(12月23日付けの手紙)
冬休みのお話です。
お母さん
今日から来年の1月7日まで冬休みなんですが、以前お伝えしたように、往復だけで2週間近くかかるので、村へ帰るのを諦めました。
生徒の皆さまも、家が近い人は帰るけど、遠い人は残るようで、パメラも私も学園に残ることにしていたんです(注意:過去形です)。
ところが、ここで、意外な伏兵がいたんです。
伏兵は、ジークです。
彼のせいで、とんでもないことになりました(久しぶりの『とんでもないシリーズ』です。今後、『続とんでもないシリーズ』と呼ぶことにします)。
何を血迷ったか、ジークが、私たち生徒会雑用係をお屋敷に招待してくれたんです。
何でも、年が明けるとき、王宮では舞踏会があるそうで、そのとき、全ての貴族が王さまに謁見するんだそうです。
国中から貴族が集まるそうですが、有力貴族の中のいくつかは転移魔法で王宮まで行くんだそうです。
そして、ベネディクト家は、転移魔法のための大規模な魔法陣を有する数少ない貴族の一つなんだそうです。
すごい……とは思うんですが、きっと、ウイリアム殿下が作ったものだろう、と思ってしまう私は、醒めてるんでしょう。
で、ジークにすれば、親しい友達を一気に転移させて王宮に向えば良いって思ったみたいなんです。
そうすれば、数に紛れて、自分が目立たなくなるって考えたようです。
何て馬鹿なことを考える人でしょう。
おかげで、お屋敷の使用人は、仕事が増えて、てんやわんやでしょう。
馬鹿な上司を持つと苦労するって見本みたいです。
でも、招待を受けて、びっくりしました。
近頃のジークは、ケント会長とエリザベートさまの間をウロウロするばかりで、私たちとは疎遠だったんです。
驚いたことに、今回のご招待は大盤振る舞いで、ケント会長やエリザベートさまだけじゃなく、生徒会役員の皆さまやエリザベートさまの金魚のフン、もとい、お友達の皆さままで招待されたていたんです。
このメンバーの中に平民の私が入ってる意味が、よく分からないのですが、とにかく、明日から学園が始まる3日前の1月4日までオンネーのベネディクト家に滞在することになりました。
男爵令嬢ズは大喜びです。
公爵家にお呼ばれするんですから、男爵家としては、こんな名誉なことはないんです。
私?私は、平民ですので、どこにお呼ばれしようが、関係ありません。
粛々と受け入れて、できるだけお行儀良くする(これが、結構難しいんです)だけです。
ベネディクト家のお屋敷に行くとき、転移の魔法陣を忘れないようにしないと。
今、例のミッションのための情報収集をギルドに頼んであるんです。
転移の魔法陣があると、学園に居ながらギルドに依頼が出せるから、すごく便利です。
報酬は、私の口座から出してくださいって書いておいたら、結構貯まってるから、いくらでもご要望に応じますって、返事が来てたんです。
でもって、報告書は魔法陣で送ってって書いといたから、魔法陣を忘れたら、せっかく急ぎでお願いしたのに、何してるか分かんないことになるんです。
それに、行先が公爵家です。いくらジークが気を遣ってくれたとしても、使用人の皆さまに蔑ろにされる可能性もある訳で、そういうときは、スレイ翁です。
たまに、翁に手紙を出したり、できれば、来てもらったりしたいんです。
そのためにも、魔法陣が要るんです。
と言う訳で、いそいそと準備してたら、パメラが大慌てで部屋へ来たんです。
「エヴァ、えらいことになっちゃったわ!!!」
何かデジャヴを感じました。
あの時は、トーリ村までの郵便料金が銀貨1枚と破格の値段だってパニクっていたんだけど、今回は何だろうって、先を促すと、とんでもないことが分かったんです。
『続とんでもないシリーズ・パート2』です。
「あのね、私たち男爵令嬢ズがベネディクト家に招待されたじゃない?
そしたら、私たちの相手としてベンジャミンさまたちも招待されたんですって!」
「なぬ?」
何の関係があるって言うんでしょう?
そりゃあ、ホストとしては、ゲストの友達を招待して、歓迎するのは有りかもしれないけど、そこまで幅を広げるなんて、何か深い意味でもあるんでしょうか?
そもそも、屋敷に大勢の貴族を招いて、その中に平民を一人交ぜるなんて、趣味の悪いことをジークがするとは思えません。
一体、誰の差し金でしょう?
シールド侯爵あたりの陰謀でしょうか?
まあ良いです。
ここまで虚仮にされたら、こっちも、それなりの対応をさせていただきます。
こっちには、スレイ翁が付いているんですから。
12月23日
珍しく好戦的な エヴァ
ジークの招待は、どういう意味を持つものでしょう?




