってたんです。
ユーグレンの学校へ転勤したら、当分、王都やラムサーの学校へ移ることもできないでしょう。
左遷されたようなものです。
マリアンナ学園へ入学した私とパメラは、テイラー先生がいなくなったので、梯子を外されたような気分です。
昨日の晩、この問題について、パメラと真剣に話し合いました。
2人して、1時間ほど「あーでもない、こーでもない」と、知恵を絞ったんですが、結局、今更どうしようもないから、このまま行くしかないという結論に達しました。
2人とも、だんだんやけくそになって来ています。
パメラなんか、逞しくなりすぎると、嫁の貰い手がなくなる、と本気で心配しているんです。
でも、嫁の貰い手がなくなったら、その時はその時だと思うのです。
この学園へ来たときから、道は決まっていたのです。
今更どうしようもないと思います。
テイラー先生が左遷(?)されても、何も感じません。
あ、そう。
って感じです。
私って冷たいんでしょうか?
ところで、お母さんの手紙は、私が出した手紙と行き違いになったようです。
ただ、お母さんの手紙が私に届くまでに1週間かかることが分かりました。
おかげで、私は、手紙が人と同じように駅馬車で旅してることに気付きました。
私がトーリ村からイースレイまで来るのに6日かかったんです。手紙だから、カトンリーの役所で手続きをしたりサーシャ洋服店で採寸をしたりしなくて良んだけど、馬車に乗ってるだけでも時間がかかるんです。
もし、私の手紙を読んで、お母さんがすぐに返事を書いたとしても、帰りも同じ時間がかかるわけで、往復で2週間かかることになります。
もっと早く手紙のやり取りができる方法がないものでしょうか?
それこそ、魔法でも使って。
幸い、魔法関係の本は近くにいっぱいあります。
おいおい調べてみることにします。
でも、ここでは、お母さんの返事を待ってられないぐらいいろんな出来事が起きるんです。
切手代を考えると頭が痛いけど、返事を待たずにバンバン手紙を出しても良いですよね?
少なくとも、手紙の枚数が多くても切手代が変わらないようなので、なるべくまとめて出すことにします。
じゃないと、私は言いたいことも言えず、破裂しそうです。
そのくらい、ここでは私の常識が通じないんです。
お母さんも、諦めて付き合ってください。
と言っても、もう出してるので、事後承諾になるんですが……。
ごめんなさい。
薬草園の水やりや新種の苗の採取なんかのお手伝いができなくなったけど、体に気を付けて、お仕事頑張ってください。
4月7日
お母さんからのニュースに驚いている エヴァ
PS 手紙と一緒に、魔物除けのサシェと山刀と薬草採取用のリュックが届きました。
お母さんは、私が、こっちでも薬草を取りに出歩くと思ってるんでしょうか?
確かに、気分転換になりますし、小遣い稼ぎにもなりますが、今は、授業についていくのが精いっぱいで、他のことをする余裕なんかありません。
切手代をどうするか、エヴァにとって大問題になります。