(4月6日付けの手紙)その2
かなり短くなってしまいましたが、キリが良いのでアップします。
お母さん
学園は、とんでもないところです。
『とんでもないシリーズ・パート3』です。
貴族の噂って怖いです。
さっき聞いた噂で、おちおち友人と話もできないと思いました。
話はこうです。
放課後、教室に残って話をしていた伯爵令嬢と子爵令息がいたそうです。
秋に開催される文化祭の実行委員に選ばれたので、クラスでどんなことをしようかとか、どういう風にみんなに提案しようかとか相談していたんですって。
二人が話に夢中になっている間に、たまたまみんなが帰って教室に取り残された格好になったそうです。
そんなの、よくある話でしょ?
で、そのことが、婚約者でもない相手と二人きりでいたって噂になって、当事者の二人は、顔をあげて歩けないほど非難されているんです。
とりわけ、伯爵令嬢に対する中傷がひどいんです。貴族の令嬢なら当然気を付けるべきなのに、うっかりしてたのが悪いって。
こういう場合、どうして、女の方が悪く言われるんでしょう?
やってることの責任(この場合、どちらにも責任なんかないと思うのですが)は、両者にあるのに、非難されるのは、もっぱら令嬢の方なんです。
本当は傷なんかついてないのに、噂で傷物になったように扱われた令嬢は、まともな縁談が望めなくなったそうです。
こうなるのを見越して、子爵令息がわざとそういう状況に持っていったんじゃないかとの見方をする人もいます。
子爵令息が卑劣な手段を使ったことによって、件の令嬢は彼と結婚するしかなくなるそうで、伯爵家の跡取り娘を格下の子爵令息が攻略するには、手っ取り早く、確実な方法なんだそうです。
そんなのおかしいです!
別に、教室で不適切な行動に及んだわけでも何でもないのに、偶然30分ほど二人きりになってしまっただけなのに、どうしてそんな扱いをされなきゃならないんでしょう?
しかも、そうなるのを見越して、それを利用するなんて。
私なら、そんな下種な男と結婚するのは、ゴメンです。
でも、パメラによれば、件の伯爵令嬢は、腹黒い子爵令息と結婚することになるだろうというのです。
貴族って、つくづく面倒くさくてやり方が汚い人種です。
平民で良かったと思いました。
4月6日
根も葉もない噂に憤慨する エヴァ
エヴァは、正義感あふれる少女です。