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(12月16日付けの手紙)

エヴァの受難は続きます。

お母さん


 おかしなことになりました。


 私、学園の中で、居場所がなくなりそうです。


 とういうのも、男爵令嬢ズの彼氏たちが、ケント会長に突撃したからです。


 男爵令嬢ズに非難されて、そんな馬鹿な、俺たちは間違ってない、って思ったんでしょうね。

 

 テレサのお相手のマキシムさまを中心に、自分たちの無実を立証したい皆さまは、ケント会長にお会いして直々に尋ねたんだそうです。

 

 全く、無駄に行動力がある皆さまです。



「1年のエヴァとジークフリートさまの関係は、エヴァがジークフリートさまにまとわりついているんですか、それとも、ジークフリートさまがエヴァにまとわりついているんですか?」って。


 そんな訊き方をして、あれは、ジークフリートさまがエヴァにまとわりついているだけだ、なんて答えられるはずがないでしょう?


 もし、正直に答えたら、ベネディクト家の面子めんつは丸つぶれです。


 それで、ケント会長は、仕方なく、

「あれは、どちらかがまとわりついている訳じゃない。たまたま、別々に山へ行ったらそこで会ったんだ」

って、答えたんです。


 それを素直すぎるマキシムさまたちが、ジークが山へ行くとき、私が待ち伏せするために強引に付いて行ったって解釈したんです。

 


 普通、平民が出かけるのを追っかける公爵閣下なんていませんから。


 


 で、男爵令嬢ズとすったもんだして、それでも、男爵令嬢ズとは別れたくないって思った皆さまは、私が、三つの魔法陣を使って便宜を図ってあげてるから、男爵令嬢ズが逆らえないんだって結論を出したんです。


 そこまでして、男爵令嬢ズを手放したくなかったってことは、ある意味、男爵令嬢ズのみんなの良さを知っているってことで、私としては歓迎するんですが、そこに、私に対する偏見があるなら、話は別です。



 

 パメラたちはものすごく怒って、あの4人と別れるって宣言したんですが、件の4人が、別れたくない、卒業したら結婚したいとまで言って頑張ったんです。


 もう、ハチャメチャです。



 諸悪の根源であるジークはというと、ケント会長に表に出るなって言われてるんでしょうか、全く表に出て来ません。



 この、いかにも貴族らしいやり方に腹を立てた私は、ケント会長に雑用係を辞める旨通告しました。



「一体、誰のせいで、こんな馬鹿げたことになってると思ってるんですか?

 あなたが、きっちり、事実を説明しないからです!

 もう、十分、生徒会には貢献したと思いますので、雑用係を辞めさせていただきます」


「君には、申し訳ないと思ってる。

 だけど、スレイ翁の話をせずに、公爵家の名誉を守るには、ああ言うしかなかったんだ」


「それは、そちらの都合です。

 私としては、公爵家の名誉なんか、知ったこっちゃないんです。

 

 私の名誉は、プライドは、どうしてくれるんです?

 まさか、平民の名誉やプライドなんかどうでも良いとでも思ってらっしゃるんですか?」


「いや、そんなことはない。

 そんなことはないんだが……」



 ケント会長は、言葉を濁して何も言えませんでした。


 私だって、ジークを守るにはこの方法しかなかったことを知ってたし、これが一番無難な方法だって分かってました。


 でも、おかげで、男爵令嬢ズが私のために動くのさえ難しくなってしまったんです。

 

 彼女たちは、私のために、事実無根であると主張してくれたんです。

 でも、貴族社会では、彼女たちは本当に下っ端で、誰も彼女たちの発言なんか聞いてくれなかったんです。


 いつまでも私と関わっていると、彼女たち自身が危うくなりそうで、しかも、マキシムさまたちは、それを分かっていて、彼女たちを責めるんです。


 そんなに気に入らないなら、男爵令嬢ズと付き合わなきゃ良いのに、彼女たちを諦めきれないんです。


 ここまで来たら、男爵令嬢ズがマキシムさまたちを振ってお終いって訳にはいかないところまで来てました。


 

 それで私は、パメラたちに、表立って付き合うのを止めて、転移魔法の魔法陣なんかを使って、こっそり付き合おうって、提案したんです。

 


 男爵令嬢ズが吹っ飛んでしまうのは、嫌だったから。


 


 おかげで、独りぼっちになっちゃったけど、これで良かったんだと思ってます。



 

 でも、スレイ翁には愚痴を言いたいし、おしゃべりもしたいから、雪が降る前に森へ行こうって思ってたんです。

 

 ところが、昨日、初雪が降ったんです。

 もう、春まであの人にも会えないって思ったら、何だかすごく泣きたくなって、昨日の晩は、枕に顔を押し付けて泣きました。



 で、今朝気が付いたんです。


 雪が積もる前に、スレイ翁のところに転移魔法の魔法陣を置いて来たら良いんだって。

 そうすれば、森へ行けなくなっても、おしゃべりだけはできるんだって。


 


 次の土曜に、魔法陣を置いて来ることにします。



       

                       12月16日


                    独りぼっちのエヴァ


                     

PS 甲斐性なしで裏切者のジークは、誘いません。

 小屋の話もしないことにしました。話したら、ウイリアム殿下のものは自分のものだって言いそうだから。


 ジークは、良い貴族だと思ってたけど、所詮、貴族だったんです。 

 周りへの、特に平民への迷惑なんか気づきもしないんでしょう。


 ケント会長が過保護なせいでしょうが、周りの状況が分かってません。

 頭は良いんだけど、馬鹿なんです。





エヴァは、ジークを切り捨てます。

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